元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「春画先生」

2023-11-11 06:10:27 | 映画の感想(さ行)
 まず、映画自体がタイトルにある春画の世界と明確に結び付いていないことに愕然とした。いったい何のために製作したのだろうか。だいたい、本作は商業映画としては邦画史上初めて無修正の浮世絵春画が映されることで話題になっているが、思いのほかそのシーンは少ない。あからさまにスクリーン上で紹介されることに対して“どこかの筋”から横槍が入ったのか、あるいは作者自身が遠慮したのかどうか知らないが、主要モチーフに対してこんな及び腰な態度では、面白い映画に仕上がるわけがない。

 レトロなカフェの従業員である春日弓子は、ある日ちょっと変わった美術研究家の芳賀一郎と知り合う。彼の専攻は江戸文化の裏の華である春画で、周囲からは“春画先生”と呼ばれていた。春画に興味を持った弓子は、彼の住居に足繁く通い勉強するようになる。芳賀は妻に先立たれて以来、世捨て人のような生活を送っているのだが、春画の文献執筆を急がせる編集者の辻村や、亡き妻の姉である一葉など、多彩な人間と関わらなければならない立場でもあり、気の休まる暇も無い。弓子も巻き込まれ、先の見えない日々が始まる。



 冒頭、弓子と芳賀の出会いからしてウソ臭い。突如として起こった地震に慌てた彼女が、どうして春画を目にして引き込まれたのか、明確な説明は無い。それでも、春画の魅力を豊かなイメージで表現してくれればそれほど文句は出ないのだが、困ったことに本作には春画の“学術的”っぽい説明はあるものの、見る者を虜にするような仕掛けは見当たらない。

 さらに、中盤以降は春画のことなど映画の“背景”の一つでしかなくなり、弓子と辻村が何となく懇ろになったり、芳賀と一葉との因縁話など、物語自体が脱線していく。もちろん、それらが面白ければ文句は無いのだが、ただ下世話なだけで映画的興趣には結び付いていない。果たして作り手は本当に春画に興味を持っていたのか、怪しくなるほどだ。少なくとも、新藤兼人監督の「北斎漫画」(81年)の後塵を拝していることは確かだろう。

 塩田明彦は作品の出来不出来の差が大きい監督ではあるが、今回は低調な部類に属する。主演の内野聖陽は今回は精彩が無く、弓子に扮する北香那も魅力不足。柄本佑に白川和子、安達祐実といった脇の面子もパッとしない。題材が面白そうだっただけに、この程度の出来に終わったのは実に残念である。
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「科捜研の女 劇場版」

2023-11-10 06:12:26 | 映画の感想(か行)

 2021年作品。テレビ画面での鑑賞だったが、観終わって“これ、本当に劇場で公開したのか?”とマジに思った。断っておくが、私は元ネタになったTVドラマを一度も視聴したことが無い。だから、20年以上にわたって放映されてきたこのドラマのセールスポイントは掴めていないし、そもそも主要キャラクターの人間関係さえ分かっていない。それでも最後まで退屈しないで対峙できたのは確か。しかし、映画版としてこれで良いのかという疑問は残る。

 京都にある洛北医科大学で、教授の石川礼子が屋上から転落死する。続けて、別の大学教員が同じような転落事故で死亡する。どちらも状況から見て自殺と片付けられそうになるが、検視の結果に疑いを持った科捜研の法医研究員である榊マリコたちは、府警捜査一課の土門薫警部補と共に捜査を開始する。どうやら被害者らは、同時期に東京の帝政大学の微生物学教授である加賀野亘の研究室を訪れていたらしい。加賀野は画期的な抗生物質の開発を進めていたが、そのプロセスには不可解な点があった。やがて微生物研究者の不審死が、国外でも発生するようになる。

 登場人物は多く、TV版のファンにはお馴染みであろう設定が展開されるが、適宜テロップを入れる等の“一見さん”に対する配慮は見て取れるし、あまり混乱することは無い。捜査の過程と犯行のトリック、犯人の動機などは一応理詰めに整えられており、大きな突っ込みどころは見当たらない。終盤にはマリコがピンチに陥るシークエンスもあり、飽きさせない工夫はある。だが、全体的に見て本作のグレードはTVのスペシャル拡大版程度なのだ。映画として仕上げるのならば、もっと手を加えて欲しい。

 たとえば、パンデミックが拡大して国家的な脅威に発展したり、犯人が「羊たちの沈黙」のレクター博士ばりの超悪党で神出鬼没な狼藉を繰り返したり、あるいは事件のバックにさらなる大物が控えていて府警の手に負えなくなったり等、いろいろと映画ならではの大仕掛けがあって然るべきだと思うのだが、製作側には(予算面もあり)そういう実行力は無かったのだろうか。それとも、観客はこれで満足するはずだと踏んだのか。どうもこのあたりの事情は承服しかねる。

 兼崎涼介の演出は多分にテレビ的だが無難な仕事ぶり。主演の沢口靖子は頑張っているし、内藤剛志に佐々木蔵之介、若村麻由美、風間トオル、小野武彦、斉藤暁、佐津川愛美、野村宏伸、山本ひかる、宮川一朗太、中村靖日、駒井蓮、そして伊東四朗とキャストは多彩。そして、秋の京都の風景は美しい。しかしながら、劇場用作品としての存在価値は図りかねる。
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「アンダーカレント」

2023-11-06 06:15:57 | 映画の感想(あ行)
 主演が真木よう子ということで、鑑賞前は身構えてしまった(笑)。何しろ、彼女は脇役で良い味を出すことはあっても、スクリーンの真ん中では満足出来るパフォーマンスを見せることはほぼ無かったからだ。だが、そこは場数を踏んで映画作りのツボを押さえた今泉力哉監督、キャストの良さを引き出して手堅くまとめている。内容も深みがあり、観て良かったと思える佳編だ。

 主人公の関口かなえは夫の悟と共に、家業の銭湯を継いで切り盛りしていた。しかしある日、悟が突然姿を消してしまう。ショックのあまり銭湯を一時休業してしまう彼女だが、幼い頃から懇意にしていたパートの木島敏江の助けを借りて何とか営業を再開させる。そんな中、堀隆之という男が銭湯組合の紹介を通じて現れて、住み込みで働くことになる。一方、かなえは友人の菅野よう子の奨めもあり、悟の行方の捜査を探偵の山崎道夫に依頼する。豊田徹也による同名コミックの映画化だ。



 タイトルの意味は“根底にある抑えられた感情”というものだが、ジャズ好きならばビル・エヴァンスとジム・ホールが1962年に発表したアルバムを思い出すだろう。実際、この映画のポスターの構図はあのアルバムのジャケットを踏襲している。それはさておき、人間には普段表に出さない隠された本性があるという、いわば当たり前の事柄をここまで平易に描いた映画はそう無いだろう。

 かなえは堀に“あなたは自分のことを話さない”と不満を述べるが、そういう彼女も誰にも話すことが出来ない心の奥底に封じ込めた屈託を抱えている。ただ、それを映し出すだけならば並の映画だ。本作の玄妙なところは、彼らが“本音”だと思っていることの不確実性を問い詰めている点だ。そこを自覚した時から本当の人生が始まるという、一見ネガティヴでありながら実は前向きなテーマを差し出す作劇の巧妙さに唸ってしまう。

 加えて、悟という本性も何もないキャラクターを配置させるあたりも出色。決して彼を否定するのではなく、これはこれで一つの人生のメソッドだという割り切り方も堂に入っている。探偵の山崎の造形は優れもので、かなえは不真面目に見える彼に振り回されるのだが、それでいて事の真相にたどり着いてしまう不可思議さには恐れ入った。

 今泉力哉の演出は抜かりが無く、2時間を優に超える尺を弛緩することなく乗り切っている。ラストの処理も味わい深い。真木よう子は熱演で、この映画を支えていくのだという気迫が感じられる。今後もこの本気の仕事ぶりを期待したい。井浦新にリリー・フランキー、永山瑛太、江口のりこ、中村久美といった面子も万全。岩永洋のカメラによる清涼な映像と、細野晴臣の繊細な音楽も場を盛り上げる。
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「ペイン・ハスラーズ」

2023-11-05 06:05:27 | 映画の感想(は行)

 (原題:PAIN HUSTLERS )2023年10月よりNetflixから配信された社会派実録ドラマ。けっこう見応えのあるシャシンで、出来れば映画館で観たかった。ネタ自体に新味は無いのかもしれないが深刻な問題であることは確かで、何度でも取り上げる価値はある。さらに、語り口は軽妙で各キャラクターは十分に“立って”おり、鑑賞後の印象は良好だ。

 フロリダ州に住むシングルマザーのライザ・ドレイクは、生活に困窮していた。糊口を凌ぐためストリップまがいのポールダンス・パブで働いていたところ、ザナ製薬の営業担当のピート・ブレナーと偶然知り合う。そのツテで販売員として同社に入ることができたライザだが、医療の一翼を担うはずの製薬会社が手段を選ばない阿漕な商売に終始していることに面食らう。そうはいっても、日銭を稼ぐために彼女も強引なセールスに身を投じるしかない。

 折しもザナ製薬は末期ガンの鎮痛剤ロナフェンを猛プッシュしていて、ライザは社主催のセミナーに医師を賄賂などを使って招待し、大量の処方箋を書かせることに成功。それが功を奏してザナ製薬の売り上げは急上昇し、ライザの待遇は各段に向上する。しかしロナフェンには中毒性があり、過剰摂取による死亡事故が頻発。CEOのジャック・ニール博士は当局側から目を付けられ、ライザも窮地に陥る。

 2018年に起きたバデュー・ファーム社製のオキシコンチンによる薬害事件を題材にしているらしいが、コロナ禍を経た昨今ではいつ何時発生してもおかしくない事例だ。とにかく、ザナ製薬をはじめとするこの業界のヤバさには圧倒される。まあ、我が国でもこの分野での経営環境は厳しいとは聞いているが、米国のそれは桁違いである。

 本作を観てマーティン・スコセッシ監督の「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2013年)を思い出す向きもあるだろう。だが、多分にカリカチュアライズされていたあの映画とは違い、本作は派手な描写が目立つとはいえ全てマジに見えてくる。特に、難病を患う娘のために治療費の貸付けを銀行に頼むヒロインが、勤務先が製薬会社というだけで門前払いされてしまうシークエンスは本当に辛い。

 映画は当然ザナ製薬の遣り口が白日の下にさらされる方向に進むのだが、この一件が解決しても社会構造が歪なままだと似たような話が次々と出てくるのだろう。デイヴィッド・イェーツの演出は、ケレン味はほどほどに真正面から問題を捉えようとしていて好感が持てる。主演のエミリー・ブラントは好調で、どんな役柄でもこなせる守備範囲の広さは感心する。

 ピート役のクリス・エヴァンスは「キャプテン・アメリカ」シリーズの主人公とは正反対のクズ男を楽しそうに演じ、キャサリン・オハラやアンディ・ガルシアもさすがの“腹芸”を披露。ジョージ・リッチモンドのカメラによるフロリダの明るい陽光と、ジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽も申し分ない。
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「イコライザー THE FINAL」

2023-11-04 06:06:38 | 映画の感想(あ行)
 (原題:THE EQUALIZER 3 )タイトルは“FINAL”なのだが、原題は“パート3”扱いである。確かに中身はこれでシリーズ打ち止めの雰囲気はあるものの、決定したわけではない。もしも四作目が封切られる運びになったら、配給会社はどういう邦題を付けるのだろうか。たとえ“アゲイン”とか“リターンズ”とかいうフレーズを併用しても“前回でファイナルじゃなかったのか!”という突っ込みが入るのは当然で、難しい立場に追い込まれると予想する(笑)。

 さて、主人公の元エージェントのロバート・マッコールは今回イタリアのシチリア島に出張し、マフィアが管理するワイナリーを軽く壊滅させるが、思わぬ不手際で重傷を負う。何とかたどり着いたのがカンパニア州サレルノ県にあるアマルフィ海岸沿いの街で、地元の国家憲兵や医師の助けにより一命を取り留める。当地で療養を続けることにしたマッコールだが、そこは同地を買収してリゾート地にしようとするマフィアの狼藉に苦しめられていた。この街が気に入って腰を落ち着けようと思っていたマッコールは、CIA捜査官のエマ・コリンズらと協力して悪者どもの排除に乗り出す。



 主人公がどうしてイタリアまで出かけて“仕事”に励んでいるのか、明確な理由は説明されない(一応、何かを取り返したのどうのというセリフがあるが、具体性は無い)。舞台になる街が風光明媚で、住民は気の良い者ばかり。そこに絵に描いたような悪行をはたらく連中が登場するという、リアリティ希薄の図式的な筋書きには苦笑するしかない。エマがわざわざアメリカから駆けつけた事情とやらも、強引さは否めない。そんな御膳立てを気にせずスルーしてしまえば楽しめるのだろうが、あいにく第一作の秀逸な設定を知っている身としては、簡単には受け入れられない。

 ただし、この映画での主人公の暴れ具合は、かなりエゲツない。有り体に言えば、スプラッタ度が高いのだ。これはかなり観客を選ぶだろう。アントワーン・フークアの演出は前2作よりもフットワークが良くない。スンナリとドラマが進まないのだ。主演のデンゼル・ワシントンはかなり歳を重ねてはいるが、あれだけ身体が動けばOKだろう。マジで次回作があるかもしれない。

 エウジェニオ・マストランドレアやレモ・ジローネ、ブルーノ・ビロッタといった現地キャストは馴染みは無いが、皆良い味を出している。また、エマ役のダコタ・ファニングがすっかり大人の女になっていたのには驚いた。そういえばデンゼル御大との共演は「マイ・ボディガード」(2004年)以来である。当時は彼女は子供だったのだが、時の経つのは早いものだ。
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最近購入したCD(その43)。

2023-11-03 06:09:03 | 音楽ネタ
 ローリング・ストーンズのディスクを買ったのは何十年ぶりだろうか。ロック史に大いなる足跡を残したバンドではあるのだが、ここ18年間はオリジナル曲によるスタジオ録音の新譜もリリースせず、完全に“過去のグループ”と見做されても仕方がない存在だった。しかも、チャーリー・ワッツが鬼籍に入り、いよいよキャリアが終焉を迎えるのだと思い込んでいた。ところが、今回久々にニューアルバム「ハックニー・ダイアモンズ」発表し、健在ぶりを見せつけてくれたのには驚くしかない。

 しかも、内容がすこぶるアグレッシヴだ。別段、新しいことをやっているわけではない。だが、全体に漲る明朗さと前向きな勢いには聴き手を引き込むパワーがある。これはプロデューサーのアンドリュー・ワットの手腕によるところが大きいのだろう。彼はオジー・オズボーンやエルトン・ジョン、イギー・ポップなどのベテランと組んで実績を挙げてきた人材だが、ジャスティン・ビーバーやポスト・マローンら若手のミュージシャンを手掛けて長所を引き出したことでも知られる。そのためか、サウンドの一つ一つに張りがあり、老成した部分などまるで感じられない。



 また、ゲストも豪華だ。ポール・マッカートニーにエルトン・ジョン、スティーヴィー・ワンダーとレディー・ガガ、そしてビル・ワイマンまで“カムバック”し、さらにはC・ワッツの生前の音源まである。とにかく、シングルカットされた「アングリー」に始まってバンド名の由来となったマディ・ウォーターズのナンバー「ローリング・ストーン・ブルース」まで存分に楽しませてくれるこの一枚。ロックファンなら必携盤と言って良いのかもしれない。

 テイラー・スウィフトの初期の音源が本人の同意なしに投資ファンドに売却されていたことが2020年に明らかになり、彼女は過去の楽曲をすべて再レコーディングするハメになったことは巷間に伝わっているが、そのどれもがヒットチャート上位にランクインしているのだから恐れ入る。その第四弾「1989」は、最も期待していたディスクだ。2014発表のオリジナル版はあまりの出来の良さに舌を巻いたものだが、今回の“テイラーズ・ヴァージョン”では、さらなるグレードアップが認められる。



 とにかく、音の“数”が多い。そして音像が分厚い。まるで再生オーディオ機器のクォリティがアップしたかのような手応えを感じさせる。聴き手によってはオリジナルのストレートなタッチが好まれるのかもしれないが、多くのリスナーはこの新録のゴージャスさを選ぶのではないだろうか。おまけに、未発表のナンバーが5曲も追加されている。結果として総演奏時間78分という、お買い得感満載の一品に仕上がった(笑)。

 彼女は現時点で再録プロジェクト残りの2枚となるファースト・アルバムの「テイラー・スウィフト」及び「レピュテーション」に取り組んでいるとのことだが、これらもかなりのセールスを記録するのだろう。自身の楽曲の権利を失うという深刻なトラブルに見舞われながら、それを逆手にとって新たなマーケティングを打ち出している彼女のしたたかさには感服するばかり。当分は快進撃が続きそうだ。

 ベルリン・フィルの首席フルート奏者として知られるエマニュエル・パユは、ソロのプレーヤーとしてもトップクラスだ。一時期は自身の個人的な活動が忙しく、楽団を離れていたほどである(現在は復帰 ^^;)。そんな彼がフルートソナタの新録の題材として選んだのが、シューマン夫妻およびメンデルスゾーン姉弟による作品群。アルバムタイトルは「ロマンス」で、ピアノ伴奏はフランスの名手エリック・ル・サージュ。2022年秋にベルギーのナミュール・コンサートホールで吹き込まれている。



 曲目はロベルト・シューマンの「3つのロマンス(作品94)」にクララ・シューマン「3つのロマンス(作品22)」、ファニー・メンデルスゾーンの歌曲集(フルート版)にフェリックス・メンデルスゾーンの「ソナタ ヘ長調」など。ハッキリ言って、馴染みの無い曲ばかりだ(苦笑)。特にクララ・シューマンの名は知ってはいたが、メンデルスゾーンにファニーという姉がいて、作曲家として活動していたというのは、恥ずかしながら初耳である。だが、どれも肌触りが良くしみじみと聴かせる。

 パユとル・サージュのコンビネーションは万全で、これら比較的マイナーな曲目を有名なナンバーであるかのごとく仕上げている。特筆すべきは録音で、マイクは楽器に寄っており(ホールトーンは控え目の)直接音主体の展開だが、生々しく音像が前に出てくる。まるでフルートが奏でる旋律を、最前列から身を乗り出して聴いているようだ。エコーを効かせたサウンドデザインも良いが、こういうモニター系(?)の組み立て方も悪くない。久々に室内楽のコンサートに足を運びたくなった。
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