日々楼(にちにちろう)

古今東西・森羅万象の幾何(いくばく)かを、苫屋の住人が勝手御免で綴ろうとする思考の粉骨砕身記です。

女王国

2011年09月04日 | 日記

天照大御神は市杵嶋姫(いつきしまひめ)の別名でもあることを、8月21日に書きました。
これは丹後一宮・籠神社の海部氏の勘注系図が伝えていました。

今日は別の角度から考えてみたいと思います。
昔、天照大御神と素戔烏命(すさのおのみこと)は誓約(うけい)をされたました。

素戔烏命は、農耕には不向きの性格をお持ちだと周囲からは思われたらしく、『記・紀』に登場される最初から、
伊奘諾尊(いざなぎのみこと)と伊奘冉尊(いざなみのみこと)によって、(『古事記』では、伊奘諾尊によって)、
神逐(かむやら)いの対象として描かれます。

『日本書紀』から引用します。
「この神、勇悼(いさみたけ)くして、安忍(いぶり)なる(=残忍な)こと有り。且常(またつね)に哭(な)き泣(いさ)つるを以って行(わざ)とす。
故(かれ)、国内(くにうち)の人民(ひとくさ)をして、多(さわ)に以て夭折(あからさまにし)なしむ。復便(また)、青山(あおやま)を枯(からやま)に変(な)す。
故、其の父母(かぞいろは)の二注(ふたはしら)の神、素戔鳴尊に勅(ことよさ)したまはく、
汝(いまし)、甚だ無道(あづきな)し、以って宇宙(あめした)に君臨(きみ)たるべからず。固(まこと)に当(まさ)に遠く根国(ねのくに)に適(い)ね
とのたまひて、遂(つひ)に遂(やら)ひき」。

素戔烏命は金属精錬に力を入れられたようです。
燃料にする樹木の伐採と鉱毒で、田畑は荒れ、山は枯れ、人は夭折しました。
それ故、植林に励まれた記録も残ります。

追放されてしまわれた素戔烏命は、
天照大御神のもとに赴(おもむ)かれます。
天照大御神は、素戔烏命が国を奪いに来たのではないかと思われて、臨戦態勢で臨まれます。
素戔烏命は、「自分はお別れの挨拶に参上致しました。その心に邪心はありません」と申され、
ここで命(みこと)の真心を証す誓約(うけい)が、
天照大御神と素戔烏命の間で行われます。

誓約の内容は、
素戔烏命が男の御子を生まれれば、命の嘘偽りのない真心が証され、女の御子であればそうではないと云うものです。
結果は、天照大御神が素戔烏命の十握剣(とつかのつるぎ)を噛み砕いてお生みになったのが、
九州姫三神(田心姫=多紀理毘賣=たぎりびめ、湍津姫(たぎつひめ)、市杵嶋姫(いつきしまひめ)で、
素戔烏命が、天照大御神の八坂瓊(やさかに)の統御(みすまる)を噛み砕いてお生みになったのが、
正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊(まさかあかつかちはやひあまのおしほみみのみこと)を含む男の御子五神でした。
ここに誓約が成立しました。

この後、
天照大御神は素戔烏命の御子五神を御自分の御子として養われ、天照大御神の御子姫三神は素戔烏命の子孫が斎祭(いつきまつ)ることになります。
素戔烏命御自身は、田の畔(あぜ)を壊したり、馬を田に入れたりして、やはり農耕には不向きの振る舞いによって、神逐(かむやら)いされてしまいます。
そして、正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊には、改めて高皇産霊尊(たかみむすびのみこと)の女(むすめ)・𣑥幡千千姫(たくはたちぢひめ)を合わされて、
御子・天津彦彦火瓊瓊杵尊(あまつひこひこほのににぎのみこと)が誕生されます。
この御子が天降られて神武朝の祖となられます。

結論
この誓約は次の事を現代の私達に伝えてくれます。
1.天照大御神の国=女王国は、九州姫三神の国であること。
2.誓約には大国主命の国譲りを伏線として含むものであること。
3.日本の皇孫も国津神(くにつかみ)も共に遠くは素戔烏命の血脈の人であること。
4.誓約は現代に至る日本の神々の骨格を定めたこと。
5.この誓約によって新王朝が始まったこと。
6.誓約の執行役を果たされた高皇産霊尊は母神(注:男神に訂正 2024.03.04)であり、『古事記』では高木神とも呼ばれ、御名前からイスラエルで天后と呼ばれたアシラとの連関を考えさせるものであること(訂正注:高皇産霊尊が男神であると、天后・アシラは豊穣の女神であり、同一神としての関連を考えていたのは、このブログ筆者の思い違いとなります。6の補記1、2を参照してください。 2024.03.04)

6の補記1:  誓約の執行役は、『記・紀』に特に記載されていません。訂正致します。高皇産霊尊は、天照大御神が正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊、そして、天津彦彦火瓊瓊杵尊に天を降られる任(東征)をお与えになる時、神々にそれを議(はか)り、お命じになる神々の中枢として登場されます。また、「高皇産霊尊は母神であり」と書きましたが、丹後一宮・籠神社の勘注系図には、高木神は伊弉諾尊の別名であると記しています。これから考えるに、『記・紀』では高皇産霊尊=高木神には父性の役割を持たせていると言えます。これに私見をはさめば、古来、武神としての天照大御神の御名は男性が引き継いで来たものと思われます。それは、勘注系図が、天照皇大神の亦の名を天香語山命と記し、天香語山命は正哉吾勝々也速日天押穂耳尊の別名であると記すことからも明らかです。(蛇足ながら、天香語山命は物部を代表する姓でもあります)。しかし、日本の場合、その国家の根幹を形作るとき、その任を果されたのは男性ではなく、女性である天照大御神でした。そのため、それを支えられた神として、武神に合わせて、神の依り代であり、かつ、生命の力強さと豊かさの象徴を示す神として、高木神がここでは語られているように思います。つまり、高皇産霊尊=高木神は天照大御神の正統性をあまねく示すための神として、ここでは登場されているということです。このように考えることもできます。(2014.03.17)

6の補記2 高皇産霊尊=高木神について:旧約聖書のエレミヤ書は、主である神を畏れず、バアル(神名)によって預言し、その後を追うイスラエルの民が、「木に向かって『わたしの父』と言い、石に向かって『わたしを生んだ母』と言う」、と伝えています(エレミヤ書2-8、2-23、2-27)。ここから高皇産霊尊=高木神は、父神であり、またホセア書では、「わが民は木に託宣を求め、その枝に指示を受ける」と記し、「バアルを祝った」ことを伝えます(ホセア書 4-12、2-15)。これらのことから、ホセア書、エレミヤ書の時代のイスラエルの人々が習俗として拝した対象が、日本の『記・紀』において、その皇統形成の正当性を示す神として登場され、語られていると考えると、日本人が古代イスラエルの習俗を引き継いだ民であることを証していると考えることができます。(2024.03.04)

[ちょっと一息]
1.天照大御神の太陽神としての神格が、何処から来たか考えて来ましたが、
やっと、推測ではなく根拠あるメソポタミア・オリエントとの繋がりを、見つけることができたという思いでいます。
それも文献上はやはりイスラエルとの繋がりを導出するものでした。
呉越の神話を考える必要がありますが、日本に来た人々が持っていたと考えられる太陽に対する敬虔な気持ちは、
「天の岩戸」の説話を経て、天照大御神のなかに習合されていったものと思われます。

2.皇統をアッシリアに求めたい方もいらっしゃると思いますが、見ましたように素戔烏命の王朝があったとしても、それは命(みこと)で終焉(しゅうえん)しました。
遡れば、朝鮮半島→中央アジア・烏桓→アッシリアとなりますが、この領域の文献は現在の所ありません。
日本での皇統を考えられる場合は、素戔烏命から考えられるのが無難かと思われます。
無論、その前には日本にはたくさんの国が有ったことは言うまでもありません。

3.日本の神話も国際的な広がりの中で捉えたいと思います。
私は、現在の王朝を建てたのはダン族だと考えています。根拠は三輪山の大物主神(おおものぬしのかみ)です。

大物主神はしばしば蛇の化身として語られます。そこで蛇を神格として持つ古代の文明や氏族を考えました。
たくさんあります。しかしどれも日本の氏族と整合性をもって語れません。だが一つだけありました。
ヒントは、マーヴィン・トケイヤーというアメリカ人ラビの書いた『日本・ユダヤ封印の古代史』という本から貰いました。
彼はその中でイスラエル12部族の紋章を掲げており、ダン族のそれが「蝮」でした。

眉唾(まゆつば)ものだと思われるかも知れませんが、
これはダンに与えられた祝福、「創世記 第49章 ヤコブの祝福」→「蝮」と「申命記 第33章 モーセの祝福」→「獅子」を根拠にしています。
これを日本の神話に付会してみますと、天児屋命(あめのこやねのみこと)を遠祖とする中臣氏のシンボルは「鹿」で、ヤコブの祝福でのナフタリのシンボルは「牝鹿」です。
氏族名の発音とシンボルは相似します。

また、ナフタリのシンボルはモーセの祝福では「湖」です。
この場合、中臣に縁の深い鹿島神宮は、しっかりと北浦(霞ヶ浦の南)の南方に鎮座していらっしゃいます。言い伝えられた伝承を守った立地と見ても良いでしょう。

ここで大物主神がダンだとしても、何故皇統がダンになるのだという疑問も出ましょう。
それは天照大御神と素戔烏命の誓約で見ましたように、皇孫も国津神も素戔烏命から出ているからです。
そして私は、国譲りをされた大国主命(おおくにぬしのみこと)は饒速日命(にぎはやひのみこと)だと考えています。
これについてはまた書きます。

                    

                    夏空に秋雲(左)見ゆ

 

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