近年「死語」になった言葉に「良識の府」があった。
昨年の参議院議員選挙前に、政府擁護紙といわれている産経新聞はこんな「主張」をしていた。
「参院選始まる 『良識の府』担う自覚持て」
・・・。参議院は「良識の府」といわれる。ならば、それに値する人物を選びたい、ということだ。候補者や政党は、名実ともに「良識の府」と呼ばれる参院をつくる自覚を持ってほしい。 ・・。参院議員は衆院議員と違って任期途中の解散に伴う失職がなく、6年間の任期が保証されている。より長い在職を通じて、識見や専門性を生かし、政策や法案などを議論、議決することが期待されている。 深刻な人権侵害問題に取り組むことは、民主主義国の国会の責務であり、外国への内政干渉には当たらない。 |
もっともこの記事中の「深刻な人権侵害問題」とは、新疆ウイグル自治区やチベット、南モンゴル、香港などの「深刻な人権状況」を「国際社会の脅威」とみなす決議を衆議院では「中国」の文言を避けながらも中国における深刻な人権状況に疑義を呈する決議を賛成多数で採択したにも関わらず参議院ではそのような決議を見送ったことで、参議院に対する不満をぶちまける内容であった。
ある意味では、衆議院に追随しないで独自の見解に基づいての行動ならば、まさに「良識の府」といえる。
しかし今国会での参議院での審議ぶりをみれば、明らかに「良識の府」をかなぐり捨てた「第二衆議院」と言われても仕方がないほどの堕落であろう。
「疑念だらけなのに議論打ち切り 入管難民法改正案の残された問題とは 『外国人の命が危機』の声上がる」
【東京新聞より】
外国人の収容・送還のルールを見直す入管難民法改正案が8日の参院法務委員会で可決された。これまでの国会審議で、出入国在留管理庁(入管庁)の難民審査の問題点や、大阪出入国在留管理局(大阪入管)の医師が酒に酔った状態で診察していたことが明らかになった。だが、議論は尽くされぬまま、法案が成立に向かっている。支援者は「外国人が命の危険にさらされる」と警戒する。 ◆「難民、見つけることできない」発言の参与員に重点配分 改正案では3回目の難民申請以降は、難民認定すべき相当の理由がなければ強制送還できるようになる。この前提には2回目までの審査で、母国で迫害のおそれがあるかどうかを調べ、難民として保護すべき人を保護する体制が確立されていることが必要だ。ところが、審議では難民審査への疑念が浮上した。 入管庁が難民ではないと認定した外国人が、不服を申し立てた際に2次審査を担う「難民審査参与員」。111人いるが、NPO法人名誉会長の柳瀬房子氏に全件の4分の1に当たる1231人(2022年)分が集中し、多くは書類審査だけで処理されていたことが判明。入管庁は、柳瀬氏の「難民を認定したいのに、ほとんど見つけることができない」との発言を申請回数を制限することが必要な根拠として引用してきた。 一方で、年に数件しか任されていない参与員もおり、入管問題に詳しい高橋済弁護士は「入管庁が1次審査結果を覆さない参与員にばかり重点配分している」と語る。 ◆「説明は尽くした」と言うが… さらに、収容施設内の医療を巡り深刻な問題が明らかになった。21年にスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)=が、名古屋入管で十分な医療を受けられず死亡したことを受け、医療体制強化が図られた。その一環として大阪入管が雇用した常勤医師が今年1月、酒に酔った状態で診察していたことが5月末に発覚した。斎藤健法相はこの問題を2月に把握していたが公表せず、審議で隠蔽いんぺいを指摘する声が高まった。 だが、問題点に応えないまま、「説明は尽くした」(斎藤法相)と参院での審議を終え、法相の問責決議案も否決された。 「日本政府が外国人の命は軽くしか考えていないことが分かった」。トルコの少数民族クルド人男性(47)は失望する。日本人女性と結婚しているのに5回の難民申請は不認定で、在留特別許可も得られていない。母国では政治運動を理由に逮捕状が出ている。改正案では送還対象になるため、帰国したら「トルコの空港で逮捕される」とおびえる。 難民問題に詳しい安藤由香里・大阪大招聘しょうへい教授は「少子高齢化でますます外国人との共生が必要になるのに、共生と逆行する法案を通してしまった。人権尊重に消極的な国として評価が下がり、高度人材も含め働きにくる人も減る可能性がある」と説く。 |
法務委員会で可決された入管法改定案の付帯決議を読み上げる、国民民主・川合孝典参議院議員。せっかくこれまで真摯で公正な質問を続けて来てくれた人なのに、賛成ありきの党略によって、こんなもん読まされてさ…。手が震えてるじゃんよ。こうゆう右に倣えの日本社会が元凶なんだよ。#入管法改悪反対 pic.twitter.com/qd2lENCXAy
— fusae (@FATE_SOSEI) June 8, 2023
さらに最近の参議院では与党議員の多数の暴力もどきの「懲罰」が大手を振っている。
れいわ・山本太郎代表の懲罰動議提出へ 入管法改正案採決時などで議員らにケガさせる
— 毛ば部とる子 (@kaori_sakai) June 8, 2023
与野党は9日にも山本代表に対する懲罰動議を提出するということです。https://t.co/BI2QFZTzdk
⇒簡単に懲罰なんかするなよ。こんなことまで多数決で決まるようなら議会の終焉だよ。
しかし以前には自民党議員もこんな暴力もどきの行為を行っていた事実がある。
佐藤正久議員はすごい痛そうなパンチを小西洋之議員にしてるけど、懲罰受けたんでしたっけ?
— yume🕊👑🐃 (@peperon0853) June 8, 2023
なんで自民党だとしてもいいんですか〜?#れいわ新選組を支持します#山本太郎さんを支持します#山本太郎議員を支持します pic.twitter.com/vt4p2VRTTL
そして極み付けは維新の会のコヤツのふるまいである。
「鈴木宗男氏 東京新聞記者の〝秩序を乱す発言〟を批判「こんなことは初めてですよ」厳罰求める」
望月記者がきょうの国会で、立民石川議員のスピーチに「そうだ、そうだ」と傍聴席から声を上げたことを捉え、宗男らは維新と自民で懲罰委員会かける手続きを進めているそうだ。望月記者への狙い撃ちの言いがかり。自民&維新が支配する国会で、こうやって言論が殺されていく。 https://t.co/B99ZGEHE7s
— 青木 俊 新作「逃げる女」(小学館)発売中 (@AokiTonko) June 8, 2023
「維新の会と自民党とで望月記者を懲罰委員会に付託するべく手続きを行っています」という鈴木宗男は、「政府・自民党」が疎ましく思っている望月衣塑子記者を「出入り禁止とか、記者バッジを外させる」ということでますます維新の会の「ゆ党」ぶりを鮮明にしてくれていたわけである。
こんな救いようもない国会なので、国民にもっと明らかにする必要があるかもしれない。
「粛々と可決される異次元の売国棄民法案 兵器爆買いから原発回帰まで 翼賛化した国会の実態を暴露 」
【長周新聞より】
グローバル・エコノミストの斎藤満は「投票権のある現役世帯に良い顔をして増税負担を避け、国債発行に頼れば、少子化対策のコストを現在の子どもや孫世帯に付け回すことになり、『子どもに負担をかける少子化対策』というブラックジョークになりかねない」と指摘する。
「このままでは「子どもに負担をかける少子化対策」というブラックジョークに。なぜ票集めのバラマキで予算が消えるのか?=斎藤満」
■3兆円規模「異次元の少子化対策」は選挙の票稼ぎ? 異次元の少子化対策を打ち上げる岸田政権。その歳出規模は3兆円を超えると言います。 少子化担当大臣を据えて何年もこの問題に取り組んでいますが、少子化を食い止めることができません。昨年の出生者数は77万人余りと、ついに80万人も割り込み、明治の時代に逆戻りしました。 政策に効果が出ないと、その規模を膨大にする発想はアベノミクスと変わりません。 しかも、その財源には触れず、この恩恵にあずかる人の数を増やすことに余念がありません。資産家にも、高校生の子どもを持つ高齢世帯にも児童手当を支給し、学費の補助をします。 解散総選挙の時期を探る岸田政権にとって、少子化対策の成果よりも、選挙へのプラス効果がより重要なようです。 ■少子化の原因を明かせ 病気を治すにはその原因を正しくつかみ、そのうえで処方箋を書くのが医者の仕事。病気の原因がわからないまま、ただ薬を大量に与えても病気は治りません。むしろ薬の投与過剰で副作用が出るリスクがあります。 現在日本で進行する少子化の原因を、政府は正しく診断できているのでしょうか。 政府の基本認識は、子育てには金がかかるので子どもを増やせない、との認識で、従って子育て世帯に思い切って経済支援すれば解決する、というものです。 確かにコスト高ゆえに、経済的に2人目・3人目を産む余裕はない……との世帯もあります。従って経済的余裕のない若年世帯に経済支援することに異論はありません。 しかし、少子化という病気の原因はそれだけでしょうか。すでに子どもを持つ世帯に経済支援することで、どれだけの成果が上がるのでしょうか。 ■「結婚して家庭を持つだけの経済力がない」 そもそも子どもを持ちたくても持てない人たちにも目くばせが必要です。その点、出生数と結婚件数との間に高い相関があります。結婚件数が減少していることが少子化の大きな要因になっています。 生涯独身を通すという人が男女を問わず増えています。その理由の中に、結婚して家庭を持つだけの経済力がない……という点が無視できません。国税庁の民間給与実態調査によると、非正規労働者の年収は平均で190万円程度で、正社員の4割にも及びません。これでは結婚して子どもを持つ意欲がわきません。 ■無駄な投薬も その一方で、必要性に疑問のある投薬も認められます。 例えば、18歳以下の子どもがいれば、高所得世帯も資産家世帯も児童手当を受給できるようにしました。子どもを持つのに経済的な制約のない世帯にまで支援をすることが、どれだけ少子化の改善につながるのでしょうか。その資金を誰かが負担することになることも考えねばなりません。 また一部の自治体では合計特殊出生率が1を下回るなど、少子化が深刻なために、独自に幼児や児童の医療費無料化、学費の無償化を進めているところがあります。これらに対して、交付金などで資金支援するのか、国費で負担する形にシステムを作り替えるのか、現場との調整ができているのでしょうか。 ■若者の将来不安軽減策を 子どもを持ちたくても持てない人々への支援が重要です。 不妊治療の保険適用など、医療面での負担軽減は進んでいますが、そもそも経済的な制約から、結婚・出産をあきらめている人々を救済する観点が必要です。 特に、現在平均年収190万円の非正規労働者は、仕事がいつ切られるのか、収入が増えるのか、多くの将来不安を抱えています。しかも、老後の貯えができるのか、非正規のままで無年金になったら老後をどう生きるのか、不安は募ります。 この将来不安が強いなかでは、なかなか結婚にも踏み切れません。共働きで結婚できても、子どもを持つ余裕がないという人々も少なくありません。 こうした若者の将来不安を軽減することが、結果的に結婚件数・出生数の増加につながる面があります。直接効果が見えにくい分、対策を打ち出しにくい面はありますが、所得の増加期待や、社会保険の適用で厚生年金の受給資格が得られれば、多少なりとも不安は軽減されます。 そのためには、4割近い非正規労働への対処が必要です。 この非正規化はもともと企業の人件費削減策として打ち出されました。実際、低成長でも企業の人件費負担が抑制された分、企業収益は最高益を更新しています。 その一方で、労働者に「ワーキング・プアー」が増え、労働分配率の低下が国内需要を低減させ、企業にとっても需要減となり、投資の抑制、内部留保の積み上げ、低成長化の悪循環になっています。 非正規の正規雇用転換、ないしは非正規労働者への社会保険負担を進め、内部留保課税が財産権侵害となるなら、その残高への課税ではなく、毎期の利益準備金への繰り入れ分に法人税をかけ、それを少子化対策への財源に充てる手もあります。 ■財源を示せ いずれにしても、児童手当などバラマキ規模だけ大きくするのではなく、その財源をどうするのかも、国民に諮る必要があります。 財政の基本は、余裕のある人(部門)から困っている人(困窮部門)に所得移転する再分配機能が期待されています。 いま困っているのは、育児費用に困っている世帯だけでなく、経済的な制約で結婚も出産もできない人々も対象で、余裕のある部門としては法人であり、資産家、1千万以上の所得のある人々などです。特に所得が1億円を超えると、所得税率が低下する逆進性の税制を修正することで少子化対策資金の多くは賄えます。 投票権のある現役世帯に良い顔をして増税負担を避け、国債発行に頼れば、少子化対策のコストを現在の子どもや孫世帯に付け回すことになり、「子どもに負担をかける少子化対策」というブラックジョークになりかねません。 政府は責任ある財源措置を国民に示し、審判を仰ぐ必要があります。 日本の結婚件数は1972年に110万組でピークを付けた後減少し、コロナの2020年には52万組まで減少、その後も回復せず、22年も速報値で52万組弱となっています。結婚する人が減れば、出生数が減るのも理解できます。結婚適齢期の対象者数が漸減傾向にあるのも事実ですが、前述のように、結婚しない人が男女ともに増え、さらに初婚年齢も高齢化しています。 ここに少子化の大きな原因があるとすれば、児童手当の拡充では解決しえないことになります。まずは安心して結婚し、子どもを持てる環境を作ることが重要です。その処方箋が書かれていません。 |
そもそも「出生数と結婚件数との間に高い相関」があり結婚件数が減少していることが少子化の大きな要因になっていることを考慮していない岸田文雄政権の少子化対策である。
さらには、思い出してほしいのは「首相官邸ホームページ」のこの文言である。
「新しい資本主義の実現です。成長を目指すことは極めて重要であり、その実現に向けて全力で取り組みます。」
「分配なくして次の成長なし」。
「成長の果実を、しっかりと分配することで、初めて、次の成長が実現します。大切なのは、『成長と分配の好循環』」です。
どうも今の岸田文雄政権では、「分配無くして次の成長もなし」と聞こえてくるのはオジサンだけだろうか、と思ってしまう。