新・定年オジサンのつぶやき

残された日々をこの世の矛盾に対して勝手につぶやきます。
孫たちの将来に禍根を残さないよう、よき日本を「取り戻したい」。

稀代の演出家の岸田文雄が「策士策に溺れる」

2023年06月01日 12時04分47秒 | 岸田文雄外交

新聞やインターネットから遮断された生活から戻ると、相変わらず安倍晋三政権時代よりもさらに悪質な政策が、次々とほとんど「与党化」した国会で決められていたようである。
 
たとえば、 自家用車を所有していないとか運転免許を持っていない国民にとっては大きな打撃ではないが、日常的に使用している業者にとっては負担が軽減することはなくなったこの改正案。       
 
高速道路、有料2115年まで 半永久化へ改正」 
 
そしてさらに酷いのはこの乱暴な法律改正である。
 
原発『60年超運転』法が成立 自公維国などが賛成 電力業界の主張丸のみ 福島事故の反省と教訓どこへ
 

                     【東京新聞より】
 
おそらくは多くの政治家連中は自分たちが生きているうちは大事故など起きやしないと高を食っているのであろう。
 
しかし今後すべての国民にとっては大きな問題になる「マイナンバー」に関するトラブルは決して他人事では済まされない。
 
マイナ法改正案2日成立へ 参院委可決、保険証廃止
 
しかし、なぜ政府が保険証の廃止を急ぐのかといえば、こんなカラクリがあったらしい。
 
マイナ保険証の資格確認はNTTの光回線で独占状態…反発されても政府が推進をやめないことと関係は?
 

健康保険証とマイナンバーカードを一体化した「マイナ保険証」。別人の情報が表示されたり、不具合で全額払いを余儀なくされるトラブルが報告されているが、そもそもマイナ保険証を使ったオンライン資格確認にも疑問が。事実上、NTTの光ファイバー通信の独占状態な一方、導入が難航するケースも少なくなく、医療機関側の不満も強いからだ。拙速なマイナ保険証化への反対世論も強まる中、政府がかたくなに推進する背景に、利権のにおいはないのか。(山田祐一郎、岸本拓也)
◆「NTT光回線以外の選択肢がなかった」
 マイナンバーカードと一体化された健康保険証のオンライン資格確認が今年4月に義務化された。その「オンライン」部分たる回線はほぼ、NTT光回線の一択となっている。だがそれが、医療機関の現場で困惑を広げている。
 「もともとは光回線を入れられない建物だったが、何とか工事してもらった」。東京都江戸川区で歯科医院を開く扇山隆さん(57)は昨年12月のシステム導入時の苦労をこう語る。もともと医院では、電話線を使用した「ISDN」を利用。2024年1月にISDNはサービスが終了するが、建物との位置関係などの理由で以前から業者に「光回線を引くのは難しい」と言われていたという。
 「オンライン資格確認の義務化では当初は光回線以外を考えた」というが、「システム業者から『オンライン資格確認は原則、NTT光回線でないと』と言われ、それ以外の選択肢がなかった」と振り返る。国は導入に際し補助金を出しているが、全部はまかなえず、自己負担分が出た。
 4月以降、同院で顔認証付きカードリーダーを利用した資格確認は全体の1.2%。全国で健康保険証とマイナカードとのひも付けの際の誤入力が判明して以降は「結局は紙の保険証で確認せざるを得ない。システム自体の信用がなくなった」とあきれる。
 北九州市小倉区で100年以上続く歯科医院の院長を務める杉山正隆さん(61)は、システムを申し込んでいるがまだ導入完了していない。現在、NTT以外の光回線を使用しているといい、「回線がシステムに適合しているか調査が必要で、料金は15〜30分で2万円以上かかると言われた。すべてが決められた回線や高い価格で進められており、ぼったくりでは。本当に導入するべきなのか悩んでいる」と不信感を募らせる。
◆他社の光回線でもNTT関連企業がほぼ必須
 オンライン資格確認システムにはNTT東日本、西日本のフレッツ光の「IPv6(最新のインターネット通信規格)」というオプションの契約が必要だが、他社の光回線を契約している場合でも利用することは可能だ。この場合、別に機器を設置したり、ネットワークサービス契約を結んで月額数千円の利用料を支払う必要がある。これらのサービスを提供するのもほぼNTTの関連企業だ。
 対象となる医療機関や薬局は計20万以上。「NTTが独占的にシェアを握っている。NTT光回線以外でも可能ではあるが、接続が難しかったり、スムーズでなかったりして結局、NTTの回線に変えているケースもあると聞く」と話すのは、東京保険医協会の岩田俊・広報部長。「回線自体が不安定で医療に持ち込むには疑問があるのに、あいまいなまま一気に進んでいる」とマイナ保険証やオンライン資格確認義務化に突き進む一連の政府の姿勢を危ぶむ。
 「医療機関の要望ではないのに、NTTが提供している回線を使い、それがないと保険証の確認ができない。資格確認システムは大量の患者データを収集する回線を敷設するのが目的であり、NTTに医療の金を持っていくという政府による一時的な企業救済でしかない」
◆必要な技術を提供できる企業がNTTだった?
 それにしてもなぜ、オンライン資格確認の通信回線の提供は、NTTが独占的な状況になっているのか。
 オンライン資格確認の通信回線について議論した昨年8月の厚生労働省の審議会で、医療介護連携政策課の水谷忠由課長は、セキュリティー面を理由に挙げてこう説明した。「悪意のある第三者からの攻撃による情報漏えいがないようにするため、オンライン資格確認で用いる医療機関等のネットワーク回線は、基本的には(IPv6を前提とする)IP-VPN方式、すなわち通信事業者が独自に保有する閉域のネットワークを原則とした」。この技術を提供できる主な企業がNTT東西だったという。
 改めて厚労省の担当者に聞くと、「通信事業各社に技術的な要件であるIP-VPNを提供できるか聞き取りしたところ、できると答えたのが、NTTをはじめとする事業者だった。(KDDIなどを)排除したわけではない」と話す。
◆NTTと言えば…接待攻勢や大規模通信障害が問題に
 ただ、こうした説明をうのみにできない状況もある。気になるのがNTTグループと中央省庁との密接ぶりだ。オンライン資格確認の所管は厚労省ながら、NTTグループは、マイナンバーカードの基盤をつくっている主要企業体の一つで、マイナンバー政策を進める総務省やデジタル庁とも関係が近い。近年では、同省やデジタル庁の幹部らにNTTが接待を繰り返していたことが問題となった。
 また、総務省所管でマイナンバー事業の中核を担う「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」に社員を出向させているNTTグループをはじめとする各社が、14〜20年度に機構が発注したマイナンバー関連事業の約8割に当たる1140億円を受注していたことも本紙の取材で判明している。
 こうした官民接近の疑わしさの一方で、肝心のNTTの通信インフラとしての能力にも疑わしさが残る。NTT東西とも4月に、光回線のネットサービスなどで大規模な通信障害を起こし、総務省から行政指導を受けたからだ。さらにNTT西は、指導を受けた直後にも大阪府と兵庫県の一部エリアで固定電話が利用しづらい障害を起こした。
 もし、こうした通信障害が起きた場合、従来の保険証が廃止されマイナ保険証しか持っていなければ、オンライン資格確認ができなくなり、「全額請求」されかねない。現実に、医師らでつくる全国保険医団体連合会(保団連)の調査では、登録データの不備などで、マイナ保険証しか持たない初診の患者が「無効」と表示されたことを理由に「いったん10割負担」を請求されたケースが204件起きている。
 厚労省の担当者は「初診でなければ、以前の受診情報で本人確認を取れるので10割を請求されることは考えにくいが、まったく初診の場合は、医療機関の判断となる。基本的には紙の保険証の紛失時と同じ扱い」と、いったん全額請求される可能性はあると話す。
◆不具合連発だけでなく、官民癒着はないのか
 不具合やトラブルを繰り返すマイナカード事業に見え隠れする官民癒着の懸念がぬぐえぬまま、政府は31日にも参院地方創生・デジタル特別委員会で、健康保険証の廃止を含めたマイナンバー法関連改正案を通そうとしている。
 ジャーナリストの青木理氏は、こうした状況を日本全体の地盤沈下と重ねて、こう危ぶむ。「五輪や給付金事業もそうだが、ここ30年で日本の大企業が競争力を失っていく中で、公金にたかる構図が浮き彫りになった。資本家や政治家ら既得権者が沈んでいく船の配分争いをしている。マイナンバー事業はその象徴的な例に見える。国民は不要なものを押しつけられ、そのつけを払わされている
◆デスクメモ
 官公庁の入館証、学校の登下校管理、オンラインでの銀行取引やショッピング…政府の掲げるマイナカード利用は生活のあらゆる場面に及び、セキュリティーも重要だ。となると、オンライン資格確認にかかわる「独占」だけで済むとは思えない。そしてその利権は巨大なものになる。

 
東京五輪の「電通」や健康保険証の廃止を含めたマイナンバー法関連改正案の陰には「NTT」という相変わらず利権に群がるフィクサーが後を絶たないということであろう。
 
それにしても、マイナンバーシステムの余りにものポンコツぶりには、元富士通で住民基本台帳をはじめあらゆるシステム開発に携わっており、その後富士通通総研で電子政府・電子自治体体、マイナンバー、地域活性化をテーマに研究活動を行っていた榎並利博が、「今年3月以降、住民票の誤送付や公金受取口座の誤登録など、マイナンバーカードと個人情報の紐付けミスが大きな問題になっている。
こういった自治体の情報連携ミスは年間1万件起きていると言われているが氷山の一角である可能性が高い。
制度の導入から7年が経ち、マイナンバー制度は利用方法が拡張され、当初の原則から崩れている。大惨事が起きる前に、基本方針を見直し、制度を再構築すべきだ。」と根本的な欠陥を指摘し見直すべきと言っている。
 
マイナンバー紐付けミス狂騒曲、これは初期トラブルか基本方針の歪みか
マイナンバー制度を基本方針から見直し、再構築を検討する時期に入っている
」  
 
今年の3月以降、マイナンバーカードと紐付けの問題が大きくクローズアップされている。三人の大臣が陳謝するなど混乱を招き、一向に収まる気配がない。
 これらは複数の原因が絡んでおり、初期トラブルとして許容すべきものと、当初の方針から逸脱していると思われるものまである。
 筆者は以前の拙稿 でマイナンバーカードの紐付け問題を取り上げたこともあり、今回の問題を解きほぐすとともにマイナンバー制度の今後についても展望したい。
今回の主な問題は下記の3点であり、原因はそれぞれ異なる。しかし、すべてを紐付けミスとして取り上げられることも多く、一部で誤解を招いているケースもあるようだ。
①住民票の誤交付:マイナンバーカードを使ってコンビニで住民票を取得しようとしたところ、他人の住民票が交付された。
②公金受取口座の誤登録:マイナンバーカードを使ってマイナンバーと公金受取口座を紐付けたら、他人名義の口座が登録されていた。
③保険証情報の誤登録:マイナンバーカードで保険証の情報を見たら、他人の保険証情報が紐付けられていた。
 結論から言うと、今回の3つの問題と以前の筆者の指摘とは関係がない。しかし、この問題をきっかけに筆者の懸念を裏付ける資料があることが判明し、それはそれでまた大きな問題であることを後半で指摘したい。
■なぜ誤交付や誤登録が起きたのか、その要因
①住民票の誤交付
 これは紐付けミスによる問題ではない。紐付けの問題であれば、どのような状態でも常に誤交付が起きるはずだが、今回問題が起きたのは、ちょうど引っ越しなどが集中する時期であり、住民票交付の処理が過負荷状態になるタイミングで起きた。
 これは明らかにプログラムのミスであり、システム、あるいはプログラム設計に起因したものだ。システム開発に関わったベンダーに弁解の余地はない。
 当初、横浜市で発生した原因は突き止められたものの、また別の原因で足立区でも発生したことが判明している。あらためて「行政機関で個人情報を扱う」ことの重大さを認識すべきだろう。
②公金受取口座の誤登録
 これは紐付けミスの問題である。ただし、行政側のミスというより、登録作業を行った利用者側のミスである。役所の支援窓口に設置されている端末で、利用者が登録処理のログアウトを忘れたため、後続の利用者が口座情報を上書きしたことに起因する。
 しかし、利用者のミスと片づけられるだろうか。支援窓口に来るくらいであるから、マイナポータルなどの操作に不慣れであることは明白だ。確実に処理終了後にログアウトさせる、ログアウトするまでは画面上にログイン中として本人の氏名を表示するなどの配慮が必要だろう(後述するが、マイナポータルはログイン中でも本人の氏名が表示されない設計になっている)。
③他人の保険証情報が紐付けられている
 これは紐付けミスの問題で、ミスを起こしたのは医療保険者である。健康保険組合などがマイナンバーカードと健康保険証を紐付ける時に誤入力が起きたらしい。このようなケースが全国で約7300件見つかったと報じられた。
 しかし、本人からの申告であり、しかもチェックデジットの付いたマイナンバーの入力で、それほどのミスが起きるだろうか。
 そう思って3年前の厚労省の資料を見て驚いた。「保険者が個人番号を把握していない者について、住基ネットへの照会により個人番号を取得することを基本とする」と記載されている。マイナンバーを取得する際には、厳格な本人確認(身元確認と番号確認)が必須という原則はどこに行ったのか。
 氏名や生年月日で本人を特定することの危険性は、自治体職員であれば誰でも知っている。マイナンバー制度開始前には、年間何件もの同姓同名による他人口座の差し押さえなどが起きていた。だから本人特定のための「マイナンバー」が必要になったのだが、厚労省には伝わっていなかったのだろうか。
■マイナポータルでの上書きが起きる理由
マイナンバーは住民基本台帳をもとに付番されている。少なくとも基本4情報(氏名、住所、性別、生年月日)が合致していることを確認しなければ、マイナンバーの取得においてミスが起きることは明らかである。
 今回の誤登録に関して、デジタル庁ではマイナポータルで情報を確認するよう呼び掛けている。公金受取口座では氏名を含む口座情報が、健康保険証情報では氏名を含む保険証情報が表示されるため、本当に自分の情報であるかを確認できる。
 しかし、ここで疑問が湧く。マイナポータルで氏名が表示されるということは、情報提供ネットワークシステムで個人情報が流れているということであり、これは情報提供ネットワークシステムでは個人情報を流さないという当初の基本方針に反するのではないか。
 公金受取口座や保険証情報を追加するという作業の中で、いつの間にか当初の方針がないがしろにされてしまったようだ。
 ちなみに、マイナポータルで地方税情報などを確認してみると良い。総所得金額、給与所得額、給与収入額などは表示されるが、氏名などの個人情報は表示されない。よほど金額に相違がなければ、他人の情報が連携されていても気づかないだろう。
 また、マイナポータルにログインしても、ログイン中の利用者の氏名が表示されないのもこの理由による。だから、ログアウトし忘れた他人のアカウントで自分の情報を上書きしてしまうことが起きる。
■紐付けミスなど1万件は氷山の一角
これらの紐付け問題に関連して、日経新聞の記事(5月24日)によれば。このような事象とは異なる別の紐付けミスの問題が指摘されている。
「地方公共団体情報システム機構」(J-LIS)が今年2月17日付で自治体に発行した文書に、「他人の情報が連携(ひもづけ)されるケースが頻発している」という事実が記載されているという。
 自治体に確認してみると、内部番号の取り違え、マイナンバーと内部番号の紐付けミス、マイナンバーと住民票コードの紐付けミスなどで年間約1万件の情報連携ミスが起きているようだ。
 問題は過去記事「マイナンバーカードと健康保険証の一体化、今のままでは大惨事が起きかねない」でも指摘したように、情報照会しても基本4情報が連携されないため、他人の情報が連携されても気づかないという点だ。
 それを考えると、1万件という数字は氷山の一角かもしれない。
 所得があるはずなのに「所得ゼロ」という照会結果であればおかしいと気づくが、同じような情報が連携された場合にはそのまま事務処理を進めてしまうだろう。自治体職員からも、「正しく事務処理をしましょうという精神論だけではミスを防げない。紐付けミスに気づくには氏名など個人情報の連携が必要だ」という声がある。
 個人情報を分散管理して情報連携で利用するならば、他の行政機関が保有している個人情報をそのまま鵜呑みにしてはいけない。行政において個人情報を扱う場合には、基本4情報やマイナンバーも連携して確実に本人のものであることを確認しながら情報を利用すべきなのである。
 それでは、なぜ個人情報を連携する設計になっていないのか。住基ネット訴訟における合憲判決の理由の一つが大きく影響している。
■当初の原則が崩れ始めたマイナンバー制度
 合憲の理由である「行政事務で扱う個人情報を一元管理できる主体が存在しないこと」が、「情報提供ネットワークシステムにおいて個人情報が連携されると、このネットワークシステムを管理している総務省が個人情報を一元的に管理しているとみなされる」と解釈されてしまったからである。
 しかし、マイナンバー制度が開始されてから7年が経ち、利用方法が拡張され管理体制などが変化するとともに、当初の原則も崩れているようだ。
 公金受取口座や保険証情報は最近追加された情報だが、これらにおいては氏名や口座番号、被保険者番号、生年月日などの個人情報が連携されている。また、情報連携で本人を特定するために使われる機関別符号は、個人情報保護法が改正されて個人情報という位置づけになった。
 さらに、情報提供ネットワークシステムは総務省とデジタル庁の共同管理となっている。つまり、マイナンバー制度の当初の原則や方針などが大きく揺らぎ始めているのだ。
 基本的な設計方針の見直しに時間がかかることを考えれば、そろそろ再構築のための検討を開始すべきではないだろうか。
 今回の問題に関して、我が国のデジタル化や個人情報保護を統括するデジタル監や個人情報保護委員会からは何の意見表明もないことも気にかかる。今後、医療記録などに拡張していくことに危機感はないのだろうか。
 少しややこしい話になるが、医療保険の現金給付(保険料徴収や給付)はマイナンバーを利用できることになっているが、医療保険の現物給付(診療行為)についてはまだ番号利用や連携についてはっきり決まっていない。
 今後医療記録が連携されていく場合、少なくとも自分の医療記録に他人の情報が紐付けられている、自分の医療記録が紐付けされていない、という事態だけは避けてほしいと願っている。

  
 少なくとも当分の間は健康保険証のお世話になることだけは確かである。
  
 さて、話変わってG7広島サミット終了後の国会では自民党議員に「大成功だった」とヨイショ発言に得意満面だった岸田文雄に対しては政治学者で立命館大学政策科学部の上久保誠人教授は全く反対の評価をしていた。
  
まるで『ゼレンスキー劇場』の広島サミット“失敗"に気づかぬ岸田政権の大罪」 
 
■広島サミット「ゼレンスキー大統領の電撃出席」は大間違いだったと断言できる理由
主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)が開催された。G7と欧州連合(EU)に加え、いわゆるアウトリーチ国としてブラジル、インド、インドネシア、韓国など8か国が参加し、合計16の国・地域・国際機関の首脳が一堂に会した。
G7の首脳は、核軍縮に特に焦点を当てた初のG7共同文書「広島ビジョン」をまとめた。核のない世界を「究極の目標」と位置付けて、「安全が損なわれない形で、現実的で実践的な責任あるアプローチ」に関与すると確認した。
ウクライナに軍事侵攻を続けるロシアに対して「核兵器の使用の威嚇、いかなる使用も許されない」と訴えた。核拡散防止条約(NPT)体制の堅持も提唱した。
被爆地・広島で開催されたことで、核を保有する米英仏を含むG7首脳やグローバルサウスのリーダーたちが揃っての原爆資料館訪問が実現した。ジョー・バイデン米大統領は、「核戦争の破壊的な現実と、平和構築のための努力を決して止めないという共同の責任を思い起こされた」と述べた。
また、リシ・スナク英首相は、子どもたちの遺品の三輪車や血だらけでボロボロの学生服を見たことを明かし、「深く心を揺さぶられた」「ここで起こったことを忘れてはならない」と語った。
要するに、G7広島サミットでは、G7首脳やグローバルサウスの指導者が一堂に会して、被爆の悲惨さを知った。彼らの生々しい発言が世界中に報道された初めての機会となった。これは、核廃絶の取り組みを劇的に変えるものになるはずだった。
その空気を一変させたのが、ウォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領の電撃的な来日だ。G7広島サミット後半は、ウクライナ一色となったのだ。
ゼレンスキー大統領も、原爆資料館を見学した。世界が、ロシアによる核のどう喝にさらされている現状を念頭に、芳名録に「現代の世界に核による脅しの居場所はない」と記した。大統領は、被爆者とも対面し、被爆地の思いに寄り添った。
ゼレンスキー大統領は、G7首脳会議に参加し、各国に支援を訴えた。これを受けて、G7首脳はゼレンスキー氏との会合で軍事、財政などで「必要とされる限りの支援」を続けると約束した。
G7首脳会議では「ウクライナに関する共同文書」がまとめられた。ロシアへの輸出制限を「侵略に重要な全ての品目」に広げた。中国を念頭にした、ロシアへの武器供給の阻止も強調した。
さらに、ゼレンスキー大統領は、ロシアへの制裁に加わらない「グローバルサウス」を代表するナレンドラ・モディ・インド首相、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ・ブラジル大統領も出席していたG7拡大会合でも、「力による一方的な現状変更」を許さないという認識を共有した。
■「ゼレンスキー劇場」と化したG7広島サミット
岸田文雄首相は、サミット閉幕の記者会見で、「広島に迎え、核兵器による威嚇、ましてや使用はあってはならないとのメッセージを、緊迫感をもって発信した」と、ゼレンスキー大統領がG7広島サミットに参加した意義を強調した。
G7広島サミットは、まさに「ゼレンスキー劇場」と化した。
ゼレンスキー大統領来日の実現で、「G7広島サミット」は成功という印象を国内外に植え付けた。各種の世論調査では、岸田内閣の支持率が上昇した。首相は、これを絶好の機会ととらえ、衆院の解散総選挙に打って出るのではないかという噂が、永田町界隈でささやかれるようになった。しかし、現在の状況に、私は違和感がぬぐえないのである。
G7広島サミットの前、ゼレンスキー大統領は欧州各国を訪問し、さらなる軍事支援を調整してきた。戦況を変える切り札として、米国が開発している「F16戦闘機」の供与について、欧米諸国と話し合ってきた。そして、大統領は「フランスの政府専用機」で日本にやってきた。
日本は、これまで防弾チョッキ、ヘルメット、小型ドローンなどを提供してきた。G7広島サミットの岸田首相とゼレンスキー大統領の会談では、さらに1/2tトラック、高機動車、資材運搬車の自衛隊車両を、合計100台規模で提供することで合意した。自衛隊の軍用車両が現に紛争をしている当事国に提供されるのは史上初めてとなる。
だが、このようなウクライナに対する追加の軍事支援が、ロシア軍をウクライナ領から追い出し、戦争を終結させる切り札になるかは、甚だ疑問に思う。
既に、米英など北大西洋条約機構(NATO)は、「三大戦車」など、さまざまな兵器・弾薬類をウクライナに供与し続けてきた。しかし、戦局を抜本的に変えるのはできず、戦争はさらなる膠着(こうちゃく)状態に陥った。さらなる軍事支援でも、その状況は変わらないのではないか。
なぜなら、ウクライナの正規軍はすでに壊滅状態にあるとみられるからだ。ウクライナは今、NATO諸国などから志願して集まってきた「義勇兵」や「個人契約の兵隊」によって人員不足を賄っている。要するに、外国の武器を使って、外国の兵士が戦っているのがウクライナ陣営の現実のようなのだ。
つまり、米英などNATOは、ウクライナが失った領土を奪還することよりも、戦争を延々と継続させることを目的に、中途半端に関与しているようにみえる。
なぜ、戦争を長引かせようとするのか。その理由は、米英などNATOがこの戦争で被る損失が非常に少なく、得るものが大きいからだろう。
ウクライナ戦争開戦前から、この連載で繰り返し主張してきたが、東西冷戦終結後、約30年間にわたってNATOの勢力は東方に拡大してきた。その反面、ロシアの勢力圏は東ベルリンからウクライナ・ベラルーシのラインまで大きく後退した。
ウクライナ紛争開戦後、それまで中立を保ってきたスウェーデン、フィンランドがNATOへ加盟申請し、すぐに承認された。ウクライナ紛争中に、NATOはさらに勢力を伸ばしたのだ。
万が一、これからロシアが攻勢を強めてウクライナ全土を占領したとしても、「NATOの東方拡大」「ロシアの勢力縮小」という大きな構図は変わらない。世界的に見れば、ロシアの後退は続いており、すでに敗北しているとしても過言ではない。
その上、欧州のロシア産石油・天然ガス離れは確実に進んでいる。パイプライン停止を受けて欧州向けが急増したからである。米英の石油大手にとって、欧州の石油・天然ガス市場を取り戻す野望は現実になりつつあるのだ。
さらにいえば、米英などNATOにとってウクライナ戦争とは、20年以上にわたって強大な権力を保持し、難攻不落の権力者と思われたプーチン大統領を弱体化させ、あわよくば打倒できるかもしれない好機でもある。戦争が続くなら、それでもいいと考えても不思議ではない。
■ウクライナの徹底抗戦を支持し続ける国が「日本だけ」になる可能性
一方、すでに戦える状態にないにもかかわらず、米英などNATOの思惑で膠着状態が続けられているならば、ウクライナ国民の命はあまりにも軽く扱われているということにならないか。
要するに、G7広島サミットとは、欧米の利益のために続けられてきた戦争を、さらに継続するための話し合いの舞台だったということだ。
看過できないのは、この話し合いが、唯一の戦争被爆国であり、戦争の恐ろしさについて身をもって知り、平和国家としての道を歩んできた日本の、それも被爆地である広島で行われたということだ。
岸田首相は、「今、衆院解散総選挙を勝てる」と考えるほど、サミットの成功に酔っているという噂がある。だが、平和国家・日本、被爆地・広島の人々の平和への祈りは、踏みにじられてしまったというのが、サミットの現実であり、国際政治の冷酷さなのではないだろうか。
ウクライナ戦争を巡っては、米英などNATOや日本など「自由民主主義陣営」がウクライナの「徹底抗戦」を支持し、中国など「権威主義陣営」が「和平」を提案している。
自由民主主義の本質から外れた「逆転現象」が起こっているのだ。
それは、「力による一方的な現状変更」に対する考え方の違いから生じている。自由民主主義陣営はこれを到底容認できない。侵略された領土を取り返すためには「徹底抗戦」となる。
一方、権威主義陣営は、民主主義的な価値よりも、ウラジーミル・プーチン露大統領の「権威」を尊重する。だから、侵略について「ウクライナが一方的に正しいのではなく、ロシアにも言い分がある」という立場だ。だから、ロシアが軍事的に制圧している地域の併合など、ロシア側の意向に柔軟に沿った「和平」の提案ができることになる。
この「逆転現象」の中で、唯一の被爆国であり、平和国家の道を歩んできた日本が、ウクライナ戦争の「徹底抗戦」を支持し、G7のホスト国として、広島サミットを主導した。
だが、解散総選挙に打って出るのではとささやかれるほど高揚した岸田首相の気持ちとは裏腹に、今後日本が世界で孤立する懸念がある。ウクライナの徹底抗戦を支持し続けるのが、日本だけになってしまうかもしれないからだ。
欧米諸国の中でも、米英と仏独伊は、微妙に立場が異なっている。仏独伊は、できれば早期の停戦を何とか進めたいという「本音」がある。仏独伊をはじめとするEU諸国は、ロシアからの天然ガスパイプラインにエネルギー供給を深く依存してきたからだ。
前述のように、エネルギーの「脱ロシア」は進んでいるものの、米国からのLNG(液化天然ガス)は、ロシアからのパイプライン経由のガス輸入より割高だ。それがEU諸国の経済に打撃を与え続ける状況は続く。その影響をできる限り軽微にするため、早期停戦できるなら、その方がいいのが本音なのだ。
一方、前述したNATO・EUによる東方拡大の事実上の成功は、仏独伊に対しても有利な状況を生み出している。内心に余裕があるからこそ、早期に停戦してもいいとも考えるようになる。
さらに、仏独伊以上に“勝ち組"であることが確定している米国・英国は、それを裏返せば、実は戦争をいつやめてもいい状況だ。どこまでロシアを苦しめられるか状況を睨んでいる。中国の「和平案」が新興国などの支持を集める状況になれば、米英は主導権を握るために、一挙に和平に動くかもしれない。
■ウクライナ問題で「最強硬派」でなければならない日本
これに対して、「現状のままでの停戦」「領土割譲の妥協案」など断固として認められない、欧米よりも切羽詰まった立場に追いやられているのが、実は日本だ。
日本は今、中国の軍事力の急激な拡大、そして台湾侵攻・尖閣諸島侵攻の懸念、北朝鮮の核ミサイル開発という安全保障上の重大なリスクを抱えている。
そうした状況下では、たとえウクライナ問題の解決に向けた手段とはいえ、「力による一方的な現状変更」に屈する形での停戦や妥協案は絶対に容認しないという、揺るぎないスタンスを取らねばならない。
もし日本が中途半端な姿勢を示し、これらの譲歩案を少しでも認めたら、中国が理屈をつけて台湾・尖閣に侵攻してくる可能性はゼロではない。侵略を試みる国が、屁理屈を弄(ろう)して侵略を正当化する余地を、絶対に与えてはならないのだ。
つまり、ロシアによる「力による一方的な現状変更」に屈した譲歩案を認めないことは、単にウクライナ紛争に対する日本の立場を示すこと以上の意義がある。他国に日本の領土を侵され、国民の命を奪うことを防ぐ「安全保障政策」そのものだからである。
日本は国際社会において“穏健そうな国"とのイメージを持たれがちかもしれない。だがウクライナ問題においては、ウクライナの徹底抗戦と領土の回復を、どの国よりも強く支持する「最強硬派」でなければならない。
だが、日本の苦しい立場に、欧米は関心が薄いだろう。端的に言えば、欧米は中国から遠いのだ。
ウクライナ戦争が、ロシアの「力による一方的な現状変更」を容認する形で終結しても、それが台湾有事に波及する懸念に関心を持つことはない。米国とて、台湾有事にどこまで関与する気があるのかは不透明だ。その時、日本は孤立する。
欧米も中国も新興国も、ウクライナ戦争の「和平」に一挙に動く時が来るのかもしれない。その時、唯一の被爆国であり、平和国家であるはずの日本だけが「徹底抗戦」を叫び続ける。そのような厳しい状況に置かれかねない日本の現実がある。岸田首相はどこまでそのことを理解しているのだろうか。
  
 
G7諸国では最後になった岸田文雄のウクライナ訪問では、セレンスキーにG7広島に密かに招待していたらしいのだが、それを唯一のサプライズとして演出したまではよかったのだが、そのあとが本人が意識しない方向になってしまったことは、まさに「策士策に溺れる」ということだったのではないだろうか、とオジサンは思う。 

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