あるテレビのコメンテーターが、思わず「なぜ? 今なんだ!」と驚いていた韓国に対する日本輸出規制措置問題。
第二次世界大戦中、日本の統治下にあった朝鮮および中国での日本企業の募集や徴用により労働した元労働者及びその遺族による訴訟が、いわゆる「徴用工訴訟問題」。
戦時下の植民地徴用は、正規の雇用関係などではなく奴隷労働に近い状態であったことは想像に難くない。
問題は日本の戦後処理の姿勢なのだが、日本のメディアの報道は100%政府寄りであるので、時事通信社、日本経済新聞社と友好関係にある韓国の朝鮮語の日刊新聞である中央日報の記事から拾ってみる。
日本の韓国への「輸出規制とホワイト国排除の決定的な理由でありながら、それが何かは輪郭も露出しないという回答」に対しては、「日本『韓国、不適切な事案あるが、内容は秘密』…切り札か」という記事で冷静に双方の主張を解説している。
そして日本政府が、貿易問題ではなく安全保障上の問題としていることに対しては、「韓国国防委所属議員『むしろ日本が北朝鮮にフッ化水素を密輸出して摘発』」という声を紹介している。
日本が一切の協議もせず一方的に韓国内のIT関連産業の弱体化を狙っているかのような行動には、参院選で苦戦を強いられている安倍政権の「保守層のより一層の支持強化」だとも指摘されているが、予断はまったく許されない状況であることは確かである。
その参院選ではNHKは各党の政見放送を開始したが、先日、「見比べよう政見放送、どちらが嘘つきか」というつぶやきの中で、最後に自民党の「安倍晋三+三原じゅんこ」のトンデモ政権放送と山本太郎の政見放送動画を紹介した。
このツーショットを見たネット上の人の素朴な感想が画像に現れていた。
この政見放送で安倍晋三が言ったことの事実とあまりにも異なる内容について、大手マスメディアは沈黙していていたが、有権者を惑わす主張にはその真偽を明確に示す必要がある。再確認1 pic.twitter.com/p1SqjYdNir
— 緊急事態条項反対・不正選挙追及 (@tetsuyan1112) 2019年7月10日
「非難ゴウゴウの安倍自民「政見放送」をファクトチェック」(日刊ゲンダイ)
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■外交
安倍 最後の最後まで、対立よりも共通点を、粘り強く見いだし、力強いメッセージを、出すことができました。
G20大阪サミットの振り返り。安倍首相はトランプ米大統領に配慮して「保護主義と闘う」との文言を見送り、「自由で公正かつ無差別な貿易・投資環境を実現し、開かれた市場を保つために努力する」と意味不明な首脳宣言を採択した。とても「力強いメッセージ」とは言えない。
安倍 トランプ大統領だけでなく、習近平主席からも、拉致問題について、金正恩委員長に、伝えていただきました。アタクシ自身、あらゆるチャンスを逃さないとの、考え方の上に、全力で取り組んでいく、決意です。
自民は公約の1番手に「力強い外交・防衛で、国益を守る」とうたっているのに、拉致問題は徹頭徹尾仲介頼み。朝鮮中央通信は「安倍首相は世界の笑いもの」「薄らバカ」とコキおろしている。
■年金
三原 野党は政争の具にし、具体的な政策も示さないまま不安をあおるだけの議論に終始している。
立憲民主党は医療や介護などの自己負担額に上限を設ける総合合算制度導入を公約に掲げ、共産党と社民党は物価や賃金上昇に応じて支給額を抑制するマクロ経済スライドの廃止を主張している。
■景気
安倍 この春も、6年連続で、今世紀最高水準の、賃上げが、実現しました。
これは今春闘の実績で、この6年間の実質賃金はマイナス0.6%。
三原 年金積立金の運用益はこの6年で44兆円増えました。民主党政権時代の10倍ですね。
12年10月~18年12月の運用益が44兆円。そのうち民主党政権だった12年10~12月分が5兆円あり、安倍首相が政権を担ったのは数日だけ。
安倍 6年で雇用は380万人、正規雇用も、130万人以上増えました。
非正社員が306万人、正社員が161万人増加し、年収200万円未満の非正社員が36万人も増えたことも触れるべきだ。
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安倍晋三の特徴は、全くのデタラメではなく、自分に都合の良い数字の切り取りが多いことも明らかであろう。
それでは、何故、このようなお粗末な男が6年半も「のうのうと」生きながらえてきたのか、ということに対して、つねに“多数派”を疑いながら、メディアタブーや政権批判に踏み込んでいる俳優の松尾貴史がこう語っていた。
「松尾貴史が語るテレビで芸人が権力批判できない理由…安倍首相のモノマネに『誰かが号令かけたように苦情の電話が』」
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■松尾貴史が語る「叩きやすいものを叩く」風潮とその背後にある閉塞感
政権中枢など力の強い者へは過剰に忖度する一方で、ネット上では、少しでも安倍政権に批判的だととらえられた言論は、確実に安倍応援団やネット右翼から標的にされる。また、政権の重大不祥事や問題発言が大して批判されないまま、「バイトテロ」や「交通事故の加害者」などはその何百倍もネット上で批判にさらされ、過剰な社会的制裁を受ける。いわば批判の価値観の転倒だ。
「いわば、誰もが叩きやすいものを叩いて溜飲を下げるという風潮の背後にある閉塞感。ほかに鬱憤ばらしをする場がないから、誰かが少し道を踏み外したら寄ってたかって叩きのめすという気持ち悪いムード。もともとこの国にはそういう面があったのかもしれません。たとえば関東大震災の際の朝鮮人虐殺とか、誰もが善良な市民の顔をして普段生きているけれど、誰もがそういう負の側面も持っている。最近は匿名のネット上で誰かを叩いたり、デマを拡散して溜飲を下げてみたり……」(松尾)
松尾が言うように、「叩きやすい者だけを叩く」という性質はネットで広くみられるが、それはテレビにも同じことが言えるだろう。青木氏が、昔のテレビでは政治家のモノマネなどの政治風刺があったが、最近は見られなくなったと指摘すると、松尾は、自身がかつて安倍首相のモノマネをテレビで披露したときに受けた“圧力”についてこう語るのだ。
「まだ政権に復帰する前、自民党総裁選に出馬したころのことです。そうしたら、そのテレビ局に苦情の電話が、まるで誰かが号令をかけたように大挙して押し寄せたらしいんですね。で、「次回からは結構です」と言われてしまった。ひょっとしたら誰かに雇われたアルバイトなのか、あるいは義憤に駆られた人たちが同時多発的に電話をかけたのかは知りませんが、そんなふうにプレッシャーめいたことが起きるようになったのが一因かもしれません」
たしかに、テレビで安倍首相のモノマネをすれば、すぐさま親衛隊のネット右翼たちが局に“電凸”と呼ばれる抗議を殺到させ、Twitterなどでも炎上に追い込むのは火を見るより明らかだ。松尾や青木氏も指摘しているとおり、海外では、コメディアンがトランプ米大統領のモノマネなどで強い社会風刺を表現し、それが視聴者にも受け入れられているのに、日本ではそれが「けしからん」として逆にバッシングを受けてしまうのだ。
■安倍首相だけが何段も上のレベルでタブー視されている現状
しかもこの問題は、単に「政治家を笑う」ということ自体がタブー化しているということではない。現在の政治のなかで大きな力を持たない野党や若手の議員、あるいは地方議員の場合、ワイドショーは彼らの問題発言やトンデモ言行を盛んに取り上げ、普段、政治的話題に触れない芸人やタレントたちも口を揃えて批判に転じるケースがある。数年前、「号泣議員」としてあらゆるメディアから笑われた野々村竜太郎・元兵庫県議などはその最たる例だろう。
しかし、これが安倍首相となると話はまったく違う。たとえば第一次政権の際、任期途中で突然、総理をほっぽり出した無責任ぶりに触れれば、即座にネトウヨたちが「持病をバカにした!」などと言いがかりをつけてくる。また、芸人やタレントが野党の政治家を批判しても何も言わないが、たとえば、ウーマンラッシュアワーや爆笑問題などが安倍政権を揶揄するネタを披露すれば、狂ったようにいっせいに牙を剥く。
つまり、「権力・権威を笑う」ことが忌避されるテレビのなかでも、とりわけ安倍首相だけが何段も上のレベルでタブー視されているのである。当然、そうした“安倍揶揄”に対する炎上攻撃を目の当たりにしたテレビ局や他のタレントたちは萎縮し、「笑い」だけでなく、ちょっとでも政権に批判的なコメントをも封印してしまう。そうした負のサイクルがすでにでき上がってしまっているのだ。
もっともこうした現象については、青木氏も「広い意味で政治的な発言ということで言えば、情報番組の司会やコメンテーターをしている芸人やタレントはたくさんいるし、首相をゲストに招いたお笑い番組まであるというのに、そうしたケースでは大した批判が起こらない」と言及している。これに対して松尾は「要するに、強い者を味方する発言は許されるんです。逆に、強い者に歯向かうような発言は批判されてしまう(笑)」と述べているが、まさにそのとおりとしか言いようがない。
■松尾貴史が政権批判を続ける理由「収入は半分くらいになったけど、次の世代を考えれば」
その意味でも、松尾のようにウィットに富んだ政治批判を続けるメディア人は貴重だが、やはり、周囲からのプレッシャーは凄まじいものがあるようだ。前述した著書『違和感のススメ』では、一億総活躍社会などの政策、森友・加計学園問題をめぐる政府対応などを鋭く批判的に批評しているのだが、芸能の世界でこうした問題提起をする難しさは、松尾自身が身をもって知っている。それでも松尾を駆り立てているのは、日本を“戦争のできる国”につくりかえている安倍政権への危機感なのだろう。
「収入で言えば、たぶん半分くらいになっているかもしれませんが、子ども世代が戦争でひどい目に遭うかもしれないとか、そういう可能性を考えれば、いま受けているストレスなんてケタ違いに小さいんじゃないですか」(松尾)
もちろん、政権批判を理由に仕事を干されるということなどあってはならないが、それ以上に、松尾が対談の最後で強調したのは、「権力に対する風刺」を含む権力への批判をためらわないための、積極的な戦略と心構えだった。
「だから一番大切なのは、きちんと批評性のあるものを、時には面白おかしく作ること。そういう才能のある放送作家だとか、パロディに達者な人たちを集めて情報発信する拠点を作る必要があるかもしれません。ただ、そういう賢い人たちって、賢いから仲間割れをしやすいところもあって(笑)」
「政治の世界だって、政権とか与党っていうのは権力と金を持っているから、放っておいてもたくさんの人が自然に群がるわけでしょう。一方、批判する側はみんな正しい批判をしているんだけど、誰もが自分は正しいと思っているから、そのうちにだんだん仲間割れを起こして、力が分散してしまう。最近の選挙の結果ってそういうことでしょう」
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たしかに、ある意味でネトウヨや応援団文化人は下品ではあるが、それゆえに“安倍サマ”の大号令で一致団結している。
一方、メディアにいる気骨のある記者やディレクターは組織のなかで孤立しやすく、政界では野党同士の連携が不十分なのは間違いないだろう。
しかし、このまま安倍政権を放置していれば、明日が今日よりもまたひとつ悪くなっていくだけだ。社会風刺の本質は、自らが真剣に「おとなしさ」を捨てることで権力を笑い者にし、それによって立ち向かう流れをつくっていくことではないのか。
それには、こんな風刺が求められる。
アベを笑うおもしろ可笑しいコンテンツがもっと欲しいね。 pic.twitter.com/T5Qc6TnQXd
— Fumihiro Sakunada (@Fsakinada) 2019年7月11日
そして、ヒョットしたらこんな政治家が本当に必要になって来るのではないだろうか、とオジサンは思う。
今まで選挙に行く習慣はなかったが、山本太郎議員のスピーチをネットで観て「なんかスゲエ」「政治家のイメージとちがう」「気持ちがザワザワした」と感じた人は、ゲーム感覚で今回の選挙に行ってみたらどうだろう。
— 山崎 雅弘 (@mas__yamazaki) 2019年7月10日
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