先週「読売新聞」は、北朝鮮についてちょっと目をひく2つのニュースを相次いで伝えました。
1つ目は12月5日。「「3年以内に肉のスープ」正恩氏が経済目標」というのがその見出しです。
2つ目は12月7日の「北朝鮮、韓流ドラマ視聴で1200人収監」という記事。
案の定、すでに多くのサイトやブログ等でこれらの記事をそのままコピーして流したり、コメントをつけたりしています。
どちらも確かに興味深い記事ですが、なんとなくありそうな話ではありますが、「ひどいなあ」と反応する前に、私ヌルボはいろんなことを考えてしまいました。
今回の記事はとりあえず最初の「米のご飯と肉のスープ」の方についてです。
記事の要点は、金正恩氏が11月上旬頃、平壌での会合で「3年以内に国民経済を1960~70年代のレベルに回復させ、(金日成(キムイルソン)主席の目標だった)『白米を食べ、肉のスープを飲み、絹の服を着て、瓦屋根の家に住む』を、真に成し遂げねばならない」と述べた、というものです。
「米のご飯と肉のスープ・・・」は、金日成が1962年10月22日掲げた言葉です。しかしその後もこの目標は実現されることなく、1990年代、彼の死の前後には100万~300万人(?)、人口の5~15%ともいわれる餓死者を出し、さらに<DKコリア>の伝えるところでは、今年1月「金正日が『米のご飯に肉のスープ、絹の服に瓦の家』という金日成の遺言を達成できなかったと言い、人民生活の向上には手が回らなかったことを認めた」という記事を報じています。
しかし今、金正恩がもし庶民相手に「3年以内に米のご飯と肉のスープを・・・」と言ってもおそらく反応は「何をいまさら・・・」だろうし、むしろ逆効果ではないでしょうか? すると、彼はどんな場で、どういう意図でこう言ったのか? またそれを誰が伝えたのか? そもそも、これは信頼できる情報なのか?
この読売の報道後まもなく、韓国の各メディアが「日本の読売新聞によると・・・」として一斉にこのニュースを流しました。各社がどの程度ちゃんと「ウラをとった」かはわかりません。その中で、「読売」の記事では「平壌での会合で・・・」となっているのを、SBSテレビでは「평양에서 경제 관료들을 모아놓고(「平壌で経済官僚たちを集めて」)としているのが、なにか根拠があるのかな、と思ったくらいです。
読売の記事を読みなおすと、「中朝関係筋が5日、本紙に明らかにした」とあります。もし庶民向けのアナウンスではなく、対経済官僚のような内輪の会議の情報だとすると、どんな情報入手経路があるのでしょうか?
・・・という疑問があるので、このニュースの内容が事実か否かについては、私ヌルボは保留にしておきます。
しかし、北朝鮮の食糧事情があいかわらずひどい状態であることは事実です。
11月22日の当ブログ記事中で、講演会「北朝鮮の現状」の報告を載せましたが、その日会場に掲示されていた北朝鮮の写真中に食膳が撮られていたものがありました。
メニューは、米とトウモロコシが半々のご飯、コチュジャン、ニンニク少し、サンチュ。これで全部です。コチュジャンで肉などを包むのでもなく、コチュジャンをつけて食べる何かがいろいろあるわけでもありません。
また先の記事で8月17日にテレビ朝日「報道ステーション」放映の「北朝鮮デノミ崩壊」と題したDVD映像について記しました。いちばん印象に残っていると書いたのがウサギ飼育のための雑草集めをしている女の子(実は23歳)の姿でした。
ところが、ヌルボが購読しているメルマガ<モーニング・コリア>(←8月22日の記事参照)から最近送られてきた情報中に「ホームレス女性、ついに餓死」という見出しで彼女のことが載っていました。(→記事本文) 上述のテレビ番組中のテロップではウサギのエサとありましたが、自分が食べるウマゴヤシだったんですね。
これも今月初め、たまたま「朝鮮日報」のサイトで「北朝鮮の人口構成、90年代の食糧難でひずみ」とという見出しの記事を観ました。
※リンク先の記事が見られない場合は→コチラそこに北朝鮮の人口ピラミッドが載っていますが、経済活動の主力となる青年層(20-34歳)の人口が少ない「S字型」となっていて、それは1990年代の深刻な経済難と食糧難で、新生児や育ち盛りの子どもが栄養失調や病気で死亡したためとみられるそうです。
また、各種報道によると、北朝鮮人は韓国人より身長が6㎝(orそれ以上)低いともいわれます。
北朝鮮の窮迫した食糧事情を示す例はそれこそ枚挙にいとまがないほどです。
ことほどさような状態なのに、なぜ金正日や北朝鮮指導部はフツーの常識をもっているならすぐわかる解決策、すなわち開放政策に踏み切らないのか、というと、やはり現在の地位とその<役得>を失いたくないということと、また開放政策をとるとわが身がチャウシェスクのような悲惨な末路においやられるかもしれないという恐れにとらわれていると考えていいんでしょうね?
北朝鮮当局がこれまでしばしば外国に対して求めている<体制保障>というのは、国際的・軍事的な安全保障だけでなく、<現在の北指導部の組織・地位等の保証>のようにも読めてしまうのですが、いかがなものでしょうか? (外国に求める筋のものでは当然ないが・・・。)
「読売」の記事の通り金正恩が語ったことが本当だとすれば、いよいよ経済がジリ貧になって、このまま沈みゆく船に乗っているよりも、父の金正日を踏み切り台にして果敢に開放政策に打ってでるなんてことを企図しているのかしら!? ・・・結論は、「よくわからん」、としかいいようがありません。(ここまで読んでくださった方、すみません、です。)
※プロの評論家諸氏は、よくいろいろ語れるなあと思います。北朝鮮のように情報自体が少なく、正確度にも乏しい中、「わかりません」という方が誠実かつ妥当な答えだという場合もあると思いますが・・・。
1つ目は12月5日。「「3年以内に肉のスープ」正恩氏が経済目標」というのがその見出しです。
2つ目は12月7日の「北朝鮮、韓流ドラマ視聴で1200人収監」という記事。
案の定、すでに多くのサイトやブログ等でこれらの記事をそのままコピーして流したり、コメントをつけたりしています。
どちらも確かに興味深い記事ですが、なんとなくありそうな話ではありますが、「ひどいなあ」と反応する前に、私ヌルボはいろんなことを考えてしまいました。
今回の記事はとりあえず最初の「米のご飯と肉のスープ」の方についてです。
記事の要点は、金正恩氏が11月上旬頃、平壌での会合で「3年以内に国民経済を1960~70年代のレベルに回復させ、(金日成(キムイルソン)主席の目標だった)『白米を食べ、肉のスープを飲み、絹の服を着て、瓦屋根の家に住む』を、真に成し遂げねばならない」と述べた、というものです。
「米のご飯と肉のスープ・・・」は、金日成が1962年10月22日掲げた言葉です。しかしその後もこの目標は実現されることなく、1990年代、彼の死の前後には100万~300万人(?)、人口の5~15%ともいわれる餓死者を出し、さらに<DKコリア>の伝えるところでは、今年1月「金正日が『米のご飯に肉のスープ、絹の服に瓦の家』という金日成の遺言を達成できなかったと言い、人民生活の向上には手が回らなかったことを認めた」という記事を報じています。
しかし今、金正恩がもし庶民相手に「3年以内に米のご飯と肉のスープを・・・」と言ってもおそらく反応は「何をいまさら・・・」だろうし、むしろ逆効果ではないでしょうか? すると、彼はどんな場で、どういう意図でこう言ったのか? またそれを誰が伝えたのか? そもそも、これは信頼できる情報なのか?
この読売の報道後まもなく、韓国の各メディアが「日本の読売新聞によると・・・」として一斉にこのニュースを流しました。各社がどの程度ちゃんと「ウラをとった」かはわかりません。その中で、「読売」の記事では「平壌での会合で・・・」となっているのを、SBSテレビでは「평양에서 경제 관료들을 모아놓고(「平壌で経済官僚たちを集めて」)としているのが、なにか根拠があるのかな、と思ったくらいです。
読売の記事を読みなおすと、「中朝関係筋が5日、本紙に明らかにした」とあります。もし庶民向けのアナウンスではなく、対経済官僚のような内輪の会議の情報だとすると、どんな情報入手経路があるのでしょうか?
・・・という疑問があるので、このニュースの内容が事実か否かについては、私ヌルボは保留にしておきます。
しかし、北朝鮮の食糧事情があいかわらずひどい状態であることは事実です。
11月22日の当ブログ記事中で、講演会「北朝鮮の現状」の報告を載せましたが、その日会場に掲示されていた北朝鮮の写真中に食膳が撮られていたものがありました。
メニューは、米とトウモロコシが半々のご飯、コチュジャン、ニンニク少し、サンチュ。これで全部です。コチュジャンで肉などを包むのでもなく、コチュジャンをつけて食べる何かがいろいろあるわけでもありません。
また先の記事で8月17日にテレビ朝日「報道ステーション」放映の「北朝鮮デノミ崩壊」と題したDVD映像について記しました。いちばん印象に残っていると書いたのがウサギ飼育のための雑草集めをしている女の子(実は23歳)の姿でした。
ところが、ヌルボが購読しているメルマガ<モーニング・コリア>(←8月22日の記事参照)から最近送られてきた情報中に「ホームレス女性、ついに餓死」という見出しで彼女のことが載っていました。(→記事本文) 上述のテレビ番組中のテロップではウサギのエサとありましたが、自分が食べるウマゴヤシだったんですね。
これも今月初め、たまたま「朝鮮日報」のサイトで「北朝鮮の人口構成、90年代の食糧難でひずみ」とという見出しの記事を観ました。
※リンク先の記事が見られない場合は→コチラそこに北朝鮮の人口ピラミッドが載っていますが、経済活動の主力となる青年層(20-34歳)の人口が少ない「S字型」となっていて、それは1990年代の深刻な経済難と食糧難で、新生児や育ち盛りの子どもが栄養失調や病気で死亡したためとみられるそうです。
また、各種報道によると、北朝鮮人は韓国人より身長が6㎝(orそれ以上)低いともいわれます。
北朝鮮の窮迫した食糧事情を示す例はそれこそ枚挙にいとまがないほどです。
ことほどさような状態なのに、なぜ金正日や北朝鮮指導部はフツーの常識をもっているならすぐわかる解決策、すなわち開放政策に踏み切らないのか、というと、やはり現在の地位とその<役得>を失いたくないということと、また開放政策をとるとわが身がチャウシェスクのような悲惨な末路においやられるかもしれないという恐れにとらわれていると考えていいんでしょうね?
北朝鮮当局がこれまでしばしば外国に対して求めている<体制保障>というのは、国際的・軍事的な安全保障だけでなく、<現在の北指導部の組織・地位等の保証>のようにも読めてしまうのですが、いかがなものでしょうか? (外国に求める筋のものでは当然ないが・・・。)
「読売」の記事の通り金正恩が語ったことが本当だとすれば、いよいよ経済がジリ貧になって、このまま沈みゆく船に乗っているよりも、父の金正日を踏み切り台にして果敢に開放政策に打ってでるなんてことを企図しているのかしら!? ・・・結論は、「よくわからん」、としかいいようがありません。(ここまで読んでくださった方、すみません、です。)
※プロの評論家諸氏は、よくいろいろ語れるなあと思います。北朝鮮のように情報自体が少なく、正確度にも乏しい中、「わかりません」という方が誠実かつ妥当な答えだという場合もあると思いますが・・・。