ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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北朝鮮政府だけは擁護する<人権派>って・・・・

2010-12-20 23:45:41 | 北朝鮮のもろもろ
 「週刊金曜日」の最新号(12月17号)。
 投書欄に「日本人を盲目的にする北朝鮮情報」と題する一文が寄せられていました。

 不確かな情報だけで北朝鮮という国や国民を罵倒したり嘲笑したりすることを批判してるのかな、と思ったら、次のような冒頭からしてアレレのレ。

 本誌11月26日号の「北朝鮮」石丸次郎氏の記事を読んでがっかりした。これでは、右寄り新聞の情報と変わらない。「北朝鮮」におどろおどろしい国のようなイメージを焼き付けている。

 ・・・11月26日号の石丸次郎氏の記事というのは、同誌10月29日号で成田俊一というジャーナリストが書いていた「先端技術の応用で生産力増強に突き進む 「自給自足国家」へ向かう熱気」という記事を<北朝鮮の提灯持ち記事>と批判した記事のことです。要するに、北朝鮮に都合のよいことだけを書いてくれる人たちは歓迎して、良いところだけ見せる、ということです。

 私ヌルボ、11月14日の記事で「週刊金曜日」に石丸氏の寄稿が載ったことを記しました。
 ようやく「週刊金曜日」も北朝鮮の人権問題についてのスタンスが少し変わってきたのかなと思いましたが、抵抗勢力というべきジャーナリスト&読者はいまだ根強い力をもっているようです。

 上記投稿者も去る9月29日~10月6日、「長年、日朝国交回復に努力されている元国会議員や著名な学者、平和運動団体代表に同行して」北朝鮮を訪問したとのことで、一面しか見ていないことは事実かもしれないが、「まるでブルーのカーテンがかかって何も見えないかのような報道は誤り」と書いています。外国人ホテルであるとしてもテレビはNHKもCNNも写るし、食事もいろいろあった。「国民全部が飢えているかのごとく報道するのはいかがなものか」というわけです。さらに、
 「日本だってブルーテント村と駅前でたむろしている人たちだけを写真に撮れば「貧困なる日本」が描けることだろう。モノがあふれる国ではないが、医療費や家賃がタダ、という社会を一概に否定はできない。・・・・日本だけが北朝鮮を知らない。西側の諸国には、広く開かれている」
 ・・・と、まあこんな感じで、もう何をかいわんや・・・。(北朝鮮の一般家庭でふつうにNHKが視られるか? 映画「クロッシング」に描かれているような医療の実態はご存じないか? 家だって闇の市場ができてきてるようなのに・・・。)

 この方を含む訪朝団一行の記録が<平和フォーラム>のサイトにありました。「週刊金曜日」10月29日号に「先軍政治を修正し党体制を整備」という記事を書いている和田春樹氏がこの訪朝団に参加している「著名な学者」だったんですね。

 成田俊一という人は「週刊金曜日」の昨年6月5日号にも北朝鮮の現地ルポを寄せています。 タイトルは「あらゆる制裁を恐れない国」。そのあらましは、「5月25日の核実験当日に北朝鮮を訪れていた筆者が聞いた生の声とは。 ・・・北の脅威を煽る日本と、揺るがない北朝鮮。日本では溜飲を下げるために 闇市や飢餓ばかりが報道されるが、この国は着実に力をつけている」。これだけでも北朝鮮の提灯持ちっぽい雰囲気が漂っています。

 ・・・ヌルボが北朝鮮の飢餓や政治犯収容所等を問題にするのは、純粋に人権を、それも生存権を脅かされている人たちが数多くいるためで、決して溜飲を下げるためなどではありません。中にはそういう人もいるのかもしれませんが、なんで一番低レベルの相手を想定して非難するのでしょうか? ビルマの軍事政権やイスラエルの所業等については厳しく批判するのに(それは正しいのだが)、まさに「人権派を盲目にする朝鮮に対する贖罪意識」ってとこですか? 

 上記の投稿者のSさんや成田俊一氏、やはり「週刊金曜日」にしばしば記事を寄せている長沼節夫氏等々は、1984年刊行の金元祚「凍土の共和国」を皮切りに、張明秀「裏切られた楽土」(1991)、姜哲煥・安赫「北朝鮮脱出」(1995)等々、数多く出されている北朝鮮の内部を知る人が書いた本を読んだことがないのかなあ? 読んだとしたら、どう判断したんでしょうね?

 ヌルボも元来<人権派>たることを自認している人間で、こういう方々とも近しい間柄のはずが、どこらあたりから違ってきたのか・・・? 
 どうも、大人になってもサンタクロースの実在を疑わない人たち、という感じがしてしまいます。