4回重田です。
合宿報告はまた別であると思いますが今回の福井合宿では後半好条件が続き同立戦に向けて非常にいい練習が出来ました。この経験を自分ひとりのものにするのは少々もったいないので、今年や来年、Ⅰ部競技を戦う他のメンバーのためにも少し福井でのソアリングについて書き残そうと思います。
まず、福井空港付近で上昇気流が発生する仕組みについて。
今回の合宿期間中は高気圧が日本列島を覆い晴天が続きました。朝は陸風(南風)、昼前に海風(北風)に変わりピストチェンジという典型的な夏の福井の天気。この風が変わる時間帯に南北の風がぶつかり合い海陸風前線となって上昇気流を生みだすわけですが、完全に北風が卓越してくると海からきた湿った空気(重く上りにくい)が地上付近を覆い上昇気流は無くなります。ですから目安としてはピスチェンから1時間後ぐらいが上昇気流のピーク、2時間後にはもう条件が死に始めている事が多いです。風が変わるタイミングはその日の気圧配置や海面と地表の温度の上がり具合でも代わってきますから、よくウェザーをチェックしておく必要があります。
さて、海陸風前線は確実に上昇気流を生みますがそれがグライダーが上昇できるほど強く高く上がるかは別の問題です。強いサーマルに必要なもの、それは暖められた空気です。なにより必要なのは地上付近の温度上昇。風が変わり上昇気流が生まれるときにいかに地上気温が上昇しているかがポイントとなります。温度が低いとサーマルは低い高度までしか上がらず、上昇率も悪いです。どのくらい温度が上がれば強いサーマルが生まれるかは上空の冷え具合にもよりますが(高層天気図や朝方の最低気温、エマグラムをチェック)今回の合宿をではだいたい地上気温が31℃を越えれば粘れる程度(Top600m程度)、32℃を越えれば何とか周回できる(Top800程度)、33℃を越えればバリバリ(Top1000m越え)といった条件でした。つまり風の変わり目―ピスチェンの時に地上気温がどれだけ上昇しているかが最大のポイントとなるのです。快晴の日であればピスチェンが遅ければ遅いほど、条件が良くなるといっていいでしょう。
サーマルのトップが今どれくらいかは曳航中に気流の荒れが治まり急に静穏になる高度で分かります。自分より前に飛んだ人の話をよく聞いて、気温と共にチェックしておけばいつ飛べば周回可能な条件となっているかわかるはずです。早めに離陸して上空で粘っている時もこれから条件がよくなるのか(気温はまだ上がるか)条件が悪くなるのか(湿った北風が卓越しきってサーマルが無くなるのか―条件は北から死にはじめます)を判断してスタートのタイミングを見計らいましょう。
900m以上まで上昇できたら丸岡→安田はワングライドで楽勝なはずです。スタートゲートへ向かうまえに第一旋回点までの飛行コースをよく考えておくと余裕が生まれます。地形、風向、上空の積雲をよく見て沈下の少ないコースを予想しましょう。
第2レグでは追い風になりますから、確実に周りたいなら弱いサーマルでもしがみついていれば自然と風に流されて第2旋回点に辿り着けます。ファイナルグライドは田園地帯の上を向かい風で飛ぶことになるのでコースと速度をよく考えなければ意外と高度を奪われます。さらにゴールが低くなった時のために空港付近のトラフィックをチェックしておく必要もあります。福井空港は木曽川や妻沼のように同時進入はできませんから、ゴール後すぐ場周に入るつもりならその意思を他の機体やリモートに通報しておきましょう。
最後に、Ⅰ部競技は周回速度競技です。上がるだけではなく、前に進まなければならない。滞空点や獲得高度も得点にはなりますが、それは本質ではないです。ひとつのサーマルだけに集中せず周りをよく見て考えることが大切です。
今回は前田教官と竹山や小寺の乗った機体と一緒にソアリング出来て、気の知れた仲間達とグループソアリング(というにはまだまだ稚拙ですが)することがいかに楽しいか実感できました。こうしてソアリングを楽しめる部員がもっと増えてくれると嬉しいですね。同立戦勝つぞー!