今回は、「伊万里 色絵 花文小皿」の紹介です。
これは、昭和58年に(今から37年前に)買ったものです。
表面
裏面
高台内には、焼継師の屋号の「イ」の文字が入っています。
側面
高台がバチ高台になっています。
見ての通り、大傷ものですが、当時、勉強のための教材として買ったものです。現在、コレクターの間で陶片を買うことが流行っていますが、それと同じような感覚でしょうか。
なお、この「器」を「皿」としましたが、上の側面の写真からも分かりますように、高台がバチ高台になっていますことから、この「器」は「皿」ではなく、何かの「蓋」だったのではないかとの疑念があります。伊万里の場合、高台造りがバチ高台になってない場合が多いからです。それに、「蓋」とした場合、バチ形であれば、その部分を摘まんで持ち上げれば開け易いですからね、、。
ところで、この小皿には、上の写真からも分かりますように、大傷を焼継(やきつぎ)という方法で修理が施されています。
焼継という修理は、江戸後期に、磁器の修理方法として流行ったようです。当時、白玉粉という無色ガラス(鉛ガラス)の粉末を継ぎ目に塗って低温度で焼いて接合するというもののようです。この焼継を商売とする人を「焼継師」といったとのことですが、その商売がとても流行ったため、磁器が売れなくなって瀬戸物屋さんが大変に困ったと言われています。しかし、修理代は安かったと思われます。高かったら新しい磁器を買いますものね、、、。
また、「焼継師」は、焼継を終了した器に自分の屋号を残すことが多かったようで、この小皿の場合も、上の「裏面」の写真にありますように、高台内に「イ」という屋号を残しています。
次に、では、この小皿は、何時頃作られたかについて見ていきたいと思います。
そのヒントの一つは、小皿表面に描かれた「雲」の文様にあります。それは、この小皿表面に描かれた「雲」の描き方に特徴があるからです。これに関しては、以前、このブログで紹介(2020年10月20日に紹介)したことのある「伊万里 色絵 家・舟・葦原文輪花形小鉢」の解説が参考になります。
その解説の中で、この雲の描き方に似ているものを「柴田コレクション」から捜した結果として、「柴田コレクションⅠ 362」の染付館唐人文輪花大皿(1690~1710年代)と「柴田コレクションⅧ 196」の染付琴高仙人文小皿(1730~60年代)の2点をあげています。そして、そのうちでも、特に「柴田コレクションⅧ 196」の染付琴高仙人文小皿(1730~60年代)が似ていると指摘しています。
ということで、この小皿は、1730~60年代に作られたものであろうということが分かります。
製作年代: 江戸時代中期(1730~60年代)
サ イ ズ : 口径;10.3cm 高さ;3.5cm 高台径;4.3cm