今回は、「色絵 貼付 梅鶯文 ベク盃仕様碗」の紹介です。
斜め上から見たところ
真上から見たところ
底面
生 産 地 : 肥前・有田
製作年代: 江戸時代中期
サ イ ズ : 口径15.0cm 高さ8.2cm(貼付を含む);6.5cm(碗のみ) 底径4.9cm
なお、この「色絵 貼付 梅鶯文 ベク盃仕様碗」につきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で既に紹介していますので、次に、その際の紹介文を再度掲載することをもちまして、この「色絵 貼付 梅鶯文 ベク盃仕様碗」の紹介とさせていただきます。
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<古伊万里への誘い>
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*古伊万里ギャラリー229 伊万里色絵貼付梅鶯文ベク盃仕様碗 (平成29年6月1日登載)
底に穴が開いている。
ところが、水を注いでも、底の穴から水が出ていかず、だんだんと水嵩が増してゆき、もうそろそろ碗から溢れそうだなと思った時点で、今度は、突然、底の穴から水が出てゆき、溢れない。それどころか、だんだんと碗の中の水は減ってゆく。
サイフォンの原理を応用した作りなのだろうけれど、それを知らないと、非常に不思議に思うことである。
これは、碗の大きさのものであるが、以前に、これと同じ様な仕組みの盃を紹介したことがある。
それは、「古伊万里ギャラリー173 伊万里色絵貼付梅樹文ベク盃」(このブログでは、2021年9月10日紹介の「色絵貼付梅樹文ベク盃」)であるが、次に、再度、そのベク盃を紹介したい。
斜め上から見たところ
斜め上から見たところの拡大
底面
< 口径9.7cm 高さ6.1cm(貼付を含む);4.7cm(盃のみ) 高台径3.2cm >
また、「柴田コレクション総目録のP.393・図3086」及び「柴田コレクションⅥのP.77・図114」にも同じ様な仕組みの盃が登載されているので、次に、併せて紹介したい。
(柴田コレクションⅥの図114から転載)
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*古伊万里バカ日誌157 古伊万里との対話(ベク盃仕様の碗)(平成29年6月1日登載)(平成29年5月筆)
登場人物
主 人 (田舎の平凡なご隠居さん)
ベク碗 (伊万里色絵貼付梅鶯文ベク盃仕様碗)
・・・・・プロローグ・・・・・
主人は、今日はどの古伊万里と対話をしようかなと思って「押入れ帳」をめくっていたら、以前に対話をしたことのある珍しい形の古伊万里に似た碗の記述に目が留まったようである。
そこで、さっそく「押入れ」からその古伊万里を引っ張り出してきて対話をはじめた。
主人: 「押入れ帳」をめくっていたら、以前に対話をしたことのある珍しい形の古伊万里に似ているお前の存在に気付いた。
ベク碗: すぐわかったんですか。
主人: 「押入れ帳」の記載事項を読んだだけで、現物を見ないでも、すぐに、お前の「形」を思い出したよ。珍しいからね。
もっとも、以前に対話をしたことのある古伊万里は、「古伊万里ギャラリー173 伊万里色絵貼付梅樹文ベク盃」(このブログでは、2021年9月10日紹介の「色絵貼付梅樹文ベク盃」)だから、お前のように「碗」ではなく「盃」だったけれどね。
ベク碗: 「古伊万里ギャラリー173 伊万里色絵貼付梅樹文ベク盃」(このブログでは、2021年9月10日紹介の「色絵貼付梅樹文ベク盃」)は「盃」ですし、私は「碗」ですよね。「盃」や「碗」はよく見られますから、特に珍しいことでもなんともないと思うんですが、どこが珍しいんですか?
主人: 確かに。「盃」とか「碗」と見れば珍しくはないわね。でも、「古伊万里ギャラリー173 伊万里色絵貼付梅樹文ベク盃」(このブログでは、2021年9月10日紹介の「色絵貼付梅樹文ベク盃」)にもお前にも、真ん中にニョッキリと太い梅の木が貼り付けてあるよね。それに、最も変わっている所は、それぞれに、底に穴が開いているんだよ。「盃」や「碗」の場合、底に穴が開いていては、液体を入れた場合、底から液体が抜け出してしまって、ものの役にたたないよね。
ベク碗: やはり、液体を入れると、底から抜け出すんですか?
主人: いや、ところが、それが、抜け出ないんだ。
ベク碗: 底に穴があっても抜け出ないんですか!
主人: そうなんだ。不思議だろう。ところが、水を入れていって、もう少しで溢れそうだな、もう入れるのを止めなくてはと思ったとたん、急に底から水が抜け出すんだよ!
ベク碗: ますます不思議ですね。
主人: うん。サイフォンの原理を応用しているんだろうね。
ベク碗: ところで、どうして、「古伊万里ギャラリー173の盃」(このブログでは、2021年9月10日紹介の盃)を「ベク盃」と言って、私を「ベク盃仕様の碗」と言うんですか。
主人: 本来なら「ベク盃」とも「ベク盃仕様の碗」とも言わないんだろうね。
「ベク盃」というのは、盃の底に穴が開いているので、その穴を指で塞いで酒を注いでもらうわけだが、注がれた酒を飲み干さなければ盃を下に置けないわけだよね。そんな「盃」を「ベク盃」というわけなので、お前のように、底の穴を塞がなくとも下に置けるものは、厳密には「ベク盃仕様」とも言わないんだろうね。
ベク碗: わかりました。厳密には「ベク盃仕様」とは言えないんですね。
そうそう、何故、「ベク盃」と言うんですか?
主人: 以前、「古伊万里ギャラリー173 伊万里色絵貼付梅樹文ベク盃」(このブログでは、2021年9月10日紹介の「色絵貼付梅樹文ベク盃」)と対話をした際(「古伊万里バカ日誌103 古伊万里との対話(ベク盃)」参照)(このブログでは、2021年9月10日紹介の「色絵貼付梅樹文ベク盃」参照)、ちょっと調べたことがあるんだ。
それに依ると、漢字では「可盃」という字が当てられるようだね。漢字では、例えば、「可何々」と書いた場合は「何々すべし」という表現になるし、「可行候」と書いて「行くべくそうろう」という表現になるわけで、この「可(べく)」という文字は下に(文末に)くることがないわけだね。つまりは、下に置けないということで、このような盃のことを「可盃(ベク盃)」と呼ぶようになったらしいよ。
ベク碗: ちょっと、こじつけみたいな感じですね。
主人: まぁね。名称の由来なんてものはそんなもんじゃないのかな。
ベク碗: 私は、厳密には「ベク盃仕様」ではないことがわかりましたが、それでは、私は、どのような目的のために作られたんでしょうか・・・・・。
主人: それについても、「古伊万里ギャラリー173 伊万里色絵貼付梅樹文ベク盃」(このブログでは、2021年9月10日紹介の「色絵貼付梅樹文ベク盃」)と対話をした際(「古伊万里バカ日誌103 古伊万里との対話(ベク盃)」参照)(このブログでは、2021年9月10日紹介の「色絵貼付梅樹文ベク盃」参照)、
「さあさ、お立合い! 不思議な盃だよ! 底に穴があるのに水は漏れないよ! 目ん玉ひん剥いてよ~く見てなよ! 水を入れるよ! さあ、どうだ!」
というような口上の際に使われた器だったんじゃないかと推測したんだが、実際はどうなのかね。その後も、不勉強で、調べもしていないから、その推測の域を出ないね(><)
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