今回は、「染付 草花文 中皿」の紹介です。
ところで、この「染付 草花文 中皿」につきましても、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で、既に紹介しているところです。
そこで、次に、その時の紹介文を再度掲載することをもちまして、この「染付 草花文 中皿」の紹介といたします。
==========================================
<古伊万里への誘い>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
*古伊万里ギャラリー245 伊万里染付草花文中皿 (平成30年10月1日登載)
表面
裏面
なお、この中皿には石ハゼが見られる(表面の二重圏線内の時計の針の8時の方向)。
その拡大写真は次のとおりである。
表面の二重圏線内の時計の針の8時の方向の拡大画像
また、この石ハゼは裏面にまで突き抜けているようである(裏面高台内の時計の針の4時の方向)。
裏面高台内の時計の針の4時の方向の拡大画像
更に、この中皿には、もう一か所、窯疵がある(裏面の口縁付近の時計の針の2時の方向)。この窯疵は、小さな石コロのような物が焼成中にはずれて出来たものと思われる。
裏面の口縁付近の時計の針の2時の方向の拡大画像
このように、この中皿は、十分に水簸されていない陶土を使って成形されたようである。
それに、染付も黒っぽく発色しており、良質な呉須を使っていないことがわかる。
ようするに、この中皿は、安い原材料を使って作られたことが分かるのであり、上手のものではないことを示している。
ただ、鑑賞の点からすれば、むしろ、そこに、見所なりが存在することになり、趣きさえ感じさせるのである。
生 産 地 : 肥前・有田
製作年代: 江戸時代中期
サ イ ズ : 口径;17.4cm 底径;10.5cm
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
*古伊万里バカ日誌173 古伊万里との対話(石ハゼの中皿)(平成30年10月1日登載)(平成30年9月筆)
登場人物
主 人 (田舎の平凡なご隠居さん)
石ハゼ (伊万里染付草花文中皿)
・・・・・プロローグ・・・・・
主人は、今回も、例によって、主人の所にやってきた古伊万里の順番に従って対話をしようと考えたようで、その古伊万里を押入れの中から引っ張り出してきて対話を始めた。
主人: お前は、平成26年の7月に我が家に来ているから、もう4年が経過しているんだね。月日の経つのは早いもんだね(遠い目)。
石ハゼ: そうですね。この調子で往ったら、百年や二百年はあっという間に過ぎ去って、私なんか、堂々たる「骨董品」になりますね。
主人: お前は、既に三百年近く経っているから、今でも、古格のある、堂々たる「骨董品」だが、あと更に二百年も経過すれば、益々、古格に磨きがかかるんだろうね。
でも、それは、これから、無事に二百年生き延びればの話だよね。
まず第一の関門は、私が亡くなってからどうなるかだね。私が亡くなって、誰もお前の引き取り手が現れなかったら、お前はゴミとして処分され、打ち捨てられてしまうわけで、お前の命運もそこで尽きてしまうんだよね。
そして、その第一関門を無事通過しても、今度は、次の関門が待っているね。例えば地震だ。地震によって打ち壊されてしまうかもしれない。また、火災で罹災してしまうかもしれないよね。次々と新たな試練が打ち寄せてくるわけだ。
一言で、百年、二百年と言うが、現実にこれから二百年生き延びるのは容易なことではないと思う。武運を祈るしかないな。もっとも、お前は既に三百年近く生き延びてきたんだから、運は強いのかもしれないね。
石ハゼ: 運を天に祈って頑張ります(^-^;
主人: ところで、お前は、雑に作られているよね。
表面の二重圏線内の時計の針の8時の方向に石ハゼが見られるだろう。裏面だと、高台内の4時の方向だが・・・・・。
![]() |
![]() |
表面の二重圏線内の8時の方向の拡大画像 | 裏面高台内の4時の方向の拡大画像 |
水簸の悪い材料を使って作られたんだろうね。中に石コロが入ったまま成形されているんだものね。普通、胎土の中に石コロなどが入っていると、焼いているうちに、そこから割れてしまい、無事に焼き上がらないと思うんだよね。特に、焼成温度が高い磁器の場合は。ところが、お前の場合は、無事、無疵で焼き上がっているんだから驚きだよ(骨董の場合は、石ハゼ等の窯疵は疵とは言わない)。そういう点でも、お前は、生まれながらに強運の持ち主だったんだね。
石ハゼ: 無事、割れずに、無疵で生まれてこれてよかったです(^-^;
主人: また、お前は、作りが雑なだけではなく、染付の原料の呉須の質も上等な物とは言えないようだし、絵付けだって雑だね。裏側面の唐草繋ぎ文など、簡略化され過ぎていて、先入観がないと、唐草を描いているとは思えないくらいだね。
言うならば、お前は、上手の一級品として誕生したわけではないということだね。
上手の一級品なら、大切に使用されてきたであろうから、残存率も高くなるだろうけれど、そうでもない場合は、それほど大切には扱われなかったろうから、残存率もそれほど高くはならないと思うんだよね。その点でも、お前のこれまでの所蔵者は、お前を大切に扱ってきてくれたわけで、お前は、所蔵者にも恵まれてきたんだね。生まれた後も運が良かったわけだね。
石ハゼ: 強運が続いてきたわけですね。
主人: そうだ。お前は強運の持ち主だ! その調子で、あと二百年は生き延びてくれ。
==========================================