今回は、「染錦 花園に少女文 中皿」の紹介です。
なお、この「染錦 花園に少女文 中皿」につきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で既に紹介していますので、次に、その際の紹介文を再度掲載することをもちまして、この「染錦 花園に少女文 中皿」の紹介とさせていただきます。
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<古伊万里への誘い>
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*古伊万里ギャラリー236 伊万里染錦花園に少女文中皿 (平成30年1月1日登載)
表面
裏面
一見、中国産のように見えるが、日本・有田産である。
高台内に目跡があり、それが日本・有田産であることを雄弁に物語っている。
染付の他に、赤、金、緑、青、紫が使われていて、賑やかであり、華やかである。
赤も、濃い赤一色だけではなく、薄い赤も使用されている。また、赤の種類も一色だけではないようである。
蛸唐草文も、逆蛸唐草文とし、しかも、蛸唐草文の周囲を金彩で縁取りしている。
造形的にも、輪花形としている。
よく観察してみると、かなり手の込んだ作りであることが分かる。
生 産 地 : 肥前・有田
製作年代: 江戸時代中期
サ イ ズ : 口径;24.3cm 底径;12.5cm
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*古伊万里バカ日誌164 古伊万里との対話(花園に少女文の中皿) (平成30年1月1日登載)(平成29年12月筆)
登場人物
主 人 (田舎の平凡なご隠居さん)
少 女 (伊万里染錦花園に少女文中皿)
・・・・・プロローグ・・・・・
主人は、今日は元旦であるため、正月にふさわしい古伊万里と対話をしたくなったようである。
そうはいっても、主人のところは貧庫ゆえ、それにふさわしい物は見つかりそうもないと思われる。
しかしながら、なんとか、正月にふさわしいとまでは言えないけれども、普段よりはいくらか華やかさを漂わせる古伊万里を見つけ出してきて対話を始めた、、、。
主人: 今日は元旦だね。まずは挨拶からといこう。
新年おめでとう。
少女: はい。新年おめでとうございます。
新年のおめでたい日に取り上げていただき光栄です(^-^;
主人: まあね。お前は華やかだものね。正月に登場させるのにふさわしいと思ったんだ。
少女: ところで、私には何が描かれているんでしょうか?
主人: 絵文様には何か意味があるのかもしれないね。何かの物語の一場面を描いたとか・・・・・。
しかし、私は不勉強で、何か意味がある絵文様なのかどうかは知らないんだ。単に、花園に少女が立っているところを描いたんだと思っているんだ。
少女: それはそうですね。そのものズバリですものね。
主人: 私は、絵文様を観るとき、その背景などは考えないことにしているんだ。絵そのものが、「華やかだな~」とか「奇麗だな~」とか「美しいな~」と思えば、それだけの魅力で買ってきてしまうんだ。単純なんだね・・・・・。
少女: ところで、私は中国人の少女のように見えますよね。
主人: そうだね。冠をいただき、長い袖の服を着ていて、いかにも、中国の貴族の少女という感じだね。
少女: 人物だけでなく、全体的にも中国風の感じが漂いますね。
主人: そうね。そもそも、伊万里焼がモデルとしたヨーロッパ輸出用の磁器は、中国の磁器を原形としているからね。
知ってのとおり、明王朝に替わって清王朝となったが、明王朝の残党の抵抗が根強かったので、清王朝は遷界令と呼ばれる強力な鎖国政策をとったわけで、そのあおりを受けて、オランダ東インド会社は中国とは自由な貿易が出来なくなってしまったんだよね。
それで、困ったオランダ東インド会社は、陶業界の巨人ともいうべき景徳鎮への注文に替え、誕生して日も浅く、陶技も未熟な伊万里に大量の注文を出したんだよね。
そんなことで、伊万里焼は、中国の景徳鎮磁器のピンチヒッター役を務めることになったわけで、中国様式の物を大量に作るようになったわけだよね。その後、伊万里焼は急速に和様化はしてくるけれども、中国様式の残影は色濃く残っているわけで、中には、お前のように、中国景徳鎮産そのものと思えるようなものも長い間作られていたんじゃないかな。
少女: でも、かなり中国風ですよ。
ご主人は、日本・有田産と判定するようですけれど、実際には、中国・景徳鎮産ではないんですか?
主人: いや、日本・有田産に間違いないね。
確かに、文様的には、中国風が色濃いが、全体的に、じっと見ていると、和風な感じも受け取れるんだよね。
造形的には、中国・景徳鎮のもののほうが、もう少し薄作りで、鋭いかな。カキッとした硬い感じを受けるんだよね。その点、お前は柔らかかな。高台削りなんか、丸味を帯びていて、和らぐね。
釉薬だって、景徳鎮のものは、もう少し白っぽく、また、薄く掛かっていてカサカサした感じかな。その点、お前には、比較的に厚く掛かっているし、若干青味を帯びていて、シットリとした感じを受けるものね。
それに、何といっても、お前を、有田産とする決定的な証拠は、高台内にある目跡だね。
有田の原料は耐火度が低いため、高温で焼いていると、底の方が下にぶら下がってしまうんだよね。それを防止するために、高台内に針支えをして焼いているんだ。焼き上がったあと、その針支えをはずすわけだが、その際、高台内に傷跡が残るんだ。それが目跡というやつだね。
その点、景徳鎮で使用している原料は耐火度が高いために針支えなど必要としないんだよね。したがって、景徳鎮産のものには目跡というものが存在しないんだ。
この目跡の有無は、有田産か景徳鎮産かを見分ける大きなポイントになるんだよ。
幸い、お前には、目跡があったから、自信をもって有田産と判断できたわけだけれど、もし、お前に目跡がなかったならば、有田産なのか景徳鎮産なのかの判断に迷ったかもしれないね。
少女: なるほど、そういう理由から、私を有田産と判断したんですか。
主人: そうだよ。私は、単に感覚的な理由だけで判断しているわけではないんだよ。ちゃんと、科学的な理由も根拠にして判断しているんだ。(「自己満足じゃないの!」との影の声あり。)
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