今日はクリスマス。そして,タカシの6才の誕生日。そうか,君が生まれてからもう6年にもなるのだなぁ。長いようで短い,過ぎてみればあっという間の6年間であった,などとごく月並な感慨にふける一方で,あの6年前のクリスマスの夜を改めて思い起こさずにはいられない父である(以下,回想モード)。
それは未だバブル景気の余韻を引きずっていた時代のこと,街中が陽気に華やいでいた12月25日の夕刻,妻が予定日より1日早く産気づいた。当時,我家は自家用車を所有していなかったので,急いでタクシーを呼ぼうとしたけれど,二,三のタクシー会社に何度電話をかけても全然通じない(クリスマス特需のせいだ)。少々気があせったが,ここは落ち着いて電車で病院へと行くことにした。その頃,私たちは大和市に住んでおり,かかりつけの病院は横浜市のS大学病院で,電車で2駅先,そこからさらにバスに乗らねばならない。当座の必要な荷物を持ち,そそくさと二人で家を出た。暗雲たれこめ今にも雨が降り出しそうな寒い晩であった。Y駅まで10分近くの道を歩き,それから電車で約10分,降りたM駅では運よくタクシーがつかまり何とか無事に病院まで着くことができた。取り急ぎ受付を済ませると,その後の私はとりあえず用なしだ。御主人はいったん家に戻っていて下さい,生まれたらお知らせしますから,と看護婦さんに促され,すごすごと帰宅する。
夜12時近くになって病院から電話があり,男の子が生まれたとの知らせを受ける。今からこちらに来られますか? 電車ももうなくなってしまいますけど… はい,何とか伺います,と返事をしたはよいが,さてどうしよう。結局,自転車で行くことにした。冬用防寒雨具で完全防備をした後,買い物自転車に乗って真夜中の道を病院へと向かった。頬を切る夜風はとても強く冷たく,おまけに途中から雪がチラチラと降り出してきた。何という試練であろう。吐く息は乱れ,足の筋肉は半ば硬直し,頭の奥はシンとしてきたが,とにかく必死で自転車を走らせるしかなかった。
約30分程かかってやっとの思いで病院にたどり着き,すぐに分娩室へと案内される。ぐったりした様子でベッドに横たわる妻の脇に,生まれたばかりの赤ん坊が白衣に包まれてちぢこまっていた。しわくちゃ顔のおサルさん,でも結構可愛いいおサルさん。それが私とタカシとの初めての出会いであった。
歳月は人をどのように変えてゆくのだろうか。人の成長が数知れぬ細胞組織の持続的増殖・分裂・衰退過程にすぎないのなら,それと引き換えに人は何を獲得し何を失ってゆくのだろうか。今のタカシを見るとそれが分かるような気がする。この6年間,楽しいことも悲しいことも,ツライこともイヤなことも,良いことも悪いことも,それらはすべてタカシの栄養となり血肉となり精神となって現在のタカシの存在を支えている。そのあまりにも脆弱な存在を保ちつつ,タカシは世界を認識し,世界はタカシを受け入れる。幸いなるかな生けるものたち,アーメン。といったメンドーなコリクツはまぁ抜きにいたしまして,兎も角,これから先も仲良くやっていこうやね!タカシ。
以上,タカシへの記念として臆面もなくズラズラと書き連ねてしまったが,やはり,慈愛はその鍵,なのでしょうかね。
それは未だバブル景気の余韻を引きずっていた時代のこと,街中が陽気に華やいでいた12月25日の夕刻,妻が予定日より1日早く産気づいた。当時,我家は自家用車を所有していなかったので,急いでタクシーを呼ぼうとしたけれど,二,三のタクシー会社に何度電話をかけても全然通じない(クリスマス特需のせいだ)。少々気があせったが,ここは落ち着いて電車で病院へと行くことにした。その頃,私たちは大和市に住んでおり,かかりつけの病院は横浜市のS大学病院で,電車で2駅先,そこからさらにバスに乗らねばならない。当座の必要な荷物を持ち,そそくさと二人で家を出た。暗雲たれこめ今にも雨が降り出しそうな寒い晩であった。Y駅まで10分近くの道を歩き,それから電車で約10分,降りたM駅では運よくタクシーがつかまり何とか無事に病院まで着くことができた。取り急ぎ受付を済ませると,その後の私はとりあえず用なしだ。御主人はいったん家に戻っていて下さい,生まれたらお知らせしますから,と看護婦さんに促され,すごすごと帰宅する。
夜12時近くになって病院から電話があり,男の子が生まれたとの知らせを受ける。今からこちらに来られますか? 電車ももうなくなってしまいますけど… はい,何とか伺います,と返事をしたはよいが,さてどうしよう。結局,自転車で行くことにした。冬用防寒雨具で完全防備をした後,買い物自転車に乗って真夜中の道を病院へと向かった。頬を切る夜風はとても強く冷たく,おまけに途中から雪がチラチラと降り出してきた。何という試練であろう。吐く息は乱れ,足の筋肉は半ば硬直し,頭の奥はシンとしてきたが,とにかく必死で自転車を走らせるしかなかった。
約30分程かかってやっとの思いで病院にたどり着き,すぐに分娩室へと案内される。ぐったりした様子でベッドに横たわる妻の脇に,生まれたばかりの赤ん坊が白衣に包まれてちぢこまっていた。しわくちゃ顔のおサルさん,でも結構可愛いいおサルさん。それが私とタカシとの初めての出会いであった。
歳月は人をどのように変えてゆくのだろうか。人の成長が数知れぬ細胞組織の持続的増殖・分裂・衰退過程にすぎないのなら,それと引き換えに人は何を獲得し何を失ってゆくのだろうか。今のタカシを見るとそれが分かるような気がする。この6年間,楽しいことも悲しいことも,ツライこともイヤなことも,良いことも悪いことも,それらはすべてタカシの栄養となり血肉となり精神となって現在のタカシの存在を支えている。そのあまりにも脆弱な存在を保ちつつ,タカシは世界を認識し,世界はタカシを受け入れる。幸いなるかな生けるものたち,アーメン。といったメンドーなコリクツはまぁ抜きにいたしまして,兎も角,これから先も仲良くやっていこうやね!タカシ。
以上,タカシへの記念として臆面もなくズラズラと書き連ねてしまったが,やはり,慈愛はその鍵,なのでしょうかね。