福音歳時記 1月25日 日本語オペラ「細川ガラシャ夫人」初演の日
天上の花は散るべき時を知るガラシア夫人の殉教の歌
上智大学の学長でもあったヘルマン・ホイベルス神父は、イエズス会に保存されていたガラシャのキリスト教信仰を伝える貴重な書簡をはじめとする一次資料をもとに、キリスト者としてのガラシャの歴史研究に多大な貢献をしました。演劇や音楽を重視するイエズス会の教育の伝統にもとづいて、ホイベルス神父御自身も「細川ガラシャ」をヒロインとする戯曲を書かれました。この戯曲は、サレジオ会の神父、ヴィンセント・チマッティによってオペラに編曲され、1940年1月25日に東京の日比谷公会堂で上演されました。チマッティ神父によるオペラ版は、能楽の「序破急」に倣った三幕構成になっています。
第一幕 「蓮の花」(序)第二幕 「桜の花」(破)第三幕 「天の花」(急)
このオペラは、十五世紀の日本の能楽師、世阿弥に由来する「花の美学」をキリスト教的精神に基づき摂取したもので、「蓮の花」は「汚水に染まらない純粋な美」、「桜の花」は「散り際の潔さ」、「天上の花」は「悲劇を越えた栄光」を象徴しています。また、それは、ガラシャの辞世の歌 「散りぬべき時知りてこそ世の中は花も花なれ人も人なれ」を踏まえたものでもありました。
この作品は、「日本語で歌われた最初のオペラ」として評価されるのが普通ですが、より適切に、そして作品の精神に即して云えば、それは日本文化の土壌に根ざした最初の「キリスト教的受難劇」と呼べるでしょう。
画像は玉造教会壁画の細川ガラシャ像(堂本印象)