僅か21歳で逝去したマルガリータ后妃の死を悼んでレオポルド一世は1673年に Missa pro defunctis (死者のためのミサ曲) を作曲しています。このミサ曲は、後世の劇場音楽と化した requiem とは違って「怒りの日」を含まない純粋な鎮魂曲となっています。構成は、
1 Introitus: Sonata-Requiem aeternam
2 Kyrie-Christe-Kyrie eleison
3 Sanctus: Sonata-Sanctus-Hosanna
4 Benedictus: Hosanna
5 Agnus Dei:
6 Communio: Sonata-Lux aeterna-Requiem aeternam
1899年にフランスの作曲家ラヴェルは、ベラスケスの絵画に触発されてピアノ曲「亡き王女のためのパヴァーヌ」を作曲した。パヴァーヌとは、スペインの舞曲で、嘗てはヨーロッパの王家の結婚式で、新郎と新婦が並んで行列するときにも奏されましたから、華やかな国民的祝典であったマルガリータの婚姻の追憶と哀悼に相応しい曲でした。
上智大学の100周年記念で上演された「勇敢な貴婦人」では、終幕がガラシャの葬儀ミサの場面でした。これは史実に即したもので、そのときは典礼音楽なしの日本語の台詞だけの上演でした。
カトリックでは特定の故人のためのミサではなく、「死者達のためのミサ」を行うのが通例ですから、レオポルド一世のミサ曲をマルガリータ后妃だけでなく丹後の王妃ガラシャに捧げることも不自然ではありません。
「マルガリータ」とはラテン語で「真珠」を意味する言葉でもあって、マタイによる福音書13-45では、「神の国」が、真珠(bona margarita)に譬えられています。 偶然の一致ですが、細川忠興夫人の名前も「たま(珠)」でした。
グレゴリオの家での私の講演では下記のCDで聴きましたが、Youtubeに篤志家がアップしているので、そのリンクも張っておきます。
CD: Leopold 1 - Sacred Works: Waschinski-Cordier-Voss-Kleinlein-FinkWIENER AKADEMIE Martin Haselboeck
MUSICA IMPERIALIS
https://www.youtube.com/watch?v=xIHIKjbORXA&t=7s