25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

村上春樹 騎士団長殺し

2017年06月26日 | 文学 思想

  村上春樹の「騎士団長殺し」が思うように読み進んでいけない。今のところはである。またか、という印象で、僕の側に迫ってくるものがない。「明暗」をまた読みたいと思っているので、一時停止しようかと考えている。「明暗」は、会社勤めの夫とその妻を中心とし、その周辺にいる人間の関係の話である。漱石はこんな平凡な話を読ませ、彼の死によって、絶筆となるが、話がどう進むつもりだったのが論議される始末である。そしてとうとう「続明暗」を水村早苗が書いてしまった。興味津々であった。

 現代のエンタメ小説とは違い、こころにあとあとまで余韻が残る。

 村上春樹の「1Q84」は傑作だった。青豆という主人公がよかったのだろう。メタファとしても、ファンタジーとしても、哲学的問題としてもおもしろかった。青豆みたいな人物像をよく作ったものだと感心した。

 「騎士団長殺し」は村上の一番下手な男性像になっている。

それは、「羊をめぐる冒険」とか「ねじまき鳥クロニカル」と同じようなサンドイッチの好きな、セックスの好きな、几帳面な男である。たぶん、そこでぼくは読み進められないのだと思う。主題はまだ出てこないが、それを追ったところで何? という気もする。

 彼の短編小説は秀逸だ。どれも優れていると思う。トニー滝谷もよかったなあ。