エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

薔薇を「そうび」と読む

2010年06月12日 | 日記
薔薇を「そうび」と読んでみる。
新鮮に耳に響いた。





         薔薇の気分のままに


      薔薇をそうびと読んでみる
      その繰り返しの音韻が次元を超え
      木霊のように亀裂を往来する
      のだ

      豊かなイマージュが
      そうびの花びらの積み重なりが
      山並が
      山脈となって連峰となり
      やがてきみの前に屹立する
      のだ

      薔薇の花びらが幾重にも折り重なる
      と
      きみは覆われて
      影すら寄せ付けなくなっていき
      深く沈潜する
      沈潜し
      閉じ込められてしまうのだ

      きみよ
      出でよと叫ぶのだが
      きみはもはやこの世の存在ではなく
      一個の自意識過剰となって
      誰も触れられない資産化してしまう

      薔薇から抽出されるエキスの芳しい
      香りが
      味覚を刺激し続け
      触覚を退化させてしまう
      だがしかし
      知覚だけは研ぎ澄まされていき
      君のイマージュだけが洗練されていく
      洗練され苦しめ
      静謐の正座
      に
      貶めていくのだ

      きみよ
      そうびのエキスだけを残すな
      その甘いうなじを
      実在させるべきである
      と
      覚醒させてしまおう

      麻痺することのない
      美しき口づけで





ぼくは空想にいぜんとして囚われているのだろうか。
薔薇は少しも実態化せず、ぼくを悩ませるのである。



ぼくはやはりその匂いに促され、追い続けるだろう。
薔薇を「そうび」と読んでみる。

薔薇の気分のままに追い求め続けるだろう。
谷崎潤一郎の「痴人の愛」の世界のように・・・。






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