自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「里山マイスター」のこと

2007年10月15日 | ⇒トピック往来

  「金大(きんだい=金沢大学)は大きな勝負に出たね。でも、金大しかできない勝負だよ」。先日、マスコミ業界にいる友人からそのような言葉で励まされた。大きな勝負とは、平成19年度の科学技術振興調整費で採択された金沢大学の「『能登里山マイスター』養成プログラム」のこと。科振費の中でも、このプログラムは地域再生のための人材養成の拠点を形成するというミッション(政策的な使命)を帯びた国の委託費だ。地域再生という4文字に敢えて挑むプログラムに携わっている私に友人はエールを贈ってくれたのだ。

   では、「能登里山マイスター」養成プログラムで具体的に何をするのかというと、若者を能登に呼び込み、環境配慮型の農業を実践するとともに農産品の開発やグリーンツーリズムを展開するリーダーを養成する。5年間で60人以上の人材養成を目標としている。能登半島の先端に位置し、過疎化と高齢化が進んだ珠洲市に養成拠点を構え、常駐の教員スタッフを配置する。

  校舎は、廃校となった旧小学校の施設を無償で借り受け「能登学舎」と称している。農業人材を養成すると言いながら、実は、金沢大学には農学部がない。そこで、農学系の教員人材が豊富な石川県立大学にも講師派遣をお願いし、さらに地域で有機農業を実践する篤農家の協力を得ることにした。これら60人の若手が中心となって環境と農業が共存する能登の自然を再生し、トキやコウノトリの野生化計画の候補地にしていくという将来ビジョンを描いている。

  10月6日に開講式を行い授業はすでに始まっている。地域再生のためにと科振費を申請したのが今年2月18日だった。その後3月25日に能登半島地震で震度6強、7月16日の新潟県中越沖地震でも震度5弱の震災に見舞われた。震災復興という重い課題も背負った思いだ。冒頭で紹介した友人の「大きな勝負」という言葉の意味がお分かりいただけると思う。逆に言えば、地域再生と震災復興に知恵を絞ることこそが最大にして最高の社会貢献ではないか。それは地域の総合大学である「金大」しかできない勝負と自覚している。

 ※写真は、10月6日の開講セレモニーで「里山マイスター能登学舎」の看板除幕式

⇒15日(月)夜・金沢の天気   くもり

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