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この本の出だしがまずショッキングだ。「災害は進化する」とある。続けて「という」とあるから科学に裏打ちされた法則のようなものではなく、言葉のたとえとして紹介している。確かに、江戸時代では「地震と火災」はセットだったが、それにも増して現代は「地震と原発」など、被害を受ける社会の構造そのものが変化し、放射能汚染など被害が高度に拡大(進化)している。地震をコントロールできない上に、文明の逆襲にでも遭ったかのごとく、この「災害は進化する」という言葉はパラドックス(逆説)として脳に響く。
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『日本災害史』(北原糸子編・吉川弘文館)の執筆陣は歴史学だけでなく、理学や工学の研究者やジャーナリストらで構成されている。テーマは地震だけでなく噴火、洪水などにわたる。この本を読んで、むなしくなる。日本では災害はいつでもどこでも起きる。たとえば近畿を揺るがした地震だけでも1498年・明応地震、1586年・天正大地震、1596年・慶長伏見地震、1605年・慶長大地震、1662年・近江山城地震など、震災は繰り返しやってくる。さらに、津波も。こうした災害と復興を繰り返すことで、日本人の人生観や倫理観、生命観、宗教観などがカタチづくられてきたのではないかと思ったりもする。この本で述べられているように、被災者の救済を第一とする為政者の意識は形成されていて、「お救い小屋」や「お救い米」など避難所や食糧支援の救済マニュアルは江戸幕府にもあった。
民のレベルでも、相互扶助という意識があり、「施行(せぎょう)」と呼ばれる義援金を力のある商人たちが拠出した。冒頭で述べた「雪すかしのDNA」というのはひょっとすると、過去から現在まで連綿と伝わる、雪国独特の雪害に対処する無意識の連帯行動なのかもしれない。
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