自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆少子高齢社会の制度設計

2013年04月07日 | ⇒トピック往来

 能登半島の先端にある珠洲市役所を訪ねると、玄関を入って1階の左手が市民課になっている。その入り口で目に飛び込んでくるのが、市の住民登録人口の表記看板だ。「16,567人」(2月8日現在)。2006年夏に訪れた折は、19,000人ほどだったと記憶しているので、この7年でざっと2,500人の人口減になったことになる。13%減である。「先細り」と言えばそれまでだが、珠洲市の人々が元気をなくしているかと言えば、これは別の話である。

 3月27日公表された厚生労働省国立社会保障・人口問題研究所の「2040年の将来推計人口」データは確かに衝撃的だった。2010年の国勢調査との比較だが、日本は一気に少子・高齢化が進む。石川県内の人口は2010年の国勢調査で117万人だが、2040年には100万人を割り込み97万人に減る。小松市の2つ分の人口に相当する20万人近く減るというのだ。そして冒頭で述べた珠洲市など奥能登の2市2町(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)では、人口がほぼ半減する見通しだ。

 詳しく奥能登の2市2町のケースを見てみる。2010年の国勢調査で2市2町の人口は75,458人だった。今回示された2040年の推計人口は36,889人と、27年間でほぼ半分以下になるとの予想だ。減り方は、2010年を100としたときの指数で能登町45.5、珠洲市45.9、輪島市51.7、穴水町52.2となる。高齢化率の数字がさらに際立つ。65歳以上の高齢者は、珠洲市と能登町は2020年で50%に達し、超高齢社会の現実が浮き彫りになる。

 生産年齢人口(15-64歳)が減少することで、大幅な税収減となり、高齢者をケアする体制づくりも急務となる。さらに2市2町の75歳以上の人口割合は2040年には30%を超える。一方、0-14歳の人口割合は低下が続き、2010年時点の割合は2市2町とも9%だが、2040年には珠洲7.4%、輪島7.6%、穴水6.3%、能登が5.8%の「超少子・高齢化」の予測だ。

 モノには見方というものがある。こうした数字だけを見れば、奥能登は「少子・高齢化のトップランナー」でもある。むしろ、「超少子・高齢化」時代は確実にやってくるのだから、幸福づくり、生きがいづくり、新たな産業の可能性、社会の仕組みの再構成、健診モデルの構築など、超少子・高齢化の社会に向けた制度設計を能登をフィールドに見直したらどうだろう。

 実例を一つ上げる。能登半島の中央、七尾市中島町はカキ貝の産地で知られる。高齢化率33%(2011年3月)。この地域での要介護状態の原因の一つに認知症である。そこで、2004年から地域における認知症の早期発見と予防モデルの構築を目指した金沢大学医学部の調査研究が行われている。大学の医師、心理士らが家庭訪問。脳(もの忘れ)健診で、認知症を早期に発見するシステムを開発している。また、認知症を予防するための運動リハビリや認知リハビリをお年寄りたちに勧める。医師や心理士が率先して体操をして見せ、寸劇でもの忘れ健診の大切さを呼びかける。高齢化社会の到来を先取りして、認知症予防のモデルを確立する取り組みなのだ。

⇒7日(日)朝・金沢の天気   風雨 

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