自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★GIAHS国際会議の価値-2

2013年05月30日 | ⇒トピック往来

  新しくGIAHSサイトとして認定されたのは、「静岡の茶草場農法」(静岡県掛川市など)、「阿蘇の草原と持続的農業」(熊本県)、「国東(くにさき)半島宇佐の農林漁業循環システム」(大分県)、「会稽山の古代中国のトレヤ(カヤの木)」(中国・浙江省紹興市)、「宣化のブドウ栽培の都市農業遺産」(中国・河北省張家口市)、「海抜以下でのクッタナド農業システム」(インド・ケララ州)の6つ。

       「能登コミュニケ」でGIAHSの発信力を高める

  きょう30日午前は、政府関係者や国際機関幹部らが協議する、GIAHSでは初の「ハイレベルセッション」が20ヵ国から出席して行われた。角田豊農林水産省大臣官房審議官は、日本政府が今年度、世界農業遺産プロジェクトに初めて3000万円を資金協力するとし、GIAHSの理念に合致した地域は農業遺産に認定されるように支援する考えを示した。このために、認定地域を評価・観察し、日本独自の認定基準づくりを検討したいと話した。この後、認証式が行われた=写真=。

  能登コミュニケ(共同声明)が発表され、世界農業遺産の認定サイトで初めて開かれた国際会議であることに意義があるとした上で、先進国と発展途上国の結びつきを促進するなどの5項目が採択された。世界農業遺産国際会議(GIAHS国際フォーラム)の開催は、2007年がローマ、2009年がブエノスアイレス、2011年が北京だったので、国際フォーラムの認定サイトでの開催は確かに意義がある。冒頭であいさつに立ったジョゼ・グラツィアーノ・ダ・シルバFAO事務局長、加治屋義人農林水産副大臣もその点を強調した。GIAHSはまだまだ国際認知度が低い、先進国のGIAHSの役割はこれを世界に発信することだ、と。能登コミュニケ(原文英語)は以下の通り。

<世界農業遺産システムに関する能登コミュニケ>
我々、すなわちアフリカ、アジア及び南米の各国政府や地方政府、国際機関、市民社会、その他を代表し、石川での世界農業遺産国際会議に集まった参加者は、
a)持続可能な世界に向けた農業遺産の貢献に関して自由に意見交換し、議論を行う機会を歓迎する。
b) 食料安全保障、地域の雇用及び天然資源の保全を提供し、生物多様性や生態系から提供されるモノおよびサービスの供給を維持し、気候変動への適応を強化する点において、小農、家族農業者及び伝統的な農村社会の重要性を認識する。
c)急速に変化する世界における持続可能性のペンチマークとして、また、地域社会が自らの資産を持続的に管理するためのコミットメントの指標として、農業遺産システムの重要性を認識する。
d)2002年から世界の農業遺産システムを動的に保全し、GIAHSサイトの特定、支援、認定及び保護を推進し支援しているFAOとそのパートナーの努力に留意する。
e)農業遺産の保全への政策支援および投資を促進するための官民連携を拡大する必要性を強調する。
f)GIAHSに含まれる生物多様性の固有の価値を確認するとともに、生態的、社会的、経済的、文化的及び美観的価値とそれらが生態系や生計を維持する上で果たす重大な役割を確認する。
g)先住民や地域社会の伝統的な知識、革新および実践が、持続可能な開発に重要な貢献をしていることを認識する。
h)さらに、日本の石川県能登地域で開催された今回の世界農業遺産国際会議は、先進国での、またGIAHS認定サイトでの開催となった初の世界農業遺産国際会議であることに留意する。
i)2012年の第67回国連総会(※脚注)第2委員会を含め、GIAHSの概念は国際会議でも広く認知されていることを認める。
j)GIAHSは、農業の生物多様性の保全と持続可能な利用のための革新的な手段として生物多様性条約第10回締約国会議で認知され、愛知ターゲットに言及されたことに留意する。
k)FAO、政府および国際社会による保全や開発の取組を今後も維持するため、強固な体制を確立する必要性を認識する。
l)Rio+20会合の「私たちが望む未来」で規定された、持続可能な開発目標(SGDs)や、より幅広いポスト2015開発アジエンダを達成するため、GIAHSの重要性を強調する。
m) 経済、社会、環境の側面を統合し、それらの関係性を認識しつつ、あらゆる局面において持続可能な開発を達成するために、あらゆるレペルでGIAHSの主流化が必要であることを認める。GIAHSは、家族農業者、先住民および地域社会における人間の基本的な福祉を支える極めて重要な要素の結果であり、今後の発展に向けた機会である。
n)農村地域を活性化し、持続可能な開発についての目標を達成するため、FAO総会、国際機関、民間セクターおよびその他関係者に対し、農業遺産やGIAHSイニシアティブへの支援を勧告する。
o)GIAHSサイトをさらに認定するため、また、持続可能性の現存のモデルとして動的にその保全を拡大していくため、人的および政治的資源を動員することをコミットする。
p)全ての政府および関係者に対し、農業遺産システムを支援し守るよう要請する。
q)全ての政府に対し、現在のGIAHSの枠組みを支持し、そしてFAOの事業予算計画において必要なリソースを配分することを要請する。

以上を考慮し、この会議は以下を勧告する。
 1.GIAHS認定サイトでは、定期的なモニタリングが行われ、その活力が維持されるべきである。
 2.農業遺産の保全や、世界の食料安全保障および経済発展への貢献を促進するため、さらにGIAHSサイトを漸進的に認定すること。
 3.特に開発途上国において、、現場での事業および取組を促進することにより、GIAHSを動的に保全すること。
 4.既存のGIAHSは、開発途上国におけるGIAHS候補地が認定されるよう支援すること。
 5.先進国と開発途上国の間のGIAHSサイトの結びつきを促進すること。

※脚注・第67回国連総会第2委員会「議題26:農業開発と食料安全保障』決議文書


  午後からは中国、チリ、ペルーの政府関係者や国際機関幹部ら30人がエクスカーションが行われた。輪島市三井町市ノ坂は典型的な能登の村落。。田植えを終え、周囲にはカエルの鳴き声が響く現地で、伝統文化を継承し、生物多様性と環境配慮型農業を実践している若者グループ「まるやま組」の取り組みが紹介された。雑穀クッキーの振る舞いや、土地の生態系を描いた小学校の子どもたちの手作りの地図が配られ、その取り組みの広がり、きめ細やかな視察対応に参加者から高い評価の声が聴かれた。

⇒30日(木)夜・七尾市の天気   はれ

 

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