世界農業遺産国際会議の終了後、「能登の里山里海」のGIAHSサイトの関係者が気にかけているのは「能登コミュニケ」(英文/和文)の今後の実行のことだろう。コミュニケでは次の5の勧告がなされた。
能登コミュニケの「モニタリング」「ツイニング」をどう実行していくか
1)GIAHS認定サイトでは、定期的なモニタリングが行われ、その活力が維持されるべきである。
2)農業遺産の保全や、世界の食料安全保障および経済発展への貢献を促進するため、さらにGIAHSサイトを漸進的に認定すること。
3)特に開発途上国において、現場での事業および取組を促進することにより、GIAHSを動的に保全すること。
4)既存のGIAHSは、開発途上国におけるGIAHS候補地が認定されるよう支援すること。
5)先進国と開発途上国の間のGIAHSサイトの結びつきを促進すること。
2項目から4項目はひと括りにして、「世界の食料安全保障および経済発展への貢献を促進するために、積極的に世界農業遺産に認定していくこと」と理解してよい。問題は、1項目と5項目だ。「モニタリングと活力の維持」をどう測り(指標化)、そして「結びつき(twinning)」を見えやすくするか(可視化)。
個人的な解釈だが、1項目の「定期的なモニタリングを行い、その活力を維持」には2つの意味がある。一つは、たとえば国内の5サイトが連携・協力して、国内外での知名度を高め、農作物のブランド化やツーリズムを推し進めれば、地域の活性化や次世代への継承に向けた確かな道筋ができる。つまり、前向きな指標となる。二つ目に、たとえばTPP(環太平洋連携協定)が意識され、農地の集約などによる効率化やコスト競争力などの農業の体質強化が重視される余りに、GIAHS認定地でも、その理念である農文化や生物多様性の維持がおろそかになる恐れがある。とくに里山のような中山間地の棚田では耕作放棄地も進んでいる。そうした地域では同時に、洪水の防止や景観保全といった農業や農地が持つ多面的な機能が失われつつある。そこで、農地の変化や生物多様性、地域の生態系サービス、農業文化(収穫の祭りの開催など)、地域住民の意識などをモニタリングする。これらが、現実を見る指標となる。この前向きと現実の指標を定点観測しながら政策提言やビジネスチャンスを創り出していければ、との期待である。
5項目に関しては事例がある。昨年1月、能登と佐渡のGIAHSサイトの関係者たちがフィリピン・ルソン島のGIAHSサイトであり世界遺産でもある「イフガオの棚田」を訪れ、交流と同時にワークショプ(金沢大学、フィリピン大学など共催)を開催して情報の共有をはかっている。若者の農業離れによる耕作放棄地の増加などはそれぞれ共通の課題であることが認識された。今度GIAHSサイトの若者のモチベーションをどのように高めていくかなど、人材養成のあり方を含めて検討に入っている。
※写真は、2012年1月、フィリピンの世界遺産・世界農業遺産「イフガオの棚田」を訪れた、左から高野宏一郎佐渡市長、中村浩二金沢大学教授、メリー・ジェーン氏(FAOのGIAHS担当)。先進国と途上国のGIAHSサイト同士の交流が期待されている=バナウエイ
⇒17日(月)朝・金沢の天気 はれ
能登コミュニケの「モニタリング」「ツイニング」をどう実行していくか
1)GIAHS認定サイトでは、定期的なモニタリングが行われ、その活力が維持されるべきである。
2)農業遺産の保全や、世界の食料安全保障および経済発展への貢献を促進するため、さらにGIAHSサイトを漸進的に認定すること。
3)特に開発途上国において、現場での事業および取組を促進することにより、GIAHSを動的に保全すること。
4)既存のGIAHSは、開発途上国におけるGIAHS候補地が認定されるよう支援すること。
5)先進国と開発途上国の間のGIAHSサイトの結びつきを促進すること。
2項目から4項目はひと括りにして、「世界の食料安全保障および経済発展への貢献を促進するために、積極的に世界農業遺産に認定していくこと」と理解してよい。問題は、1項目と5項目だ。「モニタリングと活力の維持」をどう測り(指標化)、そして「結びつき(twinning)」を見えやすくするか(可視化)。
個人的な解釈だが、1項目の「定期的なモニタリングを行い、その活力を維持」には2つの意味がある。一つは、たとえば国内の5サイトが連携・協力して、国内外での知名度を高め、農作物のブランド化やツーリズムを推し進めれば、地域の活性化や次世代への継承に向けた確かな道筋ができる。つまり、前向きな指標となる。二つ目に、たとえばTPP(環太平洋連携協定)が意識され、農地の集約などによる効率化やコスト競争力などの農業の体質強化が重視される余りに、GIAHS認定地でも、その理念である農文化や生物多様性の維持がおろそかになる恐れがある。とくに里山のような中山間地の棚田では耕作放棄地も進んでいる。そうした地域では同時に、洪水の防止や景観保全といった農業や農地が持つ多面的な機能が失われつつある。そこで、農地の変化や生物多様性、地域の生態系サービス、農業文化(収穫の祭りの開催など)、地域住民の意識などをモニタリングする。これらが、現実を見る指標となる。この前向きと現実の指標を定点観測しながら政策提言やビジネスチャンスを創り出していければ、との期待である。
5項目に関しては事例がある。昨年1月、能登と佐渡のGIAHSサイトの関係者たちがフィリピン・ルソン島のGIAHSサイトであり世界遺産でもある「イフガオの棚田」を訪れ、交流と同時にワークショプ(金沢大学、フィリピン大学など共催)を開催して情報の共有をはかっている。若者の農業離れによる耕作放棄地の増加などはそれぞれ共通の課題であることが認識された。今度GIAHSサイトの若者のモチベーションをどのように高めていくかなど、人材養成のあり方を含めて検討に入っている。
※写真は、2012年1月、フィリピンの世界遺産・世界農業遺産「イフガオの棚田」を訪れた、左から高野宏一郎佐渡市長、中村浩二金沢大学教授、メリー・ジェーン氏(FAOのGIAHS担当)。先進国と途上国のGIAHSサイト同士の交流が期待されている=バナウエイ
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