日本は災害列島だ。ここ数ヵ月でも大阪北部地震(6月)、西日本豪雨(7月)、最大級の台風21号(9月)、そして今回の北海道地震。まさに非常事態だ。日本は自然災害と戦っている「紛争国」ではないだろうか。
自然災害がもたらすこんな数字を思い起こす。今後30年以内に70-80%の確率で発生するとされる「南海トラフ地震」がM9クラスの巨大地震と想定すると、経済被害額は最悪の場合、20年間で1410兆円(推計)に達する(ことし6月7日・土木学会)。倒壊などによる直接被害は169兆5千億円、それに加え、交通インフラが寸断されて工場などが長期間止まり、国民所得が減少する20年間の損害額1240兆円を盛り込んだ数字だ。そして、奪われるであろう命は最悪30万人余り。
自然災害に怯えてばかりはいられない。災害と共生するたくましい人々が北海道にいる。きょうのネットニュース(BuzzFeed Japan)にもなっていた。洞爺湖町で開催されている「洞爺湖ロングラン花火大会」(4月28日-10月31日)は、地震があったきのう6日夜も450発が打ち上げれたようだ。「震災で亡くなった人々がいるので不謹慎」と思う人もいるだろう。洞爺湖周辺の人々には自然災害と付き合ってきた長い歴史がある。
昨年9月16-18日の休日を利用して北海道の洞爺湖を旅した。目的は「洞爺湖有珠山ジオパーク」だ。2009年、ユネスコ世界ジオパーク認定地として糸魚川、島原半島とともに日本で初めて登録された。ジオパークは大地の景観や奇観を単に観光として活用するというより、地域独特の地学的な変動を理解して、その大地で展開する自然のシステムや生物の営み、人々の生業(なりわい)、歴史、技術などを総合的に評価するものだ。
洞爺湖有珠山ジオパークの価値を理解するため、ロープウエイに乗って、有珠山の噴火口に行き、あるいは洞爺湖を望んだりした。理解を深めるとっかかりはガイドの男性の意外なひと言だった。「有珠山はやさしい山なんです」。火山科学館で 有珠山のビデオ上映があった。1663年の噴火以来、これまで9度の噴火を繰り返してきた日本で最も活動的な火山の一つだ。映像は18年前の2000年の噴火を中心に生々しい被害を映し出した。この映像から有珠山の「やさしさ」の理由が解きほぐされる。
2000年の噴火では、事前の予知と住民の適切な行動で、犠牲者がゼロだった。犠牲者ゼロが成し遂げられたのは、有珠山は噴火の前には必ず前兆現象を起こすことだった。その「山の声」を聞く耳を持った住民や気象庁や大学の専門家が観測をすることで適切な行動を起こすことができたからだ。この犠牲者ゼロの貴重な体験から「火山防災」あるいは「火山減災」という考えが地域に広まり、学校教育や社会教育を通じて共有の認識となる。さらに気象庁は火山の監視と診断(緊急火山情報、臨時火山情報、火山観測情報)の精度を高め、大学などの研究機関は予測手法の確立(マグマの生成、噴火に伴う諸現象など)をすることで「火山学」の理論構築を展開させた。
定期的に噴火を繰り返す有珠山と共生するという周辺地域の人々の価値感は、噴火の事前現象を必ず知らせてくれる「やさしい山」なのだ。それだけではない、1910年噴火では温泉が沸き出し、カルデラ湖や火砕流台の自然景観は観光資源となり、年間301万人(平成27年度・洞爺湖町調べ)の観光客が訪れ、宿泊客は64万人。有珠山観光は地域経済を支える基幹産業である。火山を恵みとしてとらえ、犠牲者を出さずに火山と共生する人々の営みを創り上げた。
防災、減災、リスクヘッジをひたむきに追求し、危機対応や被災に対する心構えがこの地には根付いているからこそ、被災地域を超えて「大地の公園」、ジオパークという発想に立つことができる。「花火は人が打ち上げるものだ。停電の闇夜(ブラックアウト)に明かりを」と言わんばかりに震災の日に花火を打ち上げた、洞爺湖観光協会の人々の心意気は十分に理解できる。(※写真は洞爺湖観光協会ホームページから)
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