自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★トランプ流「歩み寄り」

2019年05月10日 | ⇒メディア時評

   アメリカと北朝鮮の関係がさらに悪化しそうだ。アメリカの「CNN」Web版(日本語)によると、アメリカ司法省は9日、制裁違反を理由に北朝鮮の貨物船「M/Vワイズ・オネスト」を差し押さえたと発表した。貨物船は北朝鮮で2番目の大型商船で、石炭を中国など他国で販売目的で輸送する目的で使われていた。輸送船の差し押さえは初めて。北朝鮮へ「最大限の圧力」をかける取り組みの一環だと司法省は説明している、と伝えている。

   トランプ大統領がツイッターで予告していた通り、アメリカは東部時間10日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)、2000億㌦分の中国製品に課す制裁関税を現在の10%から25%に引き上げた。関税の引き上げ対象は5700品目で、食料品や家電、家具といった生活必需品も多い。

    トランプ氏は上げた関税での税収の使い方についてこんなふうにツイッターで述べている。「....agricultural products from our Great Farmers, in larger amounts than China ever did, and ship it to poor & starving countries in the form of humanitarian assistance. (アメリカの農産物を、中国が買っていたより多く購入し、人道援助のかたちで貧困や飢餓に苦しむ国々に出荷するつもりだ)」と。このツイッターを素直に読むと、今度は中国からの報復関税によって厳しい立場に追い込まれるアメリカ国内農家の救済手段を講じると表明しているようにも読める。

   冒頭の北朝鮮の貨物船の拿捕、そして中国への制裁関税、同時並行で起きているこのアメリカ、あるいはトランプ氏の戦略はどこにあるのか。アメリカの「ニューヨークイムズ」が見出しでこう表現している。「Trump Increases China Tariffs as Trade Deal Hangs in the Balance(貿易取引が均衡に収まるにつれてトランプは中国の関税を引き上げる)」。記事を読みながら見出しの意味を咀嚼(そしゃく)してみる。互いに譲歩して歩み寄るのではなく、歩み寄りながら譲歩を迫る。あるいは、交渉相手との人間関係は緊密にしながら、交渉では脅しの闘いをする。または、交渉も人間関係も切れないようにぎりぎりで維持しながら長期戦に持ち込み優位を得る。という意味合いだろうか。トランプ流の交渉術は難解だ。

⇒10日(金)夜・金沢の天気   はれ

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