自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「十人十色」なSDGs

2019年05月18日 | ⇒トピック往来

   SDGs(国連の持続可能な開発目標)と日本語に親和性を感じことがある。「これってSDGsのことだよな」と。先日金沢の隣の野々市市を自家用車で移動していて、中学校の校舎に掲げてあった横看板=写真=もそうだった。「十人十色、みんなちがってみんないい」と。十人十色はそれぞれの個性や考え、立場をお互いに尊重するという意味合いでよく使う言葉だ。この言葉をSDGsの視点で考えれば、まさに基本理念に掲げる約束「誰も置き去りにしない」と同意義だろう。

   看板には「生徒会目標」と書かれている。看板の文字のバックの色合いを眺めてみると、10色ほど使ってあってなかなか芸が細かい。生徒たちのアイデアなのか、教員の指導なのか。ひょっとして最初からSDGsを意識したスローガンなのだろうかと思いながら校舎を後にした。

   小学生のころから「来た時よりも美しく」という言葉をよく使った。今でも大学のフィールド実習を終えての帰り際に学生たちと宿泊施設の清掃をするが、「来た時よりも美しく」と自身が声を出している。この「来た時よりも美しく」という言葉こそ、SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」のキ-ワードとなっているアップサイクルに通じる。持続可能なモノづくりを目指す場合に、単なるリサイクル(素材の原料化による再利用)ではなく、元の製品より付加価値の高いモノづくりへとイノベーションと研究開発を進める。このアップサイクルの精神こそが「来た時よりも美しく」ではないだろうか。

   偉そうに言うが、アップサイクルという言葉を知ったのは3ヵ月前だ。「第1回地方創生SDGs国際フォーラム」(2月13日・東京)で、基調講演の黒岩祐治神奈川県知事が鎌倉市由比ガ浜で打ち上げられたシロナガスクジラの胃の中から大量のプラスチックごみが発見されたことを機に、プラスチックの代替となる新素材の開発を進めていることを「アップサイクルの実証事業」と紹介していた。このときに、アップサイクルは「来た時よりも美しく」ではないだろうかとひらめいた。

   古くから伝えられる近江商人の心得「三方よし」という言葉もSDGsとつながる。売り手、買い手、作り手がそれぞれに納得して利を得る。SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」のモデルのような調和の経済循環ではある。

⇒18日(土)夜・金沢の天気     くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする