自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「おもやい」という時間のシェア

2019年05月04日 | ⇒メディア時評

  きのう(3日)の話の続き。この時季に庭に咲くアメリカ八角蓮(はっかくれん)は葉の切れ込みが深く、葉の下に白い花が咲く。形状も面白いが、その名前になぜ「アメリカ」とつくのか。ネットで調べてみる。六角蓮や八角蓮と呼ばれる植物はもともと台湾や中国の深山に生える大型の植物で、ハスに似た葉の角の数からそう名付けられている。サイズが花生けにちょうどよい、北アメリカ原産の種が日本に入ってきて、重宝されてアメリカ八角蓮と花名がつけられた。

  生けて床の間に飾ってみる。蓮なので銅の花入れ。野にある花には格付けはないが、床の間に飾るとなるとそれがある。よく言われるのは「青磁に牡丹(ぼたん)」のたとえ。その花に似合う器というものがある。しかも、床の間ではデコレーションするのではなく、自然のありのままの姿を花器に入れる。千利休は「花は野にあるように」と教えている。そこで、アメリカ八角蓮を耳付き銅の花入れに生ける。漆塗り丸敷板の上に。掛け軸は季節のものを選び、『五月晴 燕 自画賛』(即中斎筆)を下げた。

  じっと床の間と向き合っていると掛け軸に描かれたツバメがハスの葉の上を飛んでいるように見えてきた=写真=。意識して配置した訳ではない。気づきだった。何気ない床の間が一体化して一つの自然の風景のように思えるから不思議なものだ。

  話は変わるが、茶道の先生から「おもやい」という言葉を習った。もやい(催合い)に美化語をつけた言葉。共同で一つの事をしたり一つの物を所有したりすること(デジタル大辞泉)。茶道ではどのようなときに使うかというと、茶席の終了の時間が迫ってきたとき、ゲストの正客がホストの亭主に「おもやいで」と声掛けする。すると、一つの茶碗に二人分を点ててくれる。茶碗を受け取った最初の客は飲み口を懐紙で拭き取り、次の客に送る。ひと碗ひと碗点てると時間を要する。そこで、客側の提案で茶碗を共有することでゲストとホストの時間を短縮する。

  茶席という「もてなし」空間で、時間をシェア(share)する言葉である。

⇒4日(土)夜・金沢の天気     はれ

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