自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★能登の縁 あの歌手、テニスプレーヤー、漫画家 

2022年08月25日 | ⇒トピック往来

   まったくの余談になる。今月23、24日に学生たちの「能登を学ぶスタディ・ツアー2022」に同行し、能登半島を一周した。その中で、能登にある地名や看板がバスの中で話題になった。国の史跡「雨の宮古墳群」は眉丈山(標高188㍍)の山頂にあるが、その山のふもとには中能登町一青(ひとと)という地名がある。そう、あの歌手で作詞家の一青窈の先祖の地でもある。台湾人の父とこの町出身の母親の間で生まれた。

   一青窈のヒット曲に『ハナミズキ』という曲がある。そして同町には花見月(はなみづき)という地名の田園地帯が広がる。「づ」と「ズ」の違いはあるものの、発音は同じなので、『ハナミズキ』は母親の故郷にちなんだ曲なのかとも連想した。この件を町役場のスタッフに問い合わせたことがある。すると、「その話はこの地を訪れた人からよく尋ねられるのですが、以前ご本人に確認したところ、偶然ですという回答で、花見月を想定した曲ではないとのことでした」との返事だった。町内を走るJR七尾線の金丸駅や能登部駅、良川駅、能登二宮駅などでは、列車の接近を告げるメロディとして、この曲が流れる。

   能登町には神和住(かみわずみ)という地名がある。その近くには天坂(てんざか)という地名もある。これらの地名から、「天の坂を登りて、神が和して住む」とまるで天国をイメージさせるようなスピリチュアルな響きがある。日本人として初めて全米オープン(1973年)で3回戦へ進み、日本プロテニス界 のパイオニアと呼ばれた神和住純氏の故郷だ。

   能登町は軟式テニスが盛んな地で、両親はテニス通じて知り合い、神和住氏が生まれた。その後、両親とともに東京に転出する。神和住の地名の縁、さらに父親が同町出身ということもあり、神和住氏は「能登町ふるさと大使」となって、テニスの町をPRしている。1999年から同町内では本人も参加して「神和住エンジョイテニス大会」が開催されている。新型コロナウイルスで感染拡大で2年連続で中止だったが、ことし10月に3年ぶりに開催されるようだ。

   地名ではないが、輪島市内をバスで移動中に「永井豪記念館」の看板が学生たちの目に止まった。一人が「あの『マジンガーZ』や『キューティーハニー』の永井さんですよね」と。漫画家・永井豪氏の記念館は出身地である輪島市河井町の朝市通りある。2009年に自治体が信用金庫の空き店舗を買い取り整備したものだ。

   以下、正直な話。今から40年前、自身は新聞記者として輪島支局に赴いた。当時の永井豪氏の作品のイメージは、『ハレンチ学園』などギャグ漫画や、『デビルマン』などテレビアニメ作品だった。地元の人たちは永井氏が輪島出身ということを知ってはいたが、当時それを土地の自慢話として語る人はほとんどいなかった。むしろ、ローマオリンピックなどで銀メダルを獲得した競泳の山中毅選手の話はよく聞いた。

   評価が一転したのは日本のアニメが海外で大ブームとなり、永井氏の『UFOロボ グレンダイザー』などがヨーロッパで人気を博した。こうなると地元輪島でも世界の漫画家として評価が高まった。これが、永井豪記念館の設置へと動いた。その後、永井氏は2019年、フランス政府から芸術文化勲章「シュバリエ(騎士)」が贈られた。永井氏の作品は美術館で展示されるようになった。

   追記。演歌歌手の新川二朗氏が今月22日に亡くなった。能登半島の入り口に位置する宝達志水町の出身。自身が小学生の頃、テレビで流れていたあの名曲『東京の灯よいつまでも』は見よう見まねでよく歌ったものだ。初めて歌ったの演歌がこの曲だったかもしれない。享年82歳。

⇒25日(木)午後・金沢の天気    あめ

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