それにしても不気味な光景だ。得体の知れない気球が空を飛ぶ。それが、中国のものであると分かれれば、なぜ我々の頭上にあるのかと、なおさらうす気味悪いだろう。CNNニュースWeb版(6日付)によると、アメリカを横断していた中国の偵察気球を、アメリカ軍の戦闘機がサウスカロライナ州の沖合で撃墜した。「Why the Chinese balloon crisis could be a defining moment in the new Cold War」=写真=の見出しで、アメリカ人は初めて北京からの国家安全保障上の挑戦とも言える具体的な現象を経験したと伝えている。 防衛省によると、気球は国際法上、航空機に位置づけられ、他国の領空に侵入するのは国際法に違反し、領空侵犯にあたるとされる。過去に軍用機や民間機が他国の領空に入ったことで、当事国だけでなく国際社会全体の緊張が高まったこともある(6日付・NHKニュースWeb版)。
アメリカ側が気球を撃墜したことに対し、中国側は「私たちの気象観測気球がコース外に吹き飛ばされたのは遺憾だ」「アメリカの政治家とメディアは誇張している」「アメリカがこの飛行物体を攻撃したのは国際慣例の深刻な違反だ」などと述べている(6日付・BBCニュースWeb版日本語)。かりに、中国が主張するように気象観測が目的の気球であったとしても、アメリカの領空を通過するときは事前にアメリカ当局に通知して当然だろう。それをしないこと自体が主権侵害に当たるのではないか。
アメリカ海軍や沿岸警備隊は撃墜した気球の回収に当たっている。気球の破片は回収後、FBIの研究所に移送される見通し(同・CNNニュースWeb版)。回収された画像データなどが分析されれば、気球の偵察目的が鮮明になってくる。米中の緊張がさらに高まる可能性が出てきた。
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