能登半島地震で震災と火災の複合災害に見舞われた輪島市では朝市通りを中心に一帯が焼失した。先月31日に開かれた政府の復旧・復興支援本部会合で、朝市通りの264棟について、法務省の権限により、建物が「滅失」したとする登記手続きが完了し、所有者全員の同意がなくても公費解体が可能となると報告された。これにより、公費解体の加速化が見込まれる(6月1日付・メディア各社の報道による)。
焦土化した一帯を更地にしてもすぐに復興へと向かうわけはない。ただ、被災地の風景が少し変わることで、地域が復旧に向けて一歩踏み出すきっかけになるかもしれない。朝市通りで焼けた建物の一つに「永井豪記念館」=写真=がある。あの「マジンガーZ」や「キューティーハニー」などのアニメで知られる漫画家・永井豪氏の記念館だ。出身地が輪島市であることから2009年に同市役所が設営した。
今から40年ほど前、自身は新聞記者として輪島支局に赴いた。当時の永井氏の作品イメージは「ハレンチ学園」などのギャグ漫画で、地元の人たちは永井氏が輪島出身ということを知ってはいたが、土地の自慢話として語る人は正直いなかった。評価が一転したのは日本のアニメが海外で大ブームとなり、永井氏の「UFOロボ・グレンダイザー」がヨーロッパで人気を博し、世界の漫画家として永井氏の評価が高まった。これがきっかけで、行政が永井豪記念館の設置へと動いた。展示されている直筆の原稿や原画、フィギュアなどは永井氏の所属プロダクションが貸し出していた。
では、大規模火災で焼けた記念館で展示されていた原稿や原画、フィギュアなどはどうなったのか。永井氏と所属プロダククションは1月25日付のSNSで「弊社からお貸し出ししている原画およびフィギュア等の展示物は焼失せずに現存していることが確認されました」と、市の担当者による立ち入り調査について発表し、展示棟の「耐火対策が功を奏したもの」と述べている。
その前日の24日には、永井氏と所属プロダククションは輪島市と石川県にそれぞれ1000万円、計2000万円の義援金を送る意向を明らかにした。「漫画はつらいときこそ、力になって希望を満たすことができる。漫画を描くことで『前に進もう』というメッセージを伝えたい」と語った(1月25日付・読売新聞オンライン)。先月5月29日、永井氏は石川県の観光大使の委嘱を受けた。「復興支援も続けていきたい」と力を込め、永井豪記念館の再開にも意欲を示したという(6月1日付・同)。震災でふるさと愛がふつふつとわいてきたのだろうか。
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