自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★スルメイカ求め日本海に 能登・小木港から7隻が出漁

2024年06月12日 | ⇒ドキュメント回廊

  今月10日付のコラムで、能登半島地震で岸壁が地盤沈下した漁港、そして海底が隆起した漁港を取り上げた。それぞれに漁業という生業(なりわい)の再生を目指して港の復興にチカラを入れている。今回は別の難題抱えている漁港を取り上げる。能登半島の尖端部分にある能登町九十九(つくも)湾にある小木漁港はスルメイカの水揚げでは国内でも有数の漁獲高で、元旦の地震で岸壁が崩れ落ちるなどの直接被害はなかった。今月に入り、同港から7隻の中型イカ釣り船が順次出港している。

  きょうも2隻が家族や関係者に見送られながら出港した。船は大漁旗を海になびかせ、また見送る側は操業の安全と大漁を願うカラーテープを船に投げ、海に彩りを添えている。(※写真は、小木を拠点に里海の教育と研究に取り組んでいる一般社団法人「能登里海教育研究所」の浦田慎氏提供)

  イカ釣り船が向かうのは日本海。日本の排他的経済水域(EEZ)にある大和堆はスルメイカの好漁場だ。冒頭で「別の難題」と述べたのは、中国漁船の違法操業だ。EEZ内ではわが国の許可を得れば外国漁船も操業できるが、許可を得ずに入り、イカ漁場を荒らしている。日本側のスルメイカの漁期は6月から12月だが、中国漁船は4月ごろから大和堆などに入り込んでいている。日本の漁船に先回りして、漁場を荒らすという無法ぶりだ。水産庁漁業取締船による大和堆周辺での外国漁船へのEEZからの撤退警告は68隻に上り、うち44隻が中国漁船、24隻が北朝鮮漁船だった(2023年統計・水産庁公式サイト「外国漁船に対する取締りの状況」)。

  さらに無法ぶりが目立つ行為もある。EEZでは水産資源は沿岸国に管理権があると国連海洋法条約で定められている。ところが、北朝鮮は条約に加盟せず、日本と漁業協定も結んでいないことを盾に、日本海は自国の領海であると以前から主張している。1984年7月、北朝鮮は一方的に引いた「軍事境界線」の内に侵入したとして、小木漁協所属のイカ釣り漁船「第36八千代丸」を銃撃、船長が死亡する事件が起きている。

  あれから40年、小木漁港の漁船員は今でも語り継がれるこの事件の教訓を肝に銘じながら、スルメイカの豊漁を求めて出港していることだろう。過去に取材した事件のことを思い出しながら、この一枚の写真を眺めている。

⇒12日(水)午前・金沢の天気    はれ

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