元日の能登半島地震では13万6000棟におよぶ住宅の全半壊や部分破損、山の土砂崩れ、海岸の隆起や沈没などのほかに、道路の崩れがいまも随所にある。半島を縦断する自動車専用道路「のと里山海道」が今月10日に全線での対面通行が可能になったものの、国道249号など幹線道路ではトンネル内部の崩落などで通行止めとなっているところもある。その現場をめぐっていると、修復現場で「逆転の発想」を感じることがある。
その一つが輪島市の白米千枚田に近い国道249号での現場。国交省能登復興事務所は土砂崩れで寸断された国道の海側が隆起していることに着目し、海側の地盤を活用して道路を新設した。新しい道路の延長は800㍍で、うち海側430㍍で幅6㍍の2車線。山と海の両サイドに高さ3㍍の土嚢を積んで山からの崩落と高波の影響を防いでいる。この道路は5月のGWに供用が開始された。
同じ国交省能登復興事務所が手掛けている輪島市の国道249号「中屋トンネル」の復旧工事も逆転の発想なのかもしれない。なにしろ、トンネルの中にトンネルを造って、工事を進めると同時に車が通れるようにするという。同事務所公式サイトに掲載されている「記者発表資料」(9月10日付)によると、トンネルの長さは1.3㌔だが、コンクリートの内壁などが崩れたため、940㍍にわたって補修工事が続いている。このうち、6ヵ所に「鋼製プロテクター」(防護壁、高さ3.8㍍、幅4㍍)を設置することで、トンネル本体が工事中でも車が通れる空間を確保するという。今月25日正午から緊急車両や地元住民の車に限って通れるようになる。(※写真は、国交省能登復興事務所の今月10日付・ニュースリリースで掲載されている中屋トンネル内のプロテクター)
当面は1車線の交互通行となるが、復旧工事を進めて年内には2車線通行を目指すという。トンネルの内部に四角い小さなトンネルを設け、トンネル本体の補修を進めながら、車の通行を可能にするという珍しいこの工事は、きのう(18日)現地で地元住民のための見学会を開催して説明した。逆転の発想もさることながら、被災地の人々への丁寧な対応にも納得がいく。
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