NHKにしては珍しいUFOのニュースがきょう流れていた。アメリカ国防総省が14日に発表したUFOに関する年次報告書によると、ことし6月までの1年間でアメリカや中東、東アジアなどを中心にUFOの目撃情報が757件あった。そのうち300件については、気球や鳥、無人機などと判断。また、アメリカのスペースXが開発した衛星通信網「スターリンク」の人工衛星を誤ってUFOとして報告するケースも増えている。国防総省の報道官は記者会見で、「これまでのところ、地球外生命体やその活動と技術の存在を示す証拠は見つかっていない」と述べた。国防総省では、UFOかどうか特定ができていないケースについて引き続き分析を続けるとしている。
このニュースを視聴して、つい能登のUFO伝説を思い起こした。羽咋市に伝わる昔話の中に「そうちぼん伝説」がある。「そうちぼん」とは、仏教で使われる仏具のことで、楽器のシンバルのような形をしている。伝説では、そうちぼんが羽咋の北部にある眉丈山(びじょうざん)の中腹を夜に怪火を発して飛んでいたと伝えられている。さらに、眉丈山の辺りには「ナベが空から降ってきて人をさらう」という神隠し伝説もある。また、羽咋の正覚院という寺の『気多古縁起』という巻物には、神力自在に飛ぶ物体について書かれている(宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」のホームページより)。
さらにUFOを連想させる奇怪な伝説が能登にある。神から十戒を授かった聖者モーゼが、宝達志水町にある能登で一番高い山、宝達山(637㍍)の山麓、三ツ子塚古墳群の中に葬られているという伝説だ。モーゼは40年の歳月をかけ、ユダヤの民衆をイスラエルの地へ導いた後、シナイ山に登った。そこから「天浮船」(UFO)に乗ったモーゼは宝達山にたどり着き、583歳までの余生をこの地で過ごしたという伝説だ。同町には聖者モーゼが眠るされる伝説の森公園「モーゼパーク」がある=写真・上=。
そして、宇宙人説も能登がある意味で発祥の地だ。アメリカの天文学者パーシバル・ローエル(1855-1916)は冥王星の存在を予測したことで天文学史上で名前を残したが、ほかにも火星に運河が張り巡らされていると主張し、火星人説を打ち立て論争を巻き起こしたことで知られる。
そのローエルは滞在していた東京で日本地図を眺め、能登半島の形に関心を抱き、「NOTO」の語感に惹(ひ)かれて1889年5月に能登を訪れた。能登の湾では魚の見張り台である「ボラ待ち櫓(やぐら)」によじ登り、「ここではフランスの小説でも読んでおればいい場所」と一日を過ごした。その訪問記は随筆本『NOTO: An Unexplored Corner of Japan』(1891、「NOTO:能登、知られざる日本の辺境」)で著されている。ローエル研究者のウィリアム・シーハンは論文『To Mars by way of NOTO』(2005)で能登の海での体験から火星の運河説を着想したのではないかと述べている。
ローエルの火星人説はその後、アメリカにSFブームを巻き起こす。1938年10月、俳優であり監督のオーソン・ウエルズが、ラジオ番組で小説『宇宙戦争』をドラマ化するなど、アメリカでは宇宙への関心が高まり、戦後はソ連との宇宙開発競争へと突き進んでいく。(※写真・下は、能登半島・穴水町にあるパーシバル・ローエルの来訪記念碑)
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