「デジタル田園都市構想」は政府が掲げる目玉の政策だ。「地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていくことで、世界とつながる『デジタル田園都市国家構想』の実現」(内閣官房公式ホ-ムページ)を掲げている。
その兆候はすでに起きている。総務省が発表した「住民基本台帳人口移動報告」(1月28日付)の報道資料によると、東京23区では2021年の年間の転出者は38万2人、転入者は36万5174人で、初めて転出が転入を上回った。若者を中心に大都会から農山漁村への移住がすでに起きている。
身近な事例で言えば、能登半島へも「田舎暮らし」を求めて大都会からさまざまな感性や技能を持った若者たちがやって来ている。その顔ぶれは東京など大都会などからのIT企業の社員が多い。能登半島の尖端にある珠洲市では昨年度84人の移住者がやってきた。最近では企業そのものが本社機能を一部移転するカタチでやって来る。東証一部の医薬品商社「アステナホールディングス」は去年6月に本社機能の一部を東京から同市に移転している。同社は珠洲にテレワークの拠点を置き、人事や経理を中心に社員の希望者が移住している。
都会からの田舎暮らしは今に始まったことではない。第一波が2011年にあった。東日本大震災の後だった。そのときもITエンジニアやITデザイナーなどの技能を有する人たちが能登に移住してきた。彼らに移住の動機を尋ねると、「パーマカルチャー」という言葉が返ってきた。パーマカルチャー(パーマネント・アグリカルチャー、持続型農業)は農業を志す都会の若者たちの間で共通認識となっている言葉だった。天変地異が起きたとき、人はどう生きるか、それは食の確保だ。それを彼らは「農ある生活」とよく言う。
現在のこのトレンドは、新型コロナウイルスの感染拡大で、テレワークの働き方の概念が普及して、生活を地方に移す社員が増えたことが影響している。さらに、副業を認める会社では、社員が地方でやってみたいことにチャレンジするという副業型移住も増えている。
政府も本気で「デジタル田園都市構想」を進めるのであれば、地方移住を社員に奨励する企業への優遇税制などの具体策を提示すべきではないか。政策が実現するチャンスが訪れている。
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