自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「初物七十五日」ズワイガニとワインの寡黙なひととき

2024年11月10日 | ⇒トピック往来

  北陸の冬の味覚の主役、ズワイガニがスーパーの店頭をにぎやかに彩っている=写真・上=。石川県沖は今月6日に解禁されたものの、海のシケで2日間休漁を余儀なくされ、8日から漁が始まった。店頭ではオスの「加能ガニ」、メスの「香箱ガニ」が並んでいる。値札を見ると、手ごろな香箱ガニは800円なので、価格は平年並みのようだ。カニの季節の始まりだ。

 「初物七十五日」という言葉がある。旬の時期に出回り始めた初物を食べると寿命が「七十五日」延びるという意味。 四季に恵まれた日本ならではの季節感で、それほど旬の食材を大切にしてきたということだろう。先日(8日)獲れたての香箱ガニとオーストラリア産ワインを楽しむ会が金沢であり、参加した。  

  これまで、「カニには地酒が合う」と思っていた。能登のカニには能登の地酒が、加賀のカニには加賀の地酒が合うと自身は勝手に思い込んでいる。ぴっちりと締まったカニの身には少々辛口が、カニ味噌(内臓)には風味のある地酒がしっくりなじむ。その自らのイメージがひっくり返ったのが今回のワイン会だった。ワイングラスで食するとなかなかおつな味がする=写真・下=。中でも、ウチコとミソにはロゼがぴったり合う。ロゼの甘味とカニの甘味が溶け合うように口の中で絡まる。カニの身を食べ、最後に甲羅にロゼを入れて飲む。日本酒とはまったく異なる絶妙な風味が口の中に広がる。参加者は寡黙になり味わいを楽しんでいた。カニと日本酒は合う、そしてワインも合うと実感して気分が高揚した。寿命が「七十五日」延びた気分にもなった。 

  ところで、ズワイガニはこの時節の食材で、北陸に住む人は食べ方を自ら体得する。一匹丸ごとのカニを食するのは簡単ではない。脚を関節近くで折り、身を吸う。その音はパキパキ、ズーズー、その食べる姿はまるでカニとの格闘だ。食べ出したら寡黙となり、手と口が休むことがない。カニ食い選手権大会のような真剣勝負となる。

  ズワイガニは乱獲で漁獲量が減り、石川県から島根県の漁業者らが昭和39年(1964)に「日本海ズワイガニ採捕に関する協定」を結び、漁期や漁獲量を取り決めた。そのころから、ズワイガニは高嶺の花となった。カニの話は尽きない。

⇒10日(日)夜・金沢の天気    はれ


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