先日、友人たちと会って「コロナ禍」後のことについて語り合った。「世界の人々の海外旅行の欲求が一気に高まり、ビッグバン(大爆発)のようなブームが起きるかもしれない」と話すと、友人の一人が「そうそう、CO2の削減が世界の課題で、ヨ-ロッパでは飛び恥より鉄道での旅行がブームらしい」と。「飛び恥って」と聞き返すと、「環境問題を考えるなら、CO2排出量の多い飛行機を使わないという意味だよ」と友人は教えてくれた。このとき初めて「飛び恥」という言葉を知った。
ネットで「飛び恥」を検索してみると、この言葉は、若き環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが育ったスウェーデンが発祥の地のようだ。2019年9月、16歳のグレタさんが参加した国連気候行動サミット(国連本部)には、温室効果ガス排出量が大きい飛行機には乗らないと、太陽光パネルと水中タービン発電機が付いたヨット船で父親らと大西洋を横断してニューヨーク港に着いたことが、世界のメディアに大きく取り上げられた。
HUFFPOST日本語版(2019年11月14日付)の記事を以下引用。多くのスウェーデン人にとって、飛行機での旅行は自慢の対象ではなくなっており、ヨーロッパを移動する際には、鉄道を利用するのが一種のトレンド。「飛び恥(Flygskam/ 英語ではflight-shaming)」「鉄道(列車)自慢(Tågstolthet/英語ではTrain Pride)」という言葉ができている。個人旅行だけでなく、ビジネスでの出張を減らそうという動きもある。ビジネスパーソンたちも、国際会議を減らしたり、なるべくスカイプに切り替えたりしている。
HUFFPOSTは、グレタさんの母親でオペラ歌手のマレーナ・エルンマンさんは「なぜ飛行機に乗らないか」(2017年)というコラムを書いて、地球温暖化に警鐘を鳴らしている著名人の一人だと紹介している。確かに、スウェーデンは1972年にストックホルムでの第1回地球サミット「国連人間環境会議」のホスト国を務めるなど環境問題には熱心で、二酸化炭素の排出量が世界で最も少ない国として注目されている。そして、地球温暖化を数値で予測可能にした真鍋淑郎氏にノーベル物理学賞を贈ったのはスウェーデン王立科学アカデミーだ。
では、スウェーデンはなぜここまで二酸化炭素と地球温暖化問題に熱心なのか。以下憶測だが、ツンドラ地帯の永久凍土の融解や生態系の変化など北欧諸国では地球温暖化の影響が目に見えて変化しているのではないだろうか。とくに、永久凍土が融けると大規模な地盤沈下が起きると言われている。
話を冒頭に戻す。では、「飛び恥」でこれから航空産業は衰退するのだろうか。むしろ、大気中のCO2濃度を増やさないカーボンニュートラルな航空機燃料、つまりバイオジェット燃料の増産が解決策ではないだろうか。ことし6月、バイオジェット燃料を使い、鹿児島から羽田まで930㌔を飛んだことがニュースになった(6月29日付・NNNニュースWeb版)。 バイオベンチャー企業「ユーグレナ」が、ミドリムシと廃食油でバイオ燃料をつくることに成功。国内初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを2018年11月に横浜市で完成させている。
日経新聞Web版(10月8日付)によると、ANAとJALは廃油や植物を原料にした環境負荷の少ない「持続可能な航空燃料(SAF)」の活用推進に向け、共同で市場調査を実施した報告書をまとめたと発表した。日本の航空大手2社が環境関連の活動で手を組むのは初めてと報じている。
ようやく「飛び恥」からカーボンニュートラルへ。CO2をめぐる航空産業界の動きが一段と加速しそうだ。
⇒12日(火)午後・金沢の天気 あめ
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