今月4日に能登半島の志賀町富来(とぎ)の被災地を訪れた。近くには震度7が観測された香能(かのう)という地区もある。富来のコンビニに立ち寄った際、駐車場で外国人男性2人が警官から職務質問を受けていた。2人は「名古屋」ナンバーの車で来たようだ。店舗に入るためその横を通ると、警官がどのような目的で能登に来たのかと尋ねていた。すると、外国人は「ダークツーリズム(Dark tourism)」と答えていた。確かそのように聞こえた。
その後、外国人たちはどこをめぐったのかは知る由もない。それ以降、ダークツーリズムという言葉が妙に頭に残っている。日本では余り使われていない言葉だが、欧米では被災跡地や戦争跡地などを訪ね、死者を悼むとともに、悲しみを共有する観光とされている。能登半島地震は世界のメディアでも大きく報道されている。インバウンド観光客がダークツーリズムに能登を訪れても不思議ではない。ただ、日本では「被災地への物見遊山はやめとけ」としかられそうだが。(※写真・上は、イギリスBBCの特派員が震災の様子を輪島市の現場から中継で伝える=1月4日付・BBCニュース)
震災の現場を訪ねると実にダイナミックな光景を目にすることがある。震度7の揺れがあった香能の近くにあり、松本清張の名作『ゼロの焦点』で登場する名勝「ヤセの断崖」などはさらに崩れて落ちている=写真・中=。震源近くの珠洲市大谷町へ向かう途中に山のがけ崩れ現場があり、落ちてきた巨大な岩石が民家に迫っていた=写真・下=。海岸沿いでは、木ノ浦海岸の岩島が隆起して陸続きとなっている。能登の里山里海に大地の地響きの痕跡が広がる。
能登の観光名所となっていた奇岩など風光明美な景観と、震災後の光景を比較して眺めると、大地の造形物は何千年、何万年と歴史を刻みながら少しづつ姿を変えきたのだと実感する。その意味で、「能登はジオパーク(Geopark)」と言えるかもしれない。冒頭のダークツーリズムとしてインバウンド観光を積極的に受け入れてもよい。前回ブログでも述べたように、人々が行き交う仕組みづくりが能登再生のキーポイントではないだろうか。
⇒26日(火)午後・金沢の天気 あめ
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます