自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆桜は咲けど、被災地に春の訪れはまだ遠く

2024年04月01日 | ⇒ドキュメント回廊

  きょうから4月。金沢地方気象台は午前、ソメイヨシノの標本木が開花したと発表した。平年より2日早く、過去最も早かった去年よりも9日遅い開花となった。自宅近くにある例年早咲きの桜はもう見頃を迎えている=写真・上=。そして、自宅近くでホーホケキョのウグイスの初鳴きが聞こえた。しかし、春の訪れを喜んでばかりはいられない。

  奥能登(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)の人たちと話をすると必ず出て来る言葉がある。「わやくそ」。能登の方言で、「めちゃくちゃ」という意味だ。震災によって、住宅だけでなく、家財道具、水田など何から何まで壊れてしまったという。例年だと4月に田起こし、5月上旬に田植えを行う。田んぼの水は山の中腹のため池から引水しているが、がけ崩れで水路がふさがれた状態になっている。復旧のめども立っていない。   

  石川県農林水産課のまとめ(3月26日現在)によると、県全体で農地の亀裂など被害は912件(うち奥能登538件)、水路の破損など1257件(同655件)、ため池の亀裂や崩壊は327件(同165件)、農道の亀裂や隆起などの損壊は922件(同398件)に上っている。田植えができる農家は激減するのではないだろうか。(※写真・下は、輪島の千枚田で起きている地割れ=3月4日撮影)

  避難所生活も続く。被災者が住む市町の避難所で暮らす人々は4528人(うち奥能登3367人)に、県が避難所として借り上げた金沢などの旅館・ホテル・スポーツセンターに避難している被災者は3580人に上る(3月29日現在)。このほかにも、県内外の親戚宅や車中泊、自宅などで暮らす被災者は1万3047人に上る(3月25日現在)。県では応急仮設住宅4956戸(うち奥能登4209戸)の建設に着手しているが、3月26日現在で完成したのは894戸(同677戸)となっている。

  そして問題は生活インフラだ。停電は解消されたものの、水道管の復旧作業が難航し、まだ7860戸で断水が続く(3月29日現在)。このうちのほとんどが輪島市と珠洲市などの奥能登で7650戸におよぶ。浄水施設の修繕のほか、水道管の漏水確認と修理などが遅れている。

  ただ、土砂崩れや地割れなどの被害が大きかった主要道路「のと里山海道」や国道249号などは、政府の緊急復旧工事によって一方通行ながら通行可能になっている。とは言え、のと里山海道は盛り土が大規模に崩落している区間などあり、全面復旧にはかなり時間がかかりそうだ。また、半島の沿岸を通る国道249号では千枚田ある地区などで地滑りが起きていて、現在のルートでの復旧は素人目でも難航が予想される。

  前回ブログでも述べたように、政府は新年度予算で予備費を1兆円規模に倍増し、能登半島地震の被災地のニーズをくみ取り、復興の取り組みを全速力で実行していくと強調している(3月28日・岸田総理の会見)。しかし、全面復旧にはかなりの時間を要するだろう。5年先、10年先、20年先かもしれない。春の訪れは遠い。

⇒1日(月)夜・金沢の天気     はれ


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