まるで「コンパクトタウン」のようなイメージだ。能登半島の輪島市中心部から20㌔ほど離れた同市町野町。8世紀に万葉の歌人として知られる大伴家持が訪れ、また、平家の落人の子孫が暮らす、国の重要文化財「時国家」住宅もある、まさに歴史のある街。それが、元日の能登半島地震で多くの住宅が全半壊した。その町野町にある野球場とグラウンドゴルフ場の周辺には270戸の仮設住宅が整備されていて、これまで避難生活を続けていた人たちが入居を始めている=写真=。
隣接するスポーツ施設の屋上から眺めると、向こうには山並みが見え、近くには川が流れている。整備されているのは平屋建て木造長屋タイプの仮設住宅。周囲の風景とマッチしている。近くの市街地にはスーパーマーケットやガソリンスタンドなどもある。仮設住宅の町中を歩くと、子どもたちが遊んでいたり、ご近所さんたちが路上で会話する光景が見られた。また、掲示板には、週一の「日曜カフェ」のオープンや虫歯予防の「口腔ケア」、炊き出しなどのお知らせチラシが貼ってあった。駐車場も90台分が確保されている。冒頭で述べたように、ちょっとしたコンパクトタウンをイメージする風景なのだ。今月中にさらに70戸が完成する予定という。
この風景を見てふと思った。人口減少や高齢化、そして街の中心街のドーナツ化現象(空洞化)などの社会問題が顕在化して、「コンパクトシティ」や「アーバンビレッジ」などの呼び方で、生活に必要なすべての機能がコンパクトにまとまった街づくりの再編を試みている地域が全国各地ある。この町野の仮設住宅を活用して、そのまま本格的なコンパクトタウンへと再構築してはどうだろうか。生活利便性を向上させるだけでなく、自然環境や防災、福祉、教育の面を充実させることで持続可能な街づくりを試みてはどうだろうか。
輪島市などの奥能登は過疎・高齢化で「ぽつんと一軒家」のような集落が点在する地域が多い。そうした一軒家の人たちも今回の震災で避難所や仮設住宅での暮らしを続けていることだろう。この際、震災復興のプロジェクトの一環として、行政が主導して本格的なコンパクトタウンを提案することで、過疎からの脱却を試みてはどうだろうか。
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