輪島市白米町の千枚田の知恵と工夫は現代も生きる。棚田の中腹を貫く道路、国道249号にそれが見て取れる。今でも地滑り地帯であることから、斜面地への圧力を軽減する工夫がほどこされている。軽量の発泡スチロールのプロックを道路の盛土材として使用し道路全体を軽量化している。EPS(Expanded Polystyrene)工法と呼ばれ、完了した1987年には日本で初の施工例として紹介された。
知恵と執念、そして感謝の念で継承する水田開発の歴史遺産
しかし、農業の担い手の減少、若者の農業離れが現地でも進み、1004枚の棚田をどう維持するのか。そこで行政と地元の人たちが考えたのが、棚田オーナー制度だった。2007年から始めて、今では毎年100人ほどの会員が参加する。年間2万円で「マイ田んぼ」を得て、年間7回の作業(田起こし、あぜ塗り、田植え、草刈り3回、稲刈り)に参加する。会員が都合で参加できないときは、地元のグループ「白米千枚田愛耕会」が作業をカバーしてくれる。9月の収穫が終わると、精米10㌔と山菜が届けられる。休日に家族連れでやってきてマイ田んぼを楽しそうに耕す光景はグリ-ンツーリズムでもある。
収穫が終わると、千枚田は夜の観光地へとステージが変わる。畦道に取り付けられた2万5千個のLED「ペットボタル」がきらめく=写真・上、輪島市公式ホームページより=。棚田の夜を彩るイルミネーションイベントは2011年秋から始まり、毎年10月から3月まで楽しむことができる。 毎年12月5日にこの地域の農家では農耕儀礼「あえのこと」が執り行われる。稲作の恵みを与えてくれた「田の神さま」にこの1年の田んぼの作業と収穫を報告し、ごちそうでもてなす=写真・下=。目が不自由とされる田の神さまを丁寧にもてなす「独り芝居」だ。先祖から受け継ぐ感謝の念でもある。あえのことはユネスコの無形文化遺産に2009年に登録されている。
2011年6月、世界農業遺産に「能登の里山里海」が選ばれ、FAOの当時のGIAHS事務局長パルヴィス・クーハフカン氏が千枚田を視察に訪れた。案内役の輪島市長から説明を聞き、「すばらしい景観と同時に農業への知恵と執念を感じる。能登の千枚田は持続可能な水田開発の歴史的遺産だ」と印象を述べていた。
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