自在コラム

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★「能登のSDGs」動き出す

2018年07月28日 | ⇒トピック往来

   国連が掲げる持続可能な開発目標「SDGs」という言葉はなかなか理解し難い。「エスディジーズ」の発音も一回や二回ではなかなか言葉として出てこない。ましてや、その意味となると難問のように思える。さらに言葉より、それを実践するのはもっと難しい。でも、それを能登半島の最尖でチャレンジしている。先月(6月)「SDGs未来都市」に選定された珠洲市だ。人口1万4500人、全国で一番人口規模が小さい市でもある。

   人口が少ないだけではない。高齢化率は47%と高く、地域経済を担う若い人材も不足している。持続可能な地域としての活力を保つために「2040年に人口1万人維持を目指す」と目標を定め、人口減少対策に必死に「もがいている」自治体でもある。その珠洲市がSDGsに挑戦している。きのう(27日)このような動きがあった。市と市内の10の郵便局がSDGsの目標達成に向けて協力する包括連携協定書を交わした。

   「なぜ郵便局と」と思われるかもしれないが、郵便局はすべての世帯に郵便物を届けるという使命感がある。その郵便局のネットワークを活かして、地域の見守り活動や災害時の支援、広報など行政の取り組みを支援していく。これは、SDGsの「誰一人取り残さない」社会の理念と実に合致する。経済や社会、環境の3つの分野で賛同者とSDGs実践に向けてプロジェクトを積み上げて、壮大な「SDGsプラットフォーム」を構築していく。珠洲市の戦略だ。

   では、大学の役割はどうか。来月8月18日、「能登SDGsラボ」の開設に向けて、運営委員会が発足する。ラボは金沢大学能登学舎(同市三崎町)に開設される。このSDGsラボには金沢大学のほか、国連大学サスティナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわ・オペレーティングユニット(OUIK)、石川県立大学、石川県産業創出支援機構(ISICO)、地元の経済界や環境団体(NPOなど)、地域づくり団体、企業や市民が幅広く参加する。

   ラボでは産学官金(産業界、大学、行政、金融業界)のプラットフォームを念頭に、大学側の研究シーズと地元企業のニーズとのマッチングをはかっていく。たとえば、現地で実証実験が行われている自動運転を「スマート福祉」として社会実装する。SDGsを取り込んだ学校教育プログラムの開発、世界農業遺産(GIAHS=2011年FAOが「能登の里山里海」認定)の資源を活かした新たな付加価値商品や、「奥能登国際芸術祭2020」に向けた参加型ツーリズムの商品開発を進めていく。国連大学と組んで過疎地域から発信するSDGs国際会議の開催や、県立大学との地元企業のコラボによる新たな食品開発など実に多様なプランだ。
    
   きのう郵便局との連携協定締結を終えた後で、市長の泉谷満寿裕氏と面談するチャンスを得た。「SDGsはまさにチャレンジですね」と率直に尋ねると、市長は「SDGsはどんなことにも本気でチャレンジする人を支える仕組みづくりです。新たな技術や知恵を持った大学の研究者や学生のみなさんは大歓迎ですよ」と。

   さかのぼれば、市長1期目の2006年10月に大学との連携による廃校舎の利活用、2期目の2010年7月に地上波テレビのデジタル化を全国に先駆け1年前倒し実施、3期目の2017年9月の奥能登国際芸術祭など、チャレンジの連続だった。ことし6月に4期目に入り、SDGs未来都市への挑戦だ。「ここは半島の尖端ですよ。チャレンジしながら可能性を探る。いつもそう思っています」。条件不利地というリスクを抱えるがゆえの地政学的なチャレンジ精神、そう表現したらよいのだろうか。

⇒28日(土)夜・金沢の天気     はれ

 


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