新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、石川県の自治体への移住相談が増えていて、とくに能登地域にある七尾市では前年同時期の約12倍、珠洲市は約4倍になったと、きょう11日付の日経新聞北陸版が報じている。首都圏などから自然豊かな地方に転居したいというニーズ、そして、人口減少に悩む自治体は移住者の獲得を目指している(同)。
この記事を読んで、「パーマカルチャーの第2波が来た」との印象だ。パーマカルチャーは農業を志す都会の若者たちの間で共通認識となっている言葉だ。パーマネント・アグリカルチャー(パーマカルチャー=Permaculture、持続型農業)を実践したいと農村へ移住を希望する若者たちがいる。農業経験はないが、農業の伝統を守るだけではなく、伝統の上に21世紀の農業をどう創り上げていくか、そこまで考えている。
第1波は2011年の東日本大震災のときだった。金沢大学が2007年度から能登半島で実施している人材育成事業「能登里山マイスター養成プログラム」の2011年度募集に初めて東京からの受講希望が数名あった。面接で受講の動機を尋ね、出てきた言葉が「パーマカルチャー」だった。里山や農業のことを学び、将来は移住したいとう希望だった。実際、東京から夜行バスで金沢に到着し、それから再びバスで能登に。あるいは前日に羽田空港から能登空港に入り、月4回(土曜日)能登で学んだ。その後、実際に能登に移住、あるいはUターンした受講生もいる。
彼らと接して、パーマカルチャーは人間の本能ではないかと察している。天変地異が起きたとき、人はどう生きるか、それは食の確保だ。敏感な答えだ。それを彼らは「農ある生活」とよく言う。最近、そのトレンドを能登で散見する。ITエンジニアやデザイナーが移住し、仕事をしながら野菜の栽培に取り組む。仕事の契約など必要に応じて東京へ打ち合わせに日帰りで行く、というパターンだ。石川県の統計で、2018年度で能登地区へ296人の移住があった。その多くが農業を志している。まさにパーマカルチャー志向ではないか。
コロナ禍をきっかに、リモートワークは普通になった。光回線や5Gなど通信インフラが整っていれば、東京に在住する必要性はない。ならば地方移住という発想が広がっているのではないだろうか。日経新聞の記事に、パーマカルチャーの第2波を感じる。もちろん、この傾向は能登だけでなく全国の地方に広がっているだろう。
(※写真は二宮金次郎像。背中に薪を背負い、学問をする姿は現代流に解釈すれば、多様なライフスタイルの実践主義者のシンボルでもある)
⇒11日(土)夕・金沢の天気 くもり
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そのことが、人類の、というか現代文明を堪能している先進国の若者たちに都会(人工的な環境)から田舎(天然環境)へと移住をする潜在的な要因になっていると思います。
このままの生活をしていると、ますます人類の生命環境が破壊されていくことを体感してきたのが若い世代でしょう。
これは単なるブームではなくて、今後さらなる自然災害(毎年の局所的な集中豪雨、巨大台風の襲来、大地震など)が頻発すればもっと本質的な流れになってゆくと思うのは、私だけではないと思います。