自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆テレビメディアへの格闘技 馳知事の肖像権問題

2023年04月05日 | ⇒メディア時評

   元プロレスラーの闘争本能に火がついたようだ。石川県の馳浩知事は自身や県職員の映像が地元テレビ局が制作したドキュメンタリー映画で無断使用された訴えもめている。メディア各社の報道によると、馳知事はきのう4日の新年度記者会見で「今後の定例会見はテレビ局の社長の出席を踏まえて開催するかどうかを検討したい」と述べた。テレビ局と知事の「一対一」の対決ではなく、社長が出席しないのであれば定例会見そのものを開催しないとメディア全体を巻き込むようにも取れる発言だ。

   馳氏がやり玉に挙げているドキュメンタリー映画は石川テレビ放送(本社:金沢市)が制作し、去年10月に全国公開した映画『裸のムラ』。残念ながら、まだこの映画を鑑賞してはいない。ネットに上がっている映画のチラシ=写真=によると、去年3月、「保守王国」と言われる石川県の知事を7期28年つとめた谷本正憲氏から馳氏にバトンタッチ。知事選では「新時代」をスローガンに掲げて選挙戦を戦ったが、2000年6月の衆院選の初立候補のときも、スローガンは「新時代」だった、とテレビ局側は軽く筆力でパンチ。そして、「ここ一番で必ず登場するのは、ご存知キングメーカーの森喜朗だ」「ムラの男たちが熱演する栄枯盛衰の権力移譲劇」と読み手の想像力をたくましくさせる文章を掲載している。

   このドキュメンタリー映画は石川テレビ放送が2021年と去年に放送した2本のドキュメンタリ-番組に新たな映像を加えて再編集したものを映画化した。馳氏がクレームをつけているのはこの点。テレビ報道のドキュメンタリ-番組に加え、さらに商業目的でつくった映画にも無断で自身や県職員の映像を使用しているのは、肖像権の無視ではないのか、との論拠だ。これに対し、石川テレビ側は、ドキュメンタリー映画の制作も報道活動の一環との位置づけで、映像は公務中ものであり、報道の目的である公共性に鑑み、許諾は必要ないと反論している。

   問題が表面化したのは今年1月。馳氏は元旦にサプライズで出場で議論を呼んだプロレス試合の映像を地元メディア各社に提供したが、石川テレビ側への提供は拒んだ。これに対して、同16日、石川テレビ側は馳氏に対して質問状を提出。一方、馳氏は同27日の定例記者会見で、公務員の映像を無断で使うことについて、石川テレビの社長に定例会見に出席して番組制作に対する考えを述べるよう求めた。

   2月4日、石川テレビ側は一歩引いて、質問状を撤回し謝罪したものの、馳氏は引かず、定例記者会見の場に社長が出席するよう再度求めた。石川テレビ側をこれを拒否している。そして、冒頭のように、馳氏は3月の定例記者会見は開かず、今月4日の新年度の記者会見で「定例会見に社長の出席を」と繰り返し述べている。

   ドロップキックやジャイアントスイングのような大技ではないが、狙いを定めたら一歩も引かない、まるで馳氏の格闘技のようだ。

⇒5日(水)午後・金沢の天気   くもり


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