能登半島の舳倉島の沖合250㌔に北朝鮮が弾道ミサイルを落下させたことをきっかけに、記者時代に取材に訪れたこの島のことを再認識する意味で書き綴っている。ブログをチェックしてくれた東京の知人から、「この島で大伴家持の時代からアワビが採れていて、いまでも海女さんたちがアワビ漁を続けているということは、まさにSDGs=持続可能な海の資源ではないか。でも、それがどうして可能なんだ」と、メールで感想と問い合わせがあった。
確かに周囲5㌔ほどの小さな島で、大伴家持が能登を訪れてアワビのことを詠ってから1270年余りの間、連綿とアワビ漁が続いている。素潜りなので、一番深いところ18㍍ほどと採取エリアが限られている。そして、海女さんたちは自主的に厳しいルールをつくっている。アワビの貝殻の大きさ10㌢以下のものは採らない。漁期は7月1日から9月30日までの3ヵ月。海に潜る時間は午前9時から午後1時までの4時間と制限している。さらに、休漁日は一斉に休む。こうしたルールを互いに守ることで、持続的なアワビ採りの恩恵にあずかっている。
しかし、漁獲量は減少している。昭和59年(1984)の漁獲量39㌧をピークに右肩下がりで減少し、近年では2㌧ほどと20分の1に減少している。このため、島に禁漁区を設け、種苗の放流、アワビを捕食するタコやヒトデなどの外敵生物の駆除作業などを行っている。この傾向は舳倉島だけでなく、世界のアワビを襲っている。
野生生物の絶滅のリスクなどを評価しているIUCN(国際自然保護連合、本部=スイス・グラン)は去年12月10日、世界に54種あるアワビのうち、日本で採取されている3種(クロアワビ、マダカアワビ、メガイアワビ)を含め20種について、「絶滅の危機が高まっている」として新たにレッドリストの絶滅危惧種に指定した(IUCN公式サイト)。
アワビは日本だけでなく世界でも高級食材であり、南アフリカでは犯罪ネットワークによる密猟で壊滅的な打撃を受けている。さらに、「海洋熱波」によりアワビがエサとしている藻類が減り、西オーストラリア州の最北端では大量死。また、農業および産業廃棄物が有害な藻類の繁殖を引き起こしていて、カリフォルニアとメキシコ、イギリス海峡から北西アフリカと地中海にかけてはアワビの病弱化が報告されている。このアワビ激減の対応策として、IUCN研究員は「養殖または持続可能な方法で調達されたアワビだけを食べること。そして、漁業割当と密猟対策の実施も重要」と述べている(同)。
舳倉島でもクロ、マダカ、メガイの3種のアワビが採れている。今回のIUCNによるレッドリスト化によって、海女さんたちはさらにどのような取り組みを進めるのか。海の生態系から得られる恵みを肌で感じている海女さんたちがこの難題をどう乗り越えるのか、国際的にも注目されるときが来たのではないだろうか。アワビ漁は来月1日に解禁となる。
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