8月に入り、和室の床の間の掛け軸を替えた。『白雲抱幽石』。人里離れた深山幽谷、そこに夏雲がもくもくと現れ、まるで雲が大地を抱きかかえているような壮大な自然の光景をイメージさせる。中国・唐代の禅僧、寒山の漢詩の一節である。 この掛け軸に合う花を探すと、真っ白なムクゲの花、ギオンマモリがちょうど咲いていた。日差しを浴びて、純白に輝く様子がまるで夏雲のようなイメージだったので 、唐銅の花入れに挿した。
改めて禅語辞典でくってみると、「世俗との交渉を絶って幽居する隠棲者寒山の心境が偲ばれる」と。禅の修行僧の境涯を表現したものと書かれている。自然界では人の奢り高ぶった気持ちは通用しない。自然を我家として修行に励むことで、人は全ての生き物と同じように大自然の中に生かされているということを改めて感じ、悟りをひらく。
話は変わる。東京オリンピックのメダリスト、そして敗者へのインタビューが行われているが、その表情や言葉が短く的確で感動することがある。きょうNHKでゴルフ男子の最終ラウンドを視聴していた。ことし4月、海外メジャー大会のマスターズ・トーナメントで優勝した29歳の松山英樹選手に注目していた。メダル獲得を逃したものの、松山選手は「自分が思っているパフォーマンスは出せなかった」「きょうのプレーは上位に追いついて追い越せる雰囲気も感じながら、なかなか最後の部分がうまくいかなかった。自分の課題が見えてきた.」と淡々とインタビューに答えていた。
スポー ツは勝利して結果を残すものなので、もっと悔しさをにじませた表情かと思ったが、そうではないのだ。「自分の課題が見えてきた」。このコメントを聞いて、松山選手は競技の中で、敵は相手ではなく、意のままにならない自身だと悟ったのではないかと察した。自らの鍛え方が足りないと、まるで武道家の言葉のようにも聞こえた。まだ、29歳、無心の境地で世界のゴルフ界を背負う人材に成長することを期待したい。
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