名付けられた愛称は「イカキング」。能登半島の先端部分に位置する能登町の九十九湾に出現したスルメイカの巨大モニュメントは全長13㍍、全幅9㍍、高さ4㍍、重さは5㌧のサイズだ。素材は航空機などに使う繊維強化プラスチックのFRP製だ。子どもたちが中に入って遊んだり、大人たちが写真を撮ったりと、けっこう人気がある。自身も実物をぜひ見たいと思い、きょう能登町に行ってきた。
同湾にある小木漁港は全国で屈指のイカ類の水揚げを誇る。このことから町では特産イカの知名度向上にと昨年6月に観光交流センター「イカの駅つくモール」をオープンさせ、イカ料理などが味わえるレストランやイカの加工品を中心とした物産販売コーナーを設けた。さらセンターの芝生庭にことし4月に創ったのがイカキングだ。新型コロナウイルスの収束後の観光誘客を狙ったものだが、制作費3000万円のうち、2500万円がコロナウイルス感染症対応として国が自治体に配分した地方創生臨時交付金だったことから、議論を呼んだ。
担当した町ふるさと振興課の職員に直接聞くと、「コロナ対策に使うべき交付金ではないか。なぜモニュメントをつくるのかと着工の段階から疑問の声がいくつか寄せられていた」と話す。職員によると、臨時交付金には「地域の魅力磨き上げ事業」という項目があり、それに該当すると説明しているという。イカの駅つくモールは、オープン半年で6万8千人の来場があり、当初予測していた1年間で7万人の予想見込みを上回った。さらに、話題性のあるイカキングとの相乗効果に期待を寄せている。
そして、担当者は「コロナ後はインバウンド観光客も」と口にした。モニュメントが交付金で創られたことを疑問視するニュースは本来ならばローカルニュースだ。ところが、スルメイカの巨大モニュメントというカタチの異様さが受けてか全国ニュースで取り上げられ、さらに、イギリスのBBCやフランスのAFP通信、アメリカのニューヨーク・タイムズなども写真付きで取り上げた。それがネットニュースとしても世界に拡散した。
なぜ欧米のメディアがニュースにしたのか。憶測だが、欧米ではタコやイカはデビルフィッシュ(Devilfish)、「悪魔の魚」にたとえられ、巨大化したタコやイカと闘うアメリカ映画もある。スルメイカの巨大モニュメントそのものが、いわゆる「絵になる」のではないか。能登町の隣の珠洲市では今年9月から国際芸術祭が開催される。デビルフイッシュがこれだけ話題になると、「ついでに見に行こうか」と立ち寄る国内外の鑑賞者もいるのではないだろうか。
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