自宅の庭にキンモクセイが咲き、秋の深まりを感じさせる=写真・上=。そして、あの独特の存在感のある匂いを放っている。以前、植物に詳しい研究者から聞いた話だが、キンモクセイの花の匂いに寄って来る訪花昆虫はハエやハチの仲間が多く、一方で一部の昆虫を忌避させる成分も含まれていて、モンシロチョウなどは寄って来ないという。この話を聞いて、「確かに便所花だから」と妙に納得したものだ。
昭和の時代までは、くみ取り式トイレが多かった。そこで、キンモクセイは季節限定ではあるものの、におい消しの役目を果たしていたのだろう。自宅のキンモクセイはかつてトイレの側に位置していた。その後、自宅を改築して水洗式トイレにして、別の場所に移した。50年も前のことだ。この時点で、キンモクセイの役目は終わった。とは言え、伐採はせずにそのまま残した。そして、冒頭の述べたように、秋の深まりを告げる植物として、その後も存在感を放っている。
秋の植物の匂いと言えば、これも存在感を放っている。「においマツタケ、味シメジ」と言い伝えられるマツタケだ=写真・下=。スーパーに並ぶ国内産は数本で1万円台と相変わらず高額だ。人工栽培ができないので、希少価値がある。アカマツ林が多くマツタケの産地として知られる奥能登でも露店で1㌔1万円はする。
季節的に国内産より早めに出回るのがスウェーデンやフィンランド産で、スーパーで手に取ると、国内産とDNAが近いこともあって、においもする。価格は1㌔数千円とそこそこの値段だ。最近はアメリカのオレゴン州産もよく目にするようになった。欧米産のマツタケを見て思うことがある。欧米では、すしなど日本食ブームでそれに合う日本酒の売れ行きも好調だ。にもかかわずらず、輸出はすれど、欧米人はマツタケを食さない。それはなぜか。
かつて、知り合いの料理人からかつて聞いた話だ。いわく、「欧米の人がマツタケを食さない理由は、マツタケの香りが靴底のこもった臭気を連想させるからだそうですよ」と。確かに、そう言われればそのようなにおいかも知れない。日本人は「においマツタケ、味シメジ」と昔から脳にすり込まれているので重宝する。ここが食文化の分かれ目なのだろう。
料理人から聞いた話は10数年も前のこと。マツタケのにおいに欧米人が慣れて、「これこそ世界最高の食文化だ」とすき焼きにマツタケを入れて食する時代がやって来るかもしれない。日本では、若い世代が「あんな靴の中の臭いがするバカ高いマツタケなんて食べたくない」と言い出す日がくるかもしれない。においの時代感覚は微妙にずれてくるものだ。
⇒27日(水)夜・金沢の天気 くもり
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