ルーリン彗星の観望好期も終盤が近づいてます。
こちら東京都西部(多摩地区)は今週ずーっと天気が不安定でした。
立春はとっくに過ぎているのに、昨日はこの冬一番の冷え込みで、
とうとう雪まで降ってくる始末。なんだかなぁー。
今日も微妙な天気ですが、今晩20時の彗星の位置を載せておきます↓
(Astroarts ステラナビゲータによる ※円は8×30双眼鏡の視野)
今晩の彗星の位置は、しし座の1等星レグルスから
少し右上に離れたところになります。
双眼鏡でまだレグルスと一緒に見えますので、探しやすいと思います。
天気分布予報を見ると、今夜も東北地方で晴れ間が広がりそうですネ。
さて、今回も彗星の名前についての薀蓄話の続編です。
前回、彗星名の「ルーリン」は天文台の名前に由来していると解説しました。
その天文台では太陽系内の未知の小惑星を探す観測(小惑星サーベイ
などと呼ばれる捜索活動)をしています。
なぜそのような捜索をしているかというと、小惑星の軌道は様々で、
中には地球軌道と交差、あるいは接近しているものもあり、それらが
もし地球にぶつかってディープインパクトな状況になったら大変なので、
衝突の危険性がある天体をなるべく早く見つけて、詳しく軌道を計算し、
対策を立てられるようにする(可能かどうかは"?"ですが)ためなんです。
そのような活動をしている天文台やプロの天体観測プロジェクトチームは
世界各地にあって、一番成果をあげているのは "LINEAR" という名前の
米国にあるプロジェクトかと思います(小惑星等の発見実績個数は、
なんと数十万の桁にのぼるんだとか・・・スゴっ!)。
2004年に明るくなった彗星で「リニア彗星」と「ニート彗星」
というのがありましたが、それぞれ "LINEAR" プロジェクト、
"NEAT" プロジェクトが発見した彗星です。どちらもNASAと関連があり、
LINEARは "LIncoln Near-Earth Asteroid Research" を
略した名称(訳すとリンカーン地球接近小惑星探査)です。
リンカーンの名は、このプロジェクトの運営に関わっている
マサチューセッツ工科大学付属研究所の名前に由来しています。
こういった小惑星捜索チームは彗星を発見することもあるわけで、
その場合、発見彗星にはプロジェクト名が付けられます。
(組織内の個人の名を推奨するプロジェクトもあります。)
枝分かれしたようなイオンテイルを見せたニート彗星
2004年5月14日撮影
それらのプロジェクトの実際の捜索活動はどういうものかというと、
まず、天文台に設置されている望遠鏡に高感度CCDカメラを取付け、
あるエリアを撮影しては望遠鏡を動かして隣のエリアを撮影する作業を
繰り返して、可能な限り夜空の隅々まで一晩中写真撮影していきます。
で、少し時間をおいて撮影した同じエリアの複数画像を比較する
などして、移動する新天体が写っていないかどうかをチェックし、
何か写っていれば、それを新天体として発見報告します。
(報告先は国際天文学連合の天文電報中央局で、米国にあります。)
人がチェックしきれないほど画像数が膨大になると、
画像照合をコンピュータにやらせたくなるのは自然の流れで、
最近では望遠鏡や撮影システムまで全てコンピュータ制御化し、
望遠鏡駆動~撮影~画像取得~画像比較~移動天体検出を全自動で
やってしまう「自動掃天システム」なるものが主流となっています。
そうなると最も発見に貢献するのは「人」ではなく「機械」という
ことになり、個人名を付けるのが妥当かどうか微妙になります。
プロジェクト名が付けられるのは、このような背景からのようです。
ルーリン彗星も同様に個人名ではなく、
発見の舞台となった天文台名が付けられました。
ただし、捜索用画像のチェックをしたのはコンピュータではなく、
中国の大学生だったとのことです。画像の撮影も別な人による
人手を介したものだったらしいです。
その人達の名前を彗星名にしても良かったのでは?と思うのですが、
プロジェクトチームの方針など、言わば「大人の事情」か何かで、
天文台の名前が採用されたんだと、個人的には勝手に推測してます。
ちなみに発見時の明るさは18.9等(どんだけ暗いんだよ!)で、
はじめは小惑星と認識されていたようです。
以上、長々とスミマセン。
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