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マルチ商法対抗録・4 (私にはこれしかないから)

2009年01月27日 23時47分51秒 | 日常のあれこれ
この連載の目次

(前回から続く)

Aちゃんは、ビジネスの仕組みも話してくれました。
「例えば、ある人が化粧品を買ってくれたとするでしょ。すると、その代金の中から一部が会社に行って、例えばここから10%がこっちの人に渡って……」
間違いなくマルチ商法です。
「既に2万7000人が会員になってるの」
ずいぶん広がっているようです。そこまで会員が増えたことに、正直、驚きました。
「ほかに、3000円を払って会員になるだけの方法もあるの。その方法だと、化粧品を安く買えるだけだけど」
しかし、Aちゃんは下位ランクの会員からの収入を当て込んでいます。単に化粧品を使うのではなく、会員の獲得に走るはずです。

「これなら、普通に働けない私でも、体調のいいときに自分のペースで収入を得られると思ったの」
多少の収入はあるでしょうが、果たして元が取れるかどうか。もし10%のマージンが自分の手元に入ってくるなら、会員を10人獲得しないと元は取れません。マージンが20%でも5人獲得する必要があります。
「友達も誘おうと思ってるの」
「やめなよ。マルチは友達をなくすよ」
「別に強引に勧誘するつもりはないから」
「それでも友達なくすって」
しつこく勧誘しなかったとしても、勧誘を迷惑がられたり、マルチ商法に手を染めていることで信用を失ったりして、友達が去っていくものです。たとえ会員になってくれたとしても、その友達がビジネスの実態に気づいたら、一転して関係が悪化するでしょう。

「私を助けるためってお願いして、お母さんやお姉ちゃんにも買ってもらって……」
「化粧品の代金には、上位ランクの人が取る利益も含まれてるんでしょ? 身内が買っても、お金は会社やほかの会員に回るんだよ。わざわざ会社やほかの会員にお金を渡して、Aちゃんにはごく一部しか回ってこないなら、最初から全額を生活費としてもらったほうが合理的じゃん」
「それはそうだけど、生活費をもらうのは気が引けるよ。『私を助けるために』って化粧品を買ってもらうほうが頼みやすいし」
私にしてみれば、マルチ商法で稼ぎたいので化粧品を買ってくださいと頼むほうがよほど印象が悪いと思いますが、Aちゃんは完全に業者を信じきっており、親や姉がどう受け止めるかまでは考えが及ばないようです。

「セミナーで言われたんだっけ?『明日からシステムが変わるから、今のうちに入会しないと利益を挙げにくくなる』って。それで、あせって契約しちゃったんだね」
契約を急がせるのは、よくある手口です。
「あせると判断を間違っちゃうこともあるよね。それは、しょうがないよ。人間、誰でも間違うことはあるもん。でも、気づいたら引き返そうよ」
Aちゃんに不注意があったにしても、不安でいっぱいの毎日を送っているAちゃんを責めることはできません。むしろ、Aちゃんの弱みに付け込んだ業者が憎くて仕方ありません。いったいどんな方法で言いくるめたのか。
「あわてて物事を始めるのは失敗の元だから、ここはいったんクーリングオフしようよ」
「だけど、私にはこれしかないから」

(次回に続く)