ウンコも
ゲンキも
出るもんじゃない。
出すもんだっ。
そうか。そうだよね。うん、うん。
……って、そのふたつを一緒にしていいの?
これは、昨年 (2010年に) 日本新聞協会広告委員会が実施した「新聞広告クリエーティブコンテスト」のデザイン賞入賞作品です。テーマは「元気」。年末の新聞に掲載されて、気に入った作品です。タイトルは「気合い」。
今、日本には元気をなくした人が大勢います。そんな状況で真正面から「元気」に取り組むと、押し付けがましいメッセージになりがちです。「愛」を持ち出すのも重くなりすぎます。「抑うつ状態の人には受容的に寄り添いましょう」とよく言われますが、受容的なメッセージも優等生っぽいですし、「この人は私に元気を出させようとしている」と感じてしまい、私はかえって拒絶してしまいます。
コピーに限らず、私が文章を書くときに重視することは「押し付けがましくないこと」、「読者の共感を得られること」です。この作品のコピーはあまりにバカバカしくて、メッセージを拒絶するどころか、無視できてしまいます。それだけの余裕をさりげなく盛り込んだところが、他の作品との際立った違いです。
広告は読者にメッセージを伝えることが目的ですから、広告のプロは、広告が無視されてしまっては致命的と考えるかも知れません。
しかし、何としてでも読者の心の中にメッセージを残そうとすると、無理矢理に置かれたメッセージが心にひずみをもたらしてしまいます。重いテーマを扱う場合は、投げられたメッセージを無視できるということがとても大事なのです。
素通りしたい人は素通りすればいい。
立ち止まりたい人は立ち止まればいい。
他の広告作品は、ありきたりの言葉や、素通りしにくい言葉ばかり並べていました。そんな中で、この作品のコピーは光っていました。
ウンコも
ゲンキも
出るもんじゃない。
出すもんだっ。
そういう問題なの?
そのふたつを一緒にしていいの?
あなたひとりで熱くなってない?
よくよく考えていくと、だんだんバカバカしくなってきます。バカバカしいことを熱く語る男性の顔を見ていると、こみ上げる笑いを抑えられなくなり、もうどうでもよくなってしまいます。
私自身、まじめで几帳面、神経質な性格をしており、気分が沈みやすいです。そんな当事者の視点からも、私はこの作品にこそ最優秀賞を授与したい。強く思います。