Aが得意なエチュード…、それを休むなんて…どうしたんだろう…。
次もその次も休んだ。
当時はメールはおろか、携帯さえも無い時代だったので、心配をしながらも、彼女が稽古場に来るのを待つしかない…。
最近少し、様子が変だった…。
私に例の先輩の話しをしてから、どんどん元気がなくなっていたような気がする。
ーーーAがお休みをして4日目、やっと姿を現した。
頬がこけて痩せたように見える。
「…どうしたの?大丈夫?」
「ちょっとお腹壊したの。」
「…そうなんだ…」
私たちをまとめている事務員さんが、Aから連絡が無い…と心配していた。
Aがお腹の壊したのなら、連絡くらいはするはず…。
4日ぶりにAの得意なエチュードだ。
「ちょうど、一回目のエチュードが終わったところ、今日から2回目だよ。」
「そうなんだ…。」
いつも口の悪いAがおとなしい。
今日のエチュードのお題は、
『待ち合わせの場所で、長い時間待つが、相手が来ない…。時計を見ながら帰ろうか、もう少し待とうか…と悩む…。…そして、この後は、帰るかとどまるかを自分で決める』…と、言うものです。
帰るにしても、とどまるにしても、『なんとなく』はダメ。理由が必要です。それを考えての課題。
「さっそく、やってみたい者?」
先生が見回す。
こんな時、率先してAが手を上げる‼️…はずなのだが、床の一点をじっと見つめて動こうとしない。
「おい、A!一番に名乗りを上げないなんて、珍しいな❗どうした?」
「あ、はい❗やります。」
急に魂が戻ったかのように、Aは立ち上がった。
「なんだ…顔色悪いな…」
「下痢です!大丈夫です!」
仲間たちから少し笑いが起きた。